見出し画像

新卒が不動産業界にはいるなら読んどいて損はない話

転職や既卒向けの情報です。私は不動産に入りたくて入ったわけでは無いクチです。そもそも不動産界隈の何たるかもわかっていなかったのですが、時代は今ほど就職に有利ではなかったというかかなり冷え込んでいたので就職活動には苦労しました。そのような中で不動産を選んだのは不動産業界がたまたま求人が多かった「だけ」です。

この時点で気づく必要があったのです。不動産業界の人材獲得の難しさと離職率の高さに・・・


不動産業界を選ぶ人とは

不動産業界に入る人は基本的に「金を稼ぎたい」「人の幸せのお手伝いをしたい」という両極端な理由で就職する人が多かったです。無論企業側もこのどちらを押しているので、そのような思考の若手が集まってしまうのですが、この思考と現実の2極化は就職後のの離職率に現れてきます。

人の幸せをお手伝いしたい人、というのは大抵ハウスメーカーや住宅販売、そして狭小住宅販売の専門会社に就職します。

少しあぶれてしまうと大手の賃貸と売買を行っているいわゆる大手仲介会社(東急リバブルや三井〇〇ーとか冠が付く仲介)に就職します。当然わかりやすい理由でして、「新居を構える」ということはその人や家族の人生にかかわってくるので一生を左右する家選びを心からお手伝いしたいという気持ちをゆさぶってきます。

金を稼ぎたい志向の人たちは投資マンションや高級マンションの分譲販売など、明確に20代で〇千万円稼ぎたいみたいな成り上がり主義の心を揺さぶってきます。どちらの選択肢にしても泥沼です。

人の幸せをお手伝いするはずが

前に述べたような住宅販売系は人の幸せはそっちのけでまず最初に行われるのは大量なチラシ配りです。手にもって運ぶのも一苦労なチラシの束を渡されて各家々のポストに配りまくります。

エリアによってはマンションポスト、分譲だろうと賃貸だろうと関係なく途方もない量のチラシを撒きます。これが不動産業界最初の洗礼です。これだけで給料がもらえれば良いじゃないかと思うけれども心の優しい新卒たちは疑問に思います。「これが自分のしたい仕事だっただろうか」ここで脱落してしまう人も・・・一定数います。

いざ現場に出ると、今度は毎日書かされる日報と上司の進捗詰めが始まります。大抵ここで不動産の闇を垣間見るのです。

そう

不動産屋さんはとにかく売らないと人として扱われず売れば人並み、売れなければ罵倒される。そんな業界だったのです。

ちなみに投資マンション系はもう少し激しいです。投資ビル1棟とか扱っている人もワンルームマンション販売とかが最初扱うものだったりしますが、もともと〇千万円稼ぎたいというモチベーションだったのでこちらのほうが長続きします。

だって人の幸せとか人生の買い物とか考えてない利己主義でやればいいのだから。ただし、こちらの現場では上司の詰め方ももう少し激しいです。もの投げられたくらいじゃびびらないようにしましょう。

今ではコンプライアンス上やっているところ少ないと思いますが、灰皿投げられる現場がドラマや映画以外でも見られる貴重な職場だそうです。

そんな中私が選んだのはオフィスの不動産屋さん

オフィスの不動産屋さんも不動産であり全般的に体育会系なのですが、個人を対象にする投資マンションやマンションの分譲販売にくらべると法人が相手になるので多分楽です。他の不動産に就職した同期が今では公務員や別の業界に転職している中私だけが不動産にいられるのも、超絶ブラックではなかったというのが大事だったのではないかと思っています。

オフィスの不動産屋はいわゆる企業のオフィス移転をお手伝いするという仕事。2名の会社が10名になると部屋のキャパシティが合わなくなるので移転。

大成長して100名になるとさらに拡大しなければいけないからまた移転と、企業成長を追っていける夢のある仕事でした。

あ、ちなみにフィクションですが以下の様な短編小説書きました。ゆるいとこんな感じです。

しかし新卒で与えられる仕事の大半は他社とは変わらずにまずは電話帳片手にテレアポです「オフィス移転しませんか?」とお電話します。法人相手なので罵倒こそありませんが耳にずっと押し当てられた受話器の感触は今でも忘れません。

