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ごめんね、名前も知らないお兄さん


まず最初に、私は謝罪をしたい。

絶望させてしまったお兄さんに。

心からお詫び申し上げます。


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私は旅人に憧れていた。

バックパッカー、日本一周、ヒッチハイカー…

いつかは話しかけてみたいと思いながら月日ばかりが流れた。

もちろん見かけたことがないわけではないけど、大体仕事の途中で見かけるため、話しかけれた試しがなかった。

そして2年前のある日、時が来た。

ヒッチハイカーがいたのだ。
時間にも、車の座席にも余裕がある。

今だ!

一度は通り過ぎたけれど、引き返してお兄さんを拾った。
初めて話しかけるヒッチハイカーに私の心は浮かれまくっていた。

どこからきたのか?
どこへ行ったのか?
なぜヒッチハイクをしているのか?

ウキウキしながらもそれを全面に押し出すとかっこ悪いので、意識して落ち着いた雰囲気を醸し出しながら話をしていた。

しかし私は途中で寄るところがあったので、少しだけ停車させてもらった。
ここまでの時間、ヒッチハイカーのお兄さんが乗車してから10分ほど。


そして事件は起こる。


用事を済ませ車を発進しようとするも、エンジンがかからない。

何をどうしてもかからない。

ヒッチハイカーのお兄さんに見てもらってもかからない。

とうとう痺れを切らせてヒッチハイカーのお兄さんは、次のヒッチハイクへと向かってしまった。

この時のお兄さんの絶望感な顔は今でも忘れることができない。

それもそのはず、一晩中ヒッチハイクを続け、やっと捕まった車が10分で故障。
挙句に降車を余儀なくされた場所が、どうしようもなくヒッチハイクしにくい大通り。

ヒッチハイカーのお兄さんの絶望感を想像するとやりきれない。

とり残される私。
仕方がないので、レッカーを手配する。

カレー屋さんの前の路肩に停車していたので、レッカーが来るまでお店の前に停車させてもらうことを謝罪しに行くと、インドのお兄さんがこう言った。
「イイですヨー!駐車場に停めてもイイヨー」

ありがとう。
でも車故障して、動かないんだ…。
お気持ちだけ頂戴いたします。

そうこうしているうちに、車はレッカー車でドナドナ運ばれていきました。



****


この件でご迷惑をお掛けした皆様、本当に申し訳ございませんでした。

いつかヒッチハイカーのお兄さんは見ることがないだろうけど謝罪がしたいなぁと思っていたので、2年経った今、お詫びさせていただきます。

ヒッチハイカーのお兄さん、本当にごめんなさい;;
あの後何事もなく帰れているといいなと、2年経った今でも思うことがあります。

お兄さんに幸あれ!


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