ブラック・ウィドウ感想【髪ふぁさー】

 アベンジャーズシリーズ最新作! 時系列はシビル・ウォー直後で過去の物語。そして超人ヒーロー集団の中で唯一生身で戦う、麗しくもカッコいいナターシャことブラック・ウィドウが主人公だ。

 サノスみたいな異次元の強さを持つ敵は存在しない。だが見終えた後の充実感は大いにあり。やっぱりアベンジャーズシリーズは良い物だと痛感できるし、エンドゲームの補完としても十分な役割を担ってくれる。

 今回は当映画のネタバレ、およびエンドゲームのネタバレを含んだ感想になりますので、まだ見ていない人は映画館で見よう。ディズニー+でも見れるけど、追加課金で2980円かかるので推奨しかねます(何度も見れるという利点はある)。映画館で2回以上見たいって人はこちらの方が安いけど、【映画館で見る】という映像体験はやはり映画館でしか味わえないと個人的に思います。

※再度注意。2作品のネタバレ含みます。
 よろしいという方は読み進めてください。

いきなり総評

☆5段階で表すならば→★★★★☆

 アベンジャーズチームが一切登場しない。シビル・ウォーというヒーロー同士の戦いが巻き起こった直後のため仕方ないと言えばそうなのだが。ぶっちゃけ今回の敵はヒーローの誰か1人でも来てくれたらあっという間に解決してくれたであろうことは疑いようもない。電子機器多めの城塞だったのでマイティ・ソーいたらあっさり倒してくれただろう。(単独ヒーローの作品には他ヒーローほぼ出ない法則)

 しかしナターシャというアベンジャーズの中でも謎多き人物の過去に迫る物語という事で、期待値は高めだった。てっきりインフィニティ・ウォーの後に空いた5年間を埋める物語と思っていたが、そうではなく「彼女自身の過去に決着をつける」物語だった。派手なアクションも絵面も爆発もあったのでアクション映画としての見応え抜群。

 ☆5でなかったのは、ラスボスの小物ぶりと、作品全体を取り巻く陰湿な雰囲気に少々辟易した部分が大きい。


ナターシャの過去

 ナターシャは幼少時代からスパイとして家族を演じていた。ニセの両親、血の繋がらない妹。仮初の家族を3年演じた後は、生存率の低い過酷な訓練が待ち構え、それを超えた後は要人暗殺が待っていた。

 本当ならヒーローよりも悲劇の悪役ポジションが似合いそうだった彼女はそれでもヒーローとして活躍する事を選んだのは「自分の選択肢」を行使できるほど強くなった証なのだろう。

 エンドゲームで何故、あのような選択肢を取ったのかは彼女のそういった境遇、そして本作で「仮初でも存在した家族の絆」があることを証明したことで「真の家族を持つホークアイのために」なんて動機が容易に浮かんでしまう。それはエンドゲームでも感じてはいたのだが、本作品でその部分がより強調された。なので出来る事なら

「シビル・ウォー」→「ブラック・ウィドウ(Cパート除く)」の順で見てほしい気もする。いや、Cパート省くのは無理だから駄目か……。エンドゲームまで見終えたら、彼女の人となりを知っていくという筋書きでも充分だろう。


本作のラスボス

 見捨てられたり路頭に迷った女の子を保護してやる男と書けば優しいおじさんだろう。実態は過酷な訓練で鍛え上げ、要人暗殺のための駒として各国に送り込み、洗脳を施した上で一生涯を「死ねと言えば死ぬ」ような自由や人権の無い存在に作り替える、ラスボスことドレイコフ曰く「リサイクル」でしかない。

 そうして作り上げた最強の私兵(ウィドウ)達を、遥か天上の要塞にある自室に籠って操り悦に浸り「表に出ないだけで俺は最強なんだ」と思い込んでいる子供部屋おじさん。それが本作のラスボスだ。恰幅は良いので何か強化しているのかと思ったがそんなことは一切なく、ナターシャだけでも十分対処可能な単なる人間でしかない。

 手口が陰湿で陰惨という面で生理的嫌悪感が凄まじい。18歳未満は閲覧禁止な同人とかでありそうな洗脳手法もあり、「うわぁ……」とドン引きすることは必至だろう。攫ってくるのが女の子ばかりで「暴力で組み伏せる」気満々なのも気持ち悪い。


家族

 アベンジャーズの内情に詳しいナターシャを狙い、攫って脳の解析をする事でヒーロー達も意のままに動かしてやろうと目論むドレイコフ。
 対するナターシャは、仮初の家族で妹のエレーナがある任務の中で入手した洗脳解除ガスを用いて、未だ存在していたレッドルーム(ドレイコフの組織)の壊滅を目指す。

 以上が本作の大筋だが、流石にナターシャ1人だけで戦うには余りにも戦力不足だ。では味方は誰か? それは幼少期に3年間、仮の家族として過ごしてきた父母と妹だ。

 は「レッドガーディアン」という、キャプテン・アメリカに対抗して生み出された超人だが、3年の任務の後は組織から捨てられて極寒の収監所で過去の栄光を引きずっている。本作のコメディリリーフ。征服王とか有能スパイとかで名を馳せる物凄く良い声だが駄目親父感が半端ない。キャップの対抗で生み出されただけのことはあり、デブりまくっていてもちょっとやそっとの攻撃ではビクともしない。でもやっぱり劣化版キャップでしかないんだよなあ。

 は研究者としてドレイコフの信頼を得ており、ドライな性格……だが、どういうわけか3年間の思い出が刻まれたアルバムを未だ大事に持っている。ぶっちゃけ彼女の研究は脳を自在に操ることが出来る領域に到達しそうなので危険極まりない。

 は優秀なウィドウだったが、洗脳解除ガスを吹きかけられて自由になりレッドルームの姉妹(?)たちを救おうとする。家族に嫌いと言いつつ嫌いになりきれない精神に思春期部分を残す女性。ナターシャ程の戦闘能力はないが、勝負どころでは慌てず泣きさけばずに大胆な事をするクソ度胸が半端ない。姉の着地ポーズに入れるツッコミは本作の爆笑ポイント。

 癖の強い。しかも血は一切繋がっていない。3年間しか一緒にいなかったような家族だったが、そのコンビネーションは目を見張るものがあった。劣化版キャップとはいえ、本作のラスボスの右腕には十分な働きをしてくれている。


虚仮おどしの絆

 洗脳から解放したら即刻寝返ってくれる。そういう味方しかいないドレイコフのなんと悲しい絆の形よ。各人に20年くらいは教育と言う名の訓練施しているのに誰も心服していない、これほどカリスマ性のないラスボスも珍しい。

 仮初の中にも真の絆を見出せるナターシャ一家とは全く逆で、仮初は本当に仮でしかないドレイコフ。あれだけの私兵を持っているのに誰も心の底では服従していない。まあそんなんだから洗脳なんて手段を用いるのだろうけどね。最早虚仮おどしである。


ラスボスの解析

 大きな要塞の中にある部屋でモニターとタブレットをいじって世界の裏を牛耳るゲームをしているおじさん。「自分は凄い」と思っているから野次に耳を貸さないが、しかし自分の築いてきた物を「そんなに凄くない」と言われたら顔を真っ赤にして暴力を振るい、自分の力を誇示する子供。手の内もアクセス方法も寝返ったスパイの目の前で披露する位余裕がない。

 なんなら事故死寸前だった娘も自分の右腕にして運用する、自分本位で思いやりのカケラも存在しない。でも自分は育てたというのだ。レッドガーディアンは3年間で洗脳もなしに仮の娘2人との絆を示せたというのに、こっちは20年以上の実の家族なのに一切心が通っていない。

 あくまでも強いのはウィドウたちの組織力と、誰にも見つけられない(トニーとかは見つけられそうだが)空中要塞、そして動きの完コピが出来る実質ラスボスのタスクマスター(ドレイコフの娘)だ。

 誰かに何かをさせるばかりで自分からすることは、無抵抗だと分かっている相手にイキリちらかして失態演じているばかり。だから世界を牛耳っていると言われても「凄い」ではなく「何がしたいのか」が分からない。

 あくまでもこいつは「誰かを支配下に置いて悦に浸る」事だけが、他人の優位に立つことだけが趣味であり全てなのだと私は思った。美味い料理を食べている描写も、要人を招いてパーティする描写もない、天上人になった気分で君臨する盤上の神でいたいだけ。だからこそ、威厳の象徴たる要塞が地に落下するのは必然だったしざまぁ感は半端なかった。


Cパートは割愛

 毎度アベンジャーズ映画には必ず存在する「次回への匂わせ」的な、エンドロール後のCパートは本作にも存在します。でもここでは言いません。見たくなったら近隣の劇場に行って見てきましょう。映画もそうですが、感想で知り尽くすのばかりではなく、見たい映画なら自分の目で確認して見ましょう。エレーナとレッドガーディアンのいるお蔭で暗い雰囲気がかなり緩和されていますのでお勧めです! 何度も見たいって人はディズニー+の課金も検討するのが良いでしょう。 以上、感想でした!

サポート1人を1億回繰り返せば音霧カナタは仕事を辞めて日本温泉巡りの旅に行こうかなとか考えてるそうです。そういう奴なので1億人に到達するまではサポート1人増える度に死に物狂いで頑張ります。