丘の上でこう言った

   0/『いのちの戦場』

   白い布を纏った人間たちが並んでいる。
   みな口々に、何かを喋っている。

ルミ   はじめまして!こちらの次元に配属になりました、ルミ、と申します。みなさまの快適な生活と、希望にあふれた未来をお手伝いするために、あの太陽の名において、世界の下僕となることを誓います!
ラル   タ・トレスティーナ!ペドロター、トロトヤマンナトラ、ラル、ハトナ。ウティーヤ、ユマホムナ、キトーナバヤ、フツナバーヤチート、サス、ラテルソーナ、トロゲマーナ、ヤ、トリトナー!
スズ   ベトライスク!ジュナ、ワルドン、ペッドパッド、スズ、ナンバル。トントフナ、リラナワート、ラバト、アダストラナバナ、ジャルドヘルナ、ペナラ、ラナサラトランベレ、ワルデラス、マエフ、ラカトニッチ!
セラ   インハムダー!オイナー・ハルハンエー、エーイーソナ、セラ、ハムナ。ニュムナー、エ、トムナー、ヤントヤクル、メラトムカ、レラトキダ、ウェッチウェイホン、ダハルハナ、エダエー・メツイー、ウリエレダー!
カイ   アーニャハバマ!カナトラス、マンナエイト、バートルー、カイ、ニーミャトー。アサワ、トートリノス、パントミャーナキャー、ハパトート、メ、ナナワルト、カンナトール、ハナ、トースナ、レタナートラ!
トト   アントム!ヴァトナチカ、ホントナ、ジュデット、トト、ウェイ。ウンナ、ナナトナ、ハースナキース、ポット、ユース、オーミットル、クワト、デット、スマー、ヴァットベー、キンナ、ソナト!
リン   メスティローサ!キャスク、ペーナヒンツ、ペイネ、ハットムーア、リン、キャンス。ティットリルリーナ、ゲリントース、バリアント、キュース、フィット、アドイ、カンケット、ペナエッツ、ジュダッティ、テラ、キャッカ!

ルミ   誓います!
ラル   トリトナー!
スズ   ラカトニッチ!
セラ   ウリエレダー!
カイ   レタナートラ!
トト   ソナト!
リン   キャッカ!

  青い明かり。
  泡の音。
  神々が棲む地。
  舞台の脇に、みながひざまづく。
  舞台中央、黒い画面に、色とりどりの淡い光が生まれてはきえてゆく。
  光はぼこぼこと生まれてきて、やがて大きな光に。
  大きな光に、向かってゆく者たち。
  ある者が、光にたどりつく。
  倖せ。
  そして、彼らが気づかないのは、死体の山。

  舞台、ゆっくりと暗くなる。
  全員が立ち上がり、突然、光。
  全員、白い布を脱ぎ捨てる。

   1/『たまごのくに』


  白い場所。白いこどもたち。
  生まれる前の場所。
  生まれる前の、たまごのくに。

A    おぅーい!
B    おーい!かみさまぁああーっ!
E    太陽が、昇るよぉーっ!
D    月が、歌い始めるよーっ!
C    花が恋をはじめて
F    土が寝返りをうったよぉ!
G    まだ、足りないのかな。
C    まだまだまだ、足りないのかな。
D    かみさまぁーっ!
全員   か・み・さ・まぁあーっ!
E    ねえ、ここにいるよ!
F    ここで、待ってるよ!
B    もうずっと、長いこと。
A    さかなだ!

   見え始めるのは、急速に躍動を始める、世界だ。

D    そこにあったのは膨大な熱量でした。
E    電気だったかもしれない、
F    熱だったかもしれない。
G    光だったかもしれない。何もなかった私たちの次元に、それは突如として吹き出した!
B    暗闇の中のロケット花火のように。
C    飛び出した火の粉は燃え移り、夏祭り、ナイアガラの滝のように
D    光の
A    洪水!

   ものすごい光と、それが飛び散る様子が、三人には見えている。
   それはやがて天になる。

三人   星だ……!

C    海から生まれました。空は赤黒くて、時には黒い雨も降りました。
B    いつしか仲間を作り、一緒に行動し・・・ある日、共に歩むことを誓い合いました。
A    淋しかったから。
D    やがて信じることと裏切ることを学びました。
E    あるものは牙を持ち
G    あるものは殻を持ち
F    追う者
B    追われる者
A    去る者
D    残る者
G    生きる者
F    滅びる者
C    系統樹は立ち止まることを忘れたかのように----------

A    芽生えを迎えた胞子が、踊るように天を刺して、伸びて行くのが見えました。
E    海から川へ、川から陸へ上がってゆく魚たちを、シダの森が見つめています。
C    魚は小さなトカゲになり、小さなトカゲはやがておおきくなりました。
D    おおきなトカゲは地上を覆い尽くし。
B    森は食い荒らされ、減って行きました。
G    ある日。
A    あっけなく彼らは逝きました。
B    それはきっと、あなたが覚えていない日。
C    ボール遊びの日、コントロールが悪かったあの一発。
F    巨大な隕石は海に激突しました。海水と泥が巻き上げられ、辺り一面は暗黒となりました。
D    長い冬は明けることなく。太陽が再び光を投げかけるまで、わたしたちは眠り続けました。

