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ベージュのボールペンが赤くなった話


仕事で3色ボールペンを使っている。

自前のボールペン。

気づくと事務服の胸ポケットに入っていない。


「ベージュの3色ボールペン見ませんでしたか?」
職場の人に聞いてまわる。

「あったよ!でもない!」
窓口担当の先輩がカウンターの上を探しながら言った。

「え?ない??」

「ここにあったから申込書書いてもらうときに出して、その人が持ってっちゃったみたい!ごめんごめん!(笑)」

「えー!」

わたしのボールペンは旅立ってしまった。


ベージュはめずらしかったのでわたしのだと分かったそうだが、そこにあったから貸し出したという先輩のそのテキトーさがなんだかおもしろかった。

そして持ってかれた自分の運のなさに笑えてくる。



「こないだはごめんね」
後日、先輩がおんなじ種類の真っ赤なボールペンをくれた。

先輩は赤が好きなのだ。

「さっそく使わせてもらいます」
置き忘れた自分が悪いのだが、ありがたく気持ちを受け取る。

プラスチックと紙のパッケージをバリッとあけ、赤いボールペンを胸ポケットにさした。

いつもは選ばない真っ赤な色も元気が出ていいかも。

「今度は名前を書いときーよ」

「はい!」

また持ってかれても今度は帰ってくるように書いおけってことかな??


赤いボールペンを使う度、この話を思い出して楽しくなってしまう。

ちょっとだけ特別なボールペンなのだ。


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