爽やかで甘い
ふっとあなたが動く度、風が吹きぬける度に、ほのかに漂う良い香り……。
集中から来る真剣な表情に、私は目が離せない。
見惚れている場合じゃないと思いつつも、どうしてもあなたが気になって。
それに加えてふわりふわりと届く香りが、私の心を揺さぶって行く。
いい匂いだな。
チラリ目線を動かして、ただただあなたを見つめてる。
高鳴りすぎた鼓動と、くらくらとしびれる感覚。
息が止まっているかの如く苦しくなると、はたと気づいておかしく思う。
あれっ? 何であたしがこんな感覚に陥らなきゃいけないの!?
頭の中で疑問符が躍る。
逆じゃない!? これ、普通、逆じゃない!? 私は逆であってほしいんだけどっ!?
盛大な自問自答に目が泳ぐ。
その時、耳に声が届いて反射するように視線を上げる。
私の視界がブロンドの髪を捉えた事で我に返ると、慌てて画面を注視した。
映画の観賞中だというのに、内容が全く頭に入って来ない。
後で話が合わなくなると困るでしょ! と自分自身に喝を入れるが、私の全ての神経は映画ではなくあなたに集中してしまう。
私の意志など置き去りにして。
そうして深くため息を吐き、仕方がないなと諦めた。
後で映画の感想を求められたら、その時は素直に謝ろう。
爽やかで甘いあなたの香りには、何をやっても敵わなかったと。