131:一〇月二〇日 紅姫竜胆(八)
なにを期待していたんだろう、私は。やっと、駅へ向かって歩き出した。
イッチーがいないだろうかと見るふりをしながら昌哉を探している。商店街まで来ると、ショーウィンドウに映る自分の姿を見てがっかりする。なんともスッキリしない顔つきをしている。駅へ歩き出そうと振り返ると、目の前に立ちはだかる人があった。
「あれ?今日、なんで?」
昌哉だ。私は思わず抱きしめて、その胸に顔をうずめた。しかも涙まで零れそうになっている。昌哉の匂いがやさしいせいだ。彼はそのまま私を抱きとめてくれていた、人