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【 N党立花先生へ 「黒川詰んだ」の供託金差押えの説明違います! 】

先ほど、立花先生のYou tube「黒川詰んだ…w~」https://www.youtube.com/watch?v=nsqlzM1jArg

 を拝見しましたが、供託金の差押えについて解説させていただきます。

今回の都知事選に係る供託金300万円は、没収供託(選挙供託)であり、金銭(現金)だけでなく、国債や振替国債での供託も可能であり(公職選挙法92条1項4号)、 一定の得票数(有効投票総数の1/10)に満たなかった場合、東京都がその供託金を没収することになります(同法93条1項4号)。

 そして、この選挙供託において、通常の供託(民法494条の弁済供託や宅建保証金の保証供託)と異なるのは、供託所です。執務時間中であれば、全国どこの供託所でも供託することができます(法務省・供託金Q&A【Q37】のA参照)。すなわち、どこで供託されるか分からないので、執行官とともに待ち伏せできません。

 次に、差押対象財産についてです。
 想定として、収監中の黒川に代わり、代理人が黒川立候補に係る選挙供託のため、300万円の現金を供託所(某法務局)に持ち込むとのことですが、供託(実際に法務局職員へ金銭を渡す)前に、代理人が所持している現金を差し押さえる場合と供託後の供託金取戻請求権を差し押さえるかというところです。
 
 現金自体は、民事執行法上、差押禁止財産ではありませんが、差押債務者(黒川)に帰属している(所有権がある)必要があります。しかし、現金の帰属の判断は、出資者ではなく、現金所持者であるとする最高裁判例があります。すなわち、現金の場合、その所有権は、所持者(占有者)である代理人にあるので(民法186条)、黒川の債務名義をもって、差押えはできません。
 
 東京都庁にて、供託後の供託書正本の提出時、当該供託書正本を差し押さえることもできません。動産ではありますが、単なる紙であり、金銭的価値を有しないからです。

 結局、差押えが可能なものは、供託金払渡請求権(供託金取戻請求権)(黒川が供託者、東京都が被供託者)という債権です。そして、実益があるのは、取戻請求ができる時であり、差押債権者が法務局供託所から300万円を取り立てます。すなわち、黒川が東京都知事選で、有効投票総数の10分の1以上を得票したことが確定したときとなります。

 よって、黒川の供託金払渡請求権を差し押さえたとしても、東京都知事選の立候補の妨げにはならず、選挙によって、有効投票総数の10分の1以上を得票がなければ、当該供託金は東京都に没収され、差押えは徒労に終わることとなります。いやがらせにもなりません。

 黒川に対する債務名義をもって、差押執行するのであれば、確実に金銭回収ができる財産を狙うべきです。いろいろあります。
 世間的な受け狙い(いやがらせ)であれば、供託金払渡請求権の差押えでも構いません。選挙後は、保釈保証金の差押えとか、刑務所収監中に発生する僅かの債権(労役賃金)などがあります…www

 

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