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経営の道具箱

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経営に関するさまざまな手法や、その考え方などをまとめています。
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記事一覧

お客さまは、なぜ『客』なのか?

 誰もが当たり前のように(すなわち何も考えずに)使っている言葉に、しばしば遭遇する。言葉は概念につけられた目印みたいなものだから、言葉がいいかげんなのは概念のいいかげんさを示す。そのような言葉に、あらためて焦点をあてて考察すれば、新たな知見が得られることだろう。  今回は「客」という言葉。なぜ「訪」や「来」ではなく「客」なのか。こういうときには、まず「客」を使った言葉を調べて、そこから特徴をあぶり出せばいい。  客観⇔主観、客体⇔主体・・・「客」には「外にあるもの、自分と

成功か? 失敗か?

「成功できなかった」 「それじゃ失敗したんだ」 「不満はない」 「それじゃ満足しているんだ」 「大きくなかった」 「それじゃ小さかったんだ」  このような反応をしばしば見かける。これらは、成功 vs. 失敗、満足 vs. 不満、大きい vs. 小さい、というような二つの要素で事柄を判断しようとしている。このことを『二項対立による判断』という。つまり〇か×かで判断しようというものだ。言い換えれば、基準線を一本だけ引いて、こちら側(此岸)と、あちら側(彼岸)とに分類しようという

事業再構築補助金 攻略の研究<第8回>

 補助事業期間での、事業再構築に向けた店舗改修や設備導入、従業員研修、販売促進などの具体的計画と、投資内容や金額、実施体制などを述べたら、次は「その事業再構築が(補助事業期間終了後に)うまくいく」ことを説明しなければならない。つまり計画の実効性を示すのである。 §7 事業計画策定のポイント(3) 今回の対象は次図だ。このセクションの目的は、新しい取組みが有望であることを審査員に納得させることである。  (1)市場規模予測では、まず市場(あるいは想定している具体的ユーザー層

事業再構築補助金 攻略の研究<第7回>

 『事業再構築の必要性』についての論旨展開ができたら、いよいよ事業再構築の具体的取組の計画策定に取り掛かることになる。しかし、この補助金制度では、第5回で説明したように、いわば事業再構築への移行期間である補助事業期間と、準備が整って走り出す事業計画期間とに分かれている。今回の対象は前者だ。この移行期間に建物改修や設備導入・撤去あるいは販売促進などの経費がかかり、この経費の一部を補助されるわけだから、もっとも重要なセクションと言ってもいいだろう。 §7 事業計画策定のポイント

事業再構築補助金 攻略の研究<第6回>

 今回から、採択される可能性の高い合理的で説得力ある事業計画を策定するため、各部分に、何を、どのように書けばいいのかを考えていこう。公募要領「10.事業計画作成における注意事項」(p.23)および「表2:審査項目」(p.27)に、そのヒントがある。 §6 事業計画策定のポイント(1) 今回の対象は次図の部分だ。  このセクションの目的は、企業の現状を説明して事業再構築の必要性を訴求することにある。審査項目で該当する部分は『(3)再構築点 ②既存事業における売上の減少が著し

事業再構築補助金 攻略の研究<第5回>

※ 初めての方は<第1回>からお読みください。  再構築プランの構想が十分に練り上がったら、いよいよ事業計画の策定に取り掛かることになる。審査は事業計画に基づいて行われるのであるから、採択されるためには、合理的で説得力ある事業計画に仕上げる必要がある。ところが補助金申請の事業計画には、やや癖がある。今回はそれを理解しよう。 §5 事業計画の全体像 本来、事業計画は自社のために策定する(ここでは経営計画と事業計画とをあえて混同して使っている)。そのため次図のような構造をして

事業再構築補助金 攻略の研究<第4回>

※ 初めての方は<第1回>からお読みください。 §4 事業計画策定の前に、構想を練る 事業再構築補助金を活用しようとするならば、前回みたように、事業再構築指針の要件を満たしていることを精緻に検討する必要があった。しかし要件をすべて満たしたとしても、それは、業態転換や新分野展開などが順調にいくことを保証しているわけではない。もちろん未来のことは誰にもわからないが、「順調にいくであろうと現時点で合理的に判断できる材料」を用意しておかねばならないのだ。それは補助金に採択される目的

事業再構築補助金 攻略の研究<号外>

事業再構築指針の要件が一部変更になり、2021年3月29日に改訂版がリリースされました。補助金活用を検討されている経営者さんはご注意ください。 事業再構築補助金の概要 2.1版 ※令和3年3月29日 2.0版 ※令和3年3月31日 2.1版 事業再構築指針 令和3年3月29日改訂版 事業再構築指針の手引き 1.1版 事業再構築指針の手引きの改訂履歴 大きな変更点は次のとおりです。 ◆製品等の新規性要件のうち「競合他社の多くが既に製造等している製品等ではないこと」を削

事業再構築補助金 攻略の研究<第3回>

※ 初めての方は<第1回>からお読みください。 §3 具体例で理解を深めよう 第2回で「事業再構築に該当するためには、厳格な条件がある」ことがわかった。しかし抽象的な内容だったので、今回は具体例で検証してみることにしよう。細かい検討をしていく必要があるので、第2回の図を見ながらじっくりと読んでいってほしい。 【例1】居酒屋を経営していたところ、コロナの影響で売上が減少した。そこで、店舗での営業を廃止し、オンライン専用の弁当の宅配事業を新たに開始する。  これは、概要10

事業再構築補助金 攻略の研究<第2回>

※ 初めての方は<第1回>からお読みください。 §2 どのような取組が「事業再構築」に該当するのか 採択される可能性を高めるためには「社会構造変化に適応して、付加価値額 / 労働生産性を高める事業再構築を計画化すること」が重要であることがわかった。そこで問題になるのは「自分の考えている内容が、事業再構築に該当するのかどうか」だろう。いくら付加価値額を増加させる事業計画を策定しても、それが事業再構築に合致しなければ採択されないからだ。  これを明確にするため、事業再構築指針

事業再構築補助金 攻略の研究<第1回>

 中小企業経営者の間では、事業再構築補助金(中小企業等事業再構築促進事業 リーフレット / 概要)の話題で持ちきりだ。コロナ禍の影響で疲弊している多くの中小企業にとって、補助金額の大きなこの支援策は、数少ない希望の灯に感じられるのだろう。予算額も桁外れに大きく、かなり早い時期から経済産業省が案内を出していることも期待に輪をかけている。  しかし、待て待て! 人気が高いということは、競争率が高いことを意味する。いくら全体の予算額が大きくても、一社あたりの補助金額も大きいので補