そもそも移転のイの字も知らない新卒が電話し続けでも成約に結び付けられないと思うのですけどね。しかしそんな中でも300件くらいかけていると1社くらい興味をもってアポイントになります。このようなケースの時は上司(といっても27-8歳の若い人)と同行していきます。ここで移転の希望条件を聞いてある程度ものになりそうな案件だと、見事先輩たちが自分の案件として持っていってしまいます。社会の理不尽さを感じました。

しかし、時として先輩たちが面倒くさそうにする案件や時間のかかりそうな内容にも出くわすので案件をもらうチャンスも与えられます。新人にとっては数少ない自分の案件を一生懸命仲介するのです。そうすると1件、1件と積み重なってゆき、気が付くと毎月1,2件の新規はテレアポからのお客さんという事になるのです。

私の新人時代における手法はテレアポ→おこぼれ案件もらう→成約→成約後だれか移転しそうな客を紹介してくれとお願いするという方法を用いてこの業界を生き延びていきました。このようなオフィス移転のお仕事を何度かやっていると紹介とリピートで7割くらいで回せるようになります。この辺で約4年、しかし気づくのです。

自分は会社に頼らずに売り上げも上げる事が出来、過去の先輩たちのように自分の後輩にテレアポさせている自分の姿。そして思ったより伸びない年収。居心地は良いがこの会社に所属する必要はあるのか?という疑問がわいてきます。

ちなみに当時のインセンティブ比率は新卒採用ということもあり5パーセントでした。業界としては低いです。ちなみに新卒時の基本給は20万円+交通費別途支給なので当時としては悪くない、むしろ新卒には良い給与体系です。ちなみに厳しい例としては、ほぼフルコミ・交通費・営業電話費実費という売れなければ即終わる仕組みの会社も存在します。

今だと歩合の率が25-30%くらいだと割と強めのインセンティブ設定の会社じゃないでしょうか。その後は会社との契約次第で40-50%くらいに引き上げるかより高い歩合の企業に転職

さて話を戻すと当時は100万円売り上げて5万円なので150〜200万くらい毎月売り上げないと都心一人ぐらしの身としては厳しく、2年目あたりで住民税課税が始まってから何度か詰みそうになりました。その後、基本給の改定があったそうですが私はこのタイミングで転職してしまいました。

また、もしあなたが他業種からの転職もしくは新卒のであれば宅建の資格だけは取っておいたほうがいいです。宅建の問題は年々範囲が広くなっております。

合格率そのもの変わらないですが合格最低点は上がってきているので、取りやすい資格でもなくなってきました。しかし宅建士は不動産屋さんで人を雇うには設置義務があるので、宅建士であればどの不動産屋さんであっても月1万円~2万円くらいの資格補助が出る会社が多いです。資格を持っているだけで年収換算すると12万円~20万円近く年収に差が出るのです。

老舗オフィス仲介会社への転職とその後

次の会社はインセンティブの比率がよかったです。実績変動型で10%から15%という良さだったのですが、新卒で入った会社よりも全員が獣臭かったです。前職は今でいうとそこそこのブラック企業だったのですが社員同士は仲が良く、一応転職や地元に帰る仲間たちには送別会など内々で行っていたのですが、この会社ではすべてが違う。

となりの営業マンですら名前以外の素性がわからないという程の個人主義。となりはライバルもしくは敵のような企業内で競争している雰囲気です。会社からのメッセージは、命令しないノルマをこなせば何も言わない。しかしその分売り上げを上げよ。インセンティブは払う、会社を自分の為に利用せよということを体現していました。

当初は前職のツテを利用しつつ、紹介の案件などで回していけました。しかし、同時に新規供給がなくなります。

以前の様にテレアポしてくれる後輩もなくなるのですべて自分の力です。当然大型のアポが決まっても同席してくれる上司などいないので自力で全てこなさなければいけないという状況でした。

しかし4年も業界で過ごすとやはりずる賢くなるものです。過去にお世話になったオーナーさん、共同仲介した不動産屋さんからもらった案件、意気投合した内装会社担当者から教えてもらった移転前情報の企業へ飛び込み営業をかけたりと工夫して新規供給を得ることができたのです。年収はあがりました。

