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「オレは違うけど、他のみんなはやっている」こと3選

私は2021年のコロナ禍に、20年以上勤めた会社を46歳で辞めました。売上高1兆円以上のグローバルカンパニーで、本社人事の管理職を務めていました。現在は独立開業し、クライアント企業から委託契約をいただきながら、フリーで組織・人事コンサルティングの仕事をしています。

今日のテーマは、会社の中でのあるある話です。題して「オレは違うけど、他のみんなはやっていること3選」です。

あなたの上司が自分や周囲のメンバーに対して、「オレは違う」と言っていることが、「いや、あなたもそうだから」と言いたいことがあるかと思います。

「立派なプレゼンテーション資料はいらない」問題

 「またパワーポイントの嵐か。そんなにキレイに作らなくていいんだよ。見栄えより、中身が大事なんだからさ。どんだけ時間かけてんだよ。オレへのプレゼンには、そんなに時間かけなくていいからな」

と、いつも言っているが、部下の作った資料のフォントが統一されていないことへの指摘はとどまることを知らない。

「ほんと細かいことで申し訳ないんだけどさ、この前作ってくれた資料、フォントだけ揃えておいてくれる?別に社内資料だからいいんだけどさ、ちょっとだけ気になって。あ、それとこのプランBの別パターンを1枚だけ追加してもらっていい?本編には入れなくていいから。補足資料に入れておいて。ペライチでいいよ、ペライチで」

こんな感じで、本編資料の10倍の補足資料を作成させる。当日の会議の流れによってこの補足資料を使うとのことだが、いまだに補足資料の使用回数は、「このアンケートに答えると抽選で100名様に当たる!」くらい確率が低い。

ちなみにペライチというのは、ペラペラの紙を1枚だけ作ればいいよ、というライト感覚をアピールしているのだが、そもそも紙に打ち出す予定は100年後まで含めてない。また、上司自体の存在がペライチだと職場の皆が思っているということは、口が裂けても言えない。

「立派なプレゼンテーション資料はいらない」と言っているのには、常に部下の仕事量を気にしていますよという表向きのアピールです。ただ、本人も気づいていない裏目的は、自分が優秀なマネジャーとして認められたいということです。

そんな上司には同調しながら「パワポの作りこみってダメですよね。社内資料のルール決めましょうよ。本編は10枚まで。補足資料はゼロ。フォントは何でもOK。ってことでどうです!?」と逆提案しちゃいましょう。

「無駄な会議多すぎ」問題

「この会議さ、本当に必要なの?何時間もかけてやる意味あんのかな。オレならメール一本で済ますけどな」

といつも言っている。会議中はノートPCを広げ、忙しそうに内職をしているのだが、それは自分に発言能力がないことをカモフラージュしているだけ、ということを関係会社を含めた全社員に見破られているのