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令和版粋なゲーマー養成講座:ライトサイド0:邪神神話の再興と技術の再発見

解説:昔々、だいたい25年ほど前、エンターブレインのTRPG専門誌『ログアウト』で連載していた『粋なゲーマー養成講座』の続編的な何か。もはや役目は終わったと思っていたが、ネタを思いついたので、書いておく。ちなみに、ライトサイド(光の世界線)なので、別の世界線もある。

令和時代のコンベンションと邪神系TRPG

 ようこそ、私の研究室へ。

 昭和から平成の初期にかけて、様々な媒体にTRPGを巡る環境とカルチャーを分析紹介してきたが、令和の時代にも新たな分析が必要である。

 ここで我々は後世の史家が誤解せぬように、周辺環境を明示しておく必要がある。令和は久々に禅譲によって誕生した新帝の御世であるが、平成中期以降の政治経済的な実験(おそらくは意図的な愚策)がすべてマイナスに働き、日本経済はマイナス成長を続け、就職とバブル崩壊が重なった氷河期世代(1996年前後に成人した世代)は日本のマイナスを押し付けられて絶望し疲弊し、平成は失われた30年と言われるに至った。自民党は最悪の時期を予測したかのように下野して、小泉改革のつけを民主党に押し付け、政権が取れると思ってなかった民主党は官僚とメディアを使いこなせず、自分たちの理想の政治をなす前に、自民党政治のつけを処理できないまま、自壊した。野党という選択肢を奪われた国民は絶望し、自民党の老人議員たちの腐敗は新自由主義の名前の元に加速した。新たな疫病「コロナ」環境ですら、ココア開発では開発資金の大半が中抜されるほど。

 それでも、日本のサブカルチャーは元気だった。

 TRPGも、バブル崩壊による出版物の冷え込み(いわゆる冬の時代)、冷え込んだユーザーの財布の中身を奪い合うライバル産業(TCGだけではなく、オンラインゲームもそのひとつ)の台頭などをくぐり抜け、21世紀になってもコアなファンを中心としたクラスターを形成し続けた。

 近年のもっとも大きな変化は、2010年頃から急増した「クトゥルフ神話TRPG」の若いプレイヤーで、TRPG紹介動画が起爆剤とされている。これに加えて、通信環境の進歩に伴い、オンラインセッションツールの進歩、充実により、これらの新規ユーザーが毎晩のようにオンセします!という先端層を形成し、そこからTRPGユーザーの世代交代すら発生している。この結果、昭和から平成初期に存在していたTRPGのノウハウの一部がロストテクノロジーとなり、各方面で車輪の再発見が起こっている。そのため、今回、この原稿を書くことになったのである。

令和3年10月。

そういう訳で邪神系TRPGコンベンションです。

 とあるTRPGコンベンション(*1)の風景。

 会場の隅っこで、もはや髪の毛が白い難解好夫(なんかい・すきお。59歳、フリーランス、TRPG歴40年)と色々知照(いろいろ・しってる。52歳、政府外郭団体系NPO管理職、TRPG歴36年)が、雑談をしているところへ、今回の主催者、少々梶郎(ちょっと・かじろう、47歳、会社員、TRPG歴35年)がやってくる。

少々「本日はGM、いえ、KPを引き受けていただき、ありがとうございます(*2)。今日の内容とレギュレーション(*3)はメールでもらっていますが、変更はありますか(*4)」

色々「頼まれた通り、新のつかない方のクトゥルフ神話TRPGで、ステージは大正帝都(*5)、追加サプリはなしで、乱歩物の新作」

難解「6版といえ、6版と」(*6)

色々「エディションの違いを説明するのは面倒だからねえ」(*7)

少々「新作シナリオ、ありがとうございます。ウェブでも期待の声が上がっています」(*8)

色々「既成シナリオは通過者(9)が多いから」

少々「難解さんは、ナチスネタの入ったクトゥルフ物、ACHTUNG! CTHULHU(*10)ですね。舞台は大正帝都で、システムはBRP(*11)」

難解「まあ、わしは色物枠(*12)だから、FATEでもよかったんやが、ルール説明に時間を取られたくないんや(*13) 若いのだとそもそも世界史やってないからな(*14)」

色々「難解さん、『トレイル・オブ・クトゥルー』(*15)絶賛だったのにやらないんですか?」

難解「情報収集優先でダイスより行動選択優先のガムシュー(*16)は、肌に合わないんや。前に、FEAR ITSSELF(*17)でこりたわ。わしはもっとばーっとダイスを振って、ショットガンで解決するのが好きなんや!」

色々「でも絶賛だったじゃないですか?」

難解「GMとして回せるかどうか、と、TRPG作品としての評価は別や(*18) 読み物としては最高だが、シナリオに組み上がらん。たぶん、オわしのGMスタイルに合わないんじゃ」

色々「面倒くさい人だ」

少々「それで後、難解さんにお願いなんですが、実はうちの娘が難解さんの卓に入りたいと・・・」(*19)

難解「そうか、オマエのとこの梶理(かじり)ちゃんもコンベンションになあ、今、いくつだっけ?」

少々「14歳です。動画でクトゥルフにハマりまして」(*20)

難解「リアル綾波かよ」(*21)

少々「まあ、生意気ですが、中学生ですので、お手柔らかに」

難解「オマエがこの邪神系コンベンション開く理由が親馬鹿だって噂(*22)は本当だったのか! まあ、覚悟しろ! 泣いて帰したる」

色々「難解さん、あんたも人の親でしょ!」(*23)

少々「え、難解さん、結婚していたの?」(*24)

難解「その話はやめ」

少々「打ち上げで詳しく聞かせてもらいますからね」

難解「きーこーえーなーいいいいい」

色々「で、ひろこさんは?」

難解「今日は『刀剣乱舞』ミュージカル(*25)の予約をしておってな、残念がっておったわ。私の『比叡山炎上』(*26)が火を吹く時が! とか言っておったのに、ミュージカルのチケットが買えたら、ころりと和服ででかけおった」(*27)

 ・・・時間がよろしいようで、今日はここまで。(*28)

解説っぽい何か

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