同時に、業界内で3億円仲介手数料のフィーを稼ぐ人がいるという話を聞いたのもこの会社でした。

ちなみに手数料のフィーだけで3億円という金額はあのまま仲介会社に居続けても無理だと思います。(インセンティブ50%以上のフルコミ営業ならありえるかも)

結局不動産仲介をやめた理由

不動産仲介は魅力的です。頑張れば金を稼げる現場です。真面目に仕事していれば低めに見積もって500万円、平均的には700万円~850万円くらいは稼げると思います。

オフィス不動産モデルケースですが、新卒〜3年目まで350〜450万円で推移し、3年目以降500万円〜600万円の額面年収があれば普通の水準でしょう。そこからユニットやチームをまとめる立場になると650万〜750万円、事業マネージャクラスで850〜1100万円程度。もちろんコミッション比率を上げて一匹オオカミとして1億円プレイヤーを目指すという手段もあると思います。

仲介営業は「全部ひとりでやる仕事」が多く、転職しようとステップアップしようと変わらないので、休みがとりにくいです。結婚したり、家族をもったと考えたときに長期の休みはまず無理でなおかつ土日祝日も顧客からの電話が携帯に入りがちなので基本は土日もなんらかの対応をしていました。もちろん、土日は普通に休みなので大したことはできないですが大口の顧客から呼び出されたら一応顔を出せるように準備して、案件進行中は遠出をしないなどなど気遣いは多かったです。そこで私は次の選択をします。

年収は若干下がるもののオフィスビルの知識を生かしたまま、物件管理や物件の保守をメインとした会社に転職をしたのです。しかし仲介が全くゼロではなく、やはり過去の顧客や既存ビルからの立ち退きをお願いする案件などの話はいくつかあり、その為の紹介先を探す作業など細々と業界の片隅にいます。

最近は都内のオフィスビル空室率も減ってきており、現入居テナントの賃料を上げるという賃上げ交渉をしています。しかしながら仲介出身としては賃上げをテナントに要求するのは心苦しく、やはり仲介の比率を増やそうかなと画策したりしています。

不動産界隈をぶらぶらする理由

締めになるので、シンプルにまとめてみます。

1.不動産は奥が深い
2.時代の流れに置いてかれにくい
3.実生活に役立つ  

奥が深いというのは、不動産業は多岐に渡ります。街の不動産屋にいると個人の売買から土地、ビルの売買賃貸など扱えます。都心の高層マンションや地方には縁が薄いかもしれません。種類が多いので深みがどのジャンルも違います。高級レジデンスの売買なんて、私はやった事ないです。逆に管理サイドになると今まで話した事ない貸主側の担当者と話せるのでこっちはこっちで交渉まとめんの大変だなと思います。

時代の流れというのは、不動産扱ってると色々な職種の人に会えます。決算書や収入証明関連を預かるケースもあるので、そんなニッチなサービスが儲かるのかと発見する事が多々あります。

実生活に役立つのは不動産知識面ですね。契約書を何百社(何千社?)と読むので法律面や契約面は強くなります。自宅の売買や親族の不動産購入とかで相談くらいはのれます。親戚が口出すのウザいってわかるので相談だけしたら不動産屋に丸投げできるのも不動産屋である親族ならではのナイスアシスト。

あとはリアルにヤバイ人や背負いきれない金額扱うので、その中のやりとりや修羅場の経験からそこそこのピンチには強くなれるのも人として大きく成長させてくれるのが不動産業界です。

シリーズはこちら   有料記事もありますがタメにはなると思うつもりで書きました。

不動産業界でかなり長くしぶとく生きてますが75歳現役ブローカーのおじいちゃんが2.30億のビル売買に携わってたりと業界全体の現役率が高いのも特色です。

2024年本出しました!!
もしかするとタイミングによっては廃盤や出版差止になっているかもしれませんけど


主にオフィスに関する不動産知識や趣味で短文小説を書いています。第1作目のツボ売り、それ以外も不動産界隈の話を書いていければ良いなと思っています。 サポート貰えると記事を書いてる励みになります。いいねをしてくれるだけでも読者がいる実感が持ててやる気が出ます