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成功か? 失敗か?

「成功できなかった」 「それじゃ失敗したんだ」
「不満はない」 「それじゃ満足しているんだ」
「大きくなかった」 「それじゃ小さかったんだ」

 このような反応をしばしば見かける。これらは、成功 vs. 失敗、満足 vs. 不満、大きい vs. 小さい、というような二つの要素で事柄を判断しようとしている。このことを『二項対立による判断』という。つまり〇か×かで判断しようというものだ。言い換えれば、基準線を一本だけ引いて、こちら側(此岸)と、あちら側(彼岸)とに分類しようというモノの見方である。

 しかし世の中の多くのことは、それほど単純ではない。若くないといっても老人を意味するわけではないし、高くないといっても安いことは意味しない。中間部分やグレーゾーンが存在することの方がふつうである。すると基準線一本で判断するのは危険であり、二本の基準線でモノを観る方が自然だろう。

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 そうすれば「成功できなかった」といっても、失敗した場合と、失敗ではないが低迷している場合とがあることがわかるだろう。また「不満ではない」といっても、満足している場合もあれば、満足とはいえないが当面の不満はない場合とがあることがわかるだろう。

 ビジネスにおいて問題になるのは、「どのような条件で基準線を越えることができるか」である。たとえば、成功するためにはどうすればいいか、何をすれば従業員満足を高めることができるか、などである。これらについては、それぞれ経営理論が指針となろう。

 創業セミナーで必ず説明するひとつに「失敗にパターンあり、成功にパターンなし」という言葉がある。市場(顧客と競合)のことを考えていない、根拠のない売上予測など、事業計画段階で失敗要因はつかめる。では失敗要因をすべて潰せば成功するのかといえば、それほど甘くはない。成功するためには運などの偶発的要因が必要になる。(カップヌードルが爆発的にヒットしたきっかけは、あさま山荘事件のテレビ報道だったという有名なエピソードがあるくらいだ。) だから失敗しない創業が重要なのだ。失敗しないでいれば(いずれ訪れる)運をつかむこともできようが、失敗してしまえば運さえつかむことができないのだ。

 従業員満足を高めようとして給料を上げたり、労働環境を整備したとしても、従業員は不満を起こさないだけである。けっしてモチベーションを高くもって組織への貢献意欲が高まるわけではない。モチベーションを高めるためには、努力への承認、達成感など別な要因が必要である、というのがハーズバーグの動機づけ・衛生理論だ。

 このように二項対立的にモノを観るのではなく、二本の基準線で判断することによって、世の中の事象を深く洞察できる一歩となるだろう。

軽くない記事ばかりですが、重要で良質な情報提供を心掛けています。サポートいただければ、たいへん有難く存じます。