129:一〇月二〇日 紅姫竜胆(六)

そのとき、ちょうど宅配便らしき制服にキャップのお兄さんがやって来たので、ここぞとばかり、イッチーを遮るようにして声をかけた。
「宅配さん!ウチです、お願いします。」
「お待たせしました。」
私は門を開けて宅配さんを玄関口へと促し、イッチーの方に向き直って門を閉めた。
「そういう訳で多忙にしておりますので、どうぞお引き取りください。」
私はイッチーが返事をするまえに玄関口へと向き直り、その場を去った。少しつっけんどんな態度を取ってしまっただろうかと気にはなったが、それ以上に気味の悪い想いをしたことを否めなかった。

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