リハーサルはコケろ!?
リハーサルの出来が本番にどう影響するかについて、
個人的な感覚になりますが、今までの経験からお話ししたいと思います。
つい先日の11月3日、篠笛協奏曲のコンサートを終えました。
オーケストラと篠笛協奏曲を、しかも世界初演するということで、
いつになく、非常に高い緊張感で臨み、とても素晴らしい演奏内容となりました。
通常、リハーサルは本番の前に(当たり前ですが)別日で設定されます。
今回はそれが本番の直前の二日間、連続でありました。
そしてゲネプロと呼ばれるリハーサルが本番演奏の直前にもう一度あります。
ゲネプロでは、本番さながらにプログラムの流れ通り、
通しで行い、全体の流れや場当たりなどをチェックしますので、
あまり演奏内容に踏み込むような時間的余裕はありません。
さて、このゲネプロで、私、笛の独奏部分、
ズレました!
しかも盛大に!!!
タタールの砂、という私のオリジナル曲の中で起こったことです。
編曲は作曲家の高畠亜生さんにお願いし、
笛の独奏部分も作曲家の手によるものとなっていました。
オーケストラの伴奏はミニマルミュージック的なアプローチで、ある一つの複雑なリズムモチーフを繰り返しているパートがいくつか組み合わされ、全体として、わかりやすいノリのあるものとは趣の異なる、リズムが判明しづらい、でもかっこいい!というモチーフの上で、笛はあしらい吹きのように、自由度高い雰囲気で歌う、というものでした。
これは一旦、リズムが反転して聞こえたら一貫の終わり!
戻れる気がしない、という一番緊張する場面でした。
お察しの通り、そこで、盛大にズレたわけです笑
いや、笑ってる場合じゃない。
ズレたまま、しれっと吹き続け、やっぱりここまで来ないと合わないんだね~~!というところまでズレズレにズレ込みました。
それまでのリハーサルでは一度もズレたことがなく、パーフェクトに近い仕上がりでしたのに、
よりによって本番直前のゲネプロです。
ところが私は内心、喜んでいました。
頭おかしいのでしょうか?
いえいえ、多少おかしいところはあるかもしれませんが、
経験から、これは良い傾向だと知っていたんです。
なぜならまず、第一になぜズレたのかはっきりわかっていました。
指揮者の位置がリハーサルと違い、ソリストである私が正面を向くと、全く見えない位置だったのですが、そのまま、指揮を見なければどうなるか、果たしてバッチリ合うのか、
試したかったのです。
結果、ズレた。
それならば、指揮を視界に収めておけば良い、ということがわかりました。
もう一点は、リハーサルで失敗しておくことが、
本番への集中力、臨場感を高めることを知っていたからです。
逆にリハーサルであまりにいい演奏をしてしまうと、
本番はそれを越えたくなります。
絶対に、越えたくなります。
それはもう雄叫びを上げる勢いで!越えたくなります。
ところが、その感覚は危険で、
リハーサルの演奏の範疇を越えられない演奏になるのが、ほぼ決定してしまいます。イメージしているのがさっきめっちゃ上手くいった、あの感覚だから、です。リハーサルをもう一度、なぞるようなことをしてしまいます。
それって最悪なんですよね。
そういうわけで、
リハーサルがめちゃくちゃいいと、
本気でヤバい・・・!!
そこからすると、リハーサルで盛大にこけてますから、
もう何も心配することはありません。
この2点の理由から、私はすっかり安心して、
本番の演奏の成功を確信しました。
こんな話をミュージシャン同士でしたことがありますが、
多くの方が同じことをおっしゃっていたので、
なにか本質的なものががあるんじゃないか、なんて思っています。
リハーサルはコケてOK!
ですよ、みなさま🎵
本番で笛の神様とお会いしたいですものね。