   冬眠。いつしか光が射し、再び加速するいのち。

E    お~は~よ~ぅ。
A    おはよ。
B    おはよう。
D    おはよう!
F    おはよう!
C    おはよう、おはよう!
G    おはよう!
A    おはよう!
E    冬眠から冷めるまでの長い長い冬を抜けて、ちいさなネズミはちいさなサルへ
G    ちいさなサルは群を成し
C    守り、争い
F    いつしか家族を愛するようになり
D    いつしか孤独をおそれるようになり
B    強くなりたい、強く在りたい、
F    誰のために
E    息子のために
A    娘のために
D    妻のために
C    家族のために
A    仲間のために

A    くそぉおおっ!

   A、B、C、D以外、冷たく背を向ける。
   四人、黒曜石を削る。

C    ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう!
B    死んでたまるか
D    死んでたまるか
A    死んで、たまるもんか

   やがて矢じりが出来上がり、それを見つめている。と、四人に緊張が走る。
   敵。立てるか。いや、立てない。立ちたい。立たなければ。
   はじめての。一歩。四人、向き直り。

四人   歩けたよ!ねえ、歩けたよ!

   答えはない。

A    太陽が、昇るよぉーっ!
B    月が、歌い始めるよーっ!

   静寂。四人、置き去りにされてきた淋しさを強さに変えて。

四人   かみさまぁああああーっ!

   激しい音楽。
   背後には突然、RPGの名前設定画面が。
   いのちが、脈動をはじめる。

   名前設定、「あなたの名前はなんですか?」アイウエオ表。
   と、女性のシルエット。
   そして、男性のシルエット。
   ふたりのシルエット。しあわせなふたり。
   それが鋭く変形し、これから母になる女性のシルエットへ。
   突然画面、砂嵐に。そして、消える。
   
   紫、青そしてピンクの明かり。
   激しさと希望と、ある種の凶暴さをもって、
   いのちは飛び立ってゆく。(ダンス)

   2/『俺。』


タク   あ、もしもし。うん。分かった。今から行く。…そっちが悪いんだろ。うん。分かった。じゃあ。

   セラ、クッションを出してくる。あわただしそうにしている。
   タク、チャイムをおす。そして、ノック。

セラ   はいはーい。
タク   (部屋に入る)
セラ   片づいてないって言ったのに。
タク   んなことはどうでもいいから。
セラ   あ、そ。ねえ、情報処理の課題やった?
タク   あ、やってねえ。
セラ   明後日までだよ。
タク   わかった。

   ふたり、奥の部屋に消えてゆく。

   3/『うまれたいのち』


   白い子供たちが、目覚め始めた。

トト   み~ん~な~?
ルミ   なああにぃ~?だあれ?
リン   誰か、いるの?
カイ   声がする。
ルミ   となりに、誰かいる!
カイ   うわ、、なんだ?これ。誰だ?
トト   大きな声がきこえる。
リン   今あたしの足さわったの誰!?
カイ   うるさいなぁ。
トト   ここ、どこ?
ルミ   あなたは、だれ?
リン   どこから、きたの?
カイ   この部屋には、ぼくたちしか、
四人   いない…?

   がらんどうの部屋。

ルミ   こ…こんにちは!
リン   あなたは、だれ?
ルミ   あたし…あたしは、ルミ!
トト   はじめまして。ルミ。
カイ   ここは、どこだ?
リン   その前に、あなたは、だあれ?
カイ   カイ。
トト   ぼくは、トトだよ。
カイ   きみは?
リン   リン、っていうの。
ルミ   じゃあ、みんなで、はじめまして。
四人   はじめまして。
カイ   …って、そんなことをしてもしょうがなくて!とりあえずここは、どこだ?
トト   それより前に、ぼくたちは、だれ?

   悩。

   そして。

   一瞬、戦慄が走る。急速に、加速するリズム。

リン   (ポケットにふと手をやる。と、何かに気づく!)…これ!……思い出した。
カイ   思い出したって、何を?
ルミ   (ポケットから同じく、小さな紙切れを見つけ)私も、思い出した。
カイ   だから何を?
トト   (自分のポケットから見つけた紙切れを見ながら)かみさまの、メモ。
カイ   だからそれは…(と、見つけ)…思い出した。
トト   そうだよ。ぼくたちは、
ルミ   …天使だ。

   振り返る。と、映像。
   『君たちに渡したメモは』
   『世界でたった一つの重要な情報だ』
   『手放してはいけない。』
   『君たちは天使である。』
   『あの丘に捧げるのだ』
   『そして、かみさまを』
   砂嵐。

四人   (全員、瞬間的に起こった頭痛をこらえて)…かみさま?

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