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弁証法思考 ~理解を深めて新しい価値を生み出す思考法

 不透明な時代ということでしょうか、論理思考力がとても重要視されています。大きな本屋さんに行けば、自己啓発やビジネスのコーナーに、さまざまな論理思考の書籍が山積みされています。またビジネスの現場では「ロジックが甘い」などと厳しい上司に指摘されることもあるでしょう。あるいはコンサルティング会社就職の面接では、ホワイトボードの前に立たされて、わけのわからない質問(有名な例は「日本に電信柱は何本立っているか」)をされたかもしれません。

 たしかに論理思考力はビジネスにとって強力な武器であることは事実です。たとえば、どんなによい商品やサービスだって「知らない人は購入しない」。もちろん「知っている人」全員が購入するわけではありません。それでも多くの人に購入してもらおうとすれば、多くの人に知ってもらう必要があります。だから広告宣伝するのですね。

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 でも広告宣伝には費用がかかる。「どんな人が購入しやすいか」を知ることができれば、その人たちだけに広告宣伝してコストパフォーマンスを上げられないか……などと進めていくのは論理思考の力です。

 しかし論理思考には致命的な欠点があるのも事実です。その欠点を補完するのが弁証法思考なのです。どちらか一方、ではありません。その両方を駆使することで、深い理解を得ることができ、新しい発想を生み出すことができるのです。

 論理思考は、紀元前3世紀頃に著されたとされる『ユークリッド原論』(平面図形や数の性質を、いくつかの基本前提から推論される論理体系とした)に端を発し、とくに17世紀に出版されたニュートンの『自然哲学の数学的諸原理(プリンキピア)』はユークリッド原論と同じ手法を用い、いくつかの基本法則から物体のさまざまな運動を導き出し、近代科学の礎となった。
 他方、弁証法は古代ギリシア哲学において議論・推論の技術として始まり、やがてソクラテス(問答法)、アリストテレス(三段論法)などを経て、ヘーゲルなどにより深化されていった。
(筆者は思想史や哲学の専門家ではありません。どちらも古来より「真なるもの」を追求してきた人間の叡智なのだということを主張したいのです。)

 残念なことに、弁証法をネット検索したり、書籍を探したりしても、出てくるのは難しそうな哲学の専門書ばかりです。われわれに必要なのは論理思考という思考様式であって論理学ではないのと同じく、弁証法思考という思考様式を身につけたいのであって哲学の専門家になりたいわけではありません。(論理学や哲学が無用だと言っているのではありません。興味の対象が異なると主張しているだけです。)

 弁証法思考をビジネスで使えるように、このテキストを書きました。

 大きな価値を生み出すビジネスパーソンは、弁証法思考を身につけています。おそらく弁証法思考という言葉は、意識していないでしょう。それは論理的な人が、論理思考という言葉を意識していないのと同様です。言葉を意識しなくなるくらい自然に考えることができるようになれば、きっと今までと違う世界を観ることができるでしょう。

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☆ 新しい業態、新しいビジネスモデル、新規事業を模索している方
☆ 差別化した商品・サービス開発に苦心している方
☆ 現状を打破したい方
☆ 洞察力(本質を見極める力)や予見力を高めたい方
☆ 就活や昇進などで他人と差別化を図りたい方
【内容概略】
 まず §1で、論理思考だけでは重要な視点を見逃す危険性があることを説明しましょう。その上で §2では弁証法思考の方法とその効用について解説します。続く §3は、よく知られている『桃太郎』のお話。しかし弁証法思考を用いながら考察することで、まったく違った世界観に至るという体験をします。そして §4では、弁証法思考を実際のビジネスに活用することで、大きな市場を創造した事例を二つ紹介します。

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