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審査官にきちんと審査してもらうことによって、強い特許にするという考え方

別の記事で、先行技術文献の開示について、ご説明しました。
【Q&A】特許の出願書類に先行技術文献を記載する意義について

きちんと先行技術調査を行って、先行特許をきちんと開示することは、結局は、出願人ご自身のためであるということをご説明しました。

また、審査の過程で、十分な先行技術調査が行われずに特許になってしまうと、特許後に第三者によって、きちんと先行技術調査がされれば、すぐに無効にされてしまうリスクがあるということについてご説明しました。

以上の点を、一言で言えば、
『審査官にきちんと審査してもらうことによって、強い特許となる』
ということです。

審査官にきちんと審査してもらえないことがあるように聞こえるかも知れません。これは、審査の質が悪いという意味ではありません。

出願人側の対応いかんでは、審査官にきちんと審査してもらえないまま、特許になってしまうおそれがあるのです。出願時の先行技術文献の開示もそうですし、拒絶理由が通知されたときの応答もそうです。なんでもかんでも特許になればいい、という考え方は、賛成できません。

●強い特許と弱い特許

強い特許と弱い特許について、もう少しご説明します。

あなたの発明をAとします。
Aに最も類似する発明を、A1とします。
Aに類似するが、A1ほどまでは類似しない発明を、A2とします。

A2<A1<A

審査の過程で、A1やA2が見つかった場合、あなたの発明Aの特許性は拒絶されます。

①審査の過程で、A2のみが見つかったとしましょう。
Aを補正して、A+αにしたとします。この補正により、A2と類似しなくなったとして、特許になったとします。

A2<A1<A<A+α
(この例では、不等号が3つ分離れていれば、非類似とお考えください。)

ところが、A+αは、A1から見れば、まだ類似しています。この場合、A+αの特許は、A1の存在により、無効理由を有することになります。

特許後に第三者によって、再び先行技術調査がされれば、(A1が発見されて)無効にされてしまうリスクがあります。一言で言えば「弱い特許」なのです。

②一方、審査の過程で、A1が見つかったとしましょう。
今度は、Aをかなり補正しないといけませんね。A+βに補正したとします。これにより、A1と類似しなくなったとして、特許になったとします。

A2<A1<A<A+α<A+β

今度は、A+βは、当然ですがA2にも類似していませんね。こうして「強い特許」になるのです。

このように、審査の過程で、最も類似する発明(A1)を見つけてくれることは、出願人にとってありがたいことなのです。そして、審査官がこうした類似する発明を見つけてくれるように、アシストすることは、とても重要です。

具体的には、冒頭で述べた、きちんと先行技術調査を行って、先行特許をきちんと開示することが挙げられます。

●出願書類を、できるだけ明確・平易に記載する

もう1点挙げれば、「出願書類を、できるだけ明確・平易に記載すること」です。

発明の技術的内容に自信があるのなら、自信を持って発明を明確・平易に表現しましょう。不明りょう・難解な表現を使って、審査官の手をわずらわせることは、デメリット以外のなにものでもありません。もちろん、発明を平易に表現することと、発明の技術的レベル・価値が無関係なことは、言うまでもありません。

いくつかの話しが混在して、わかりにくかったかも知れません。
本記事の内容は自信があるのですが、あまり明確・平易に書けてないかも知れませんね(笑)

最後までお読みくださりありがとうございました。

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●元ブログ(+αの情報あり)

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東雲特許事務所(しののめ特許事務所)
弁理士 田村誠治(元特許庁審査官)
【東京都港区新橋】【東京都中央区八丁堀】【東京都北区田端】
【稀有な経歴】特許技術者→特許庁審査官→特許事務所運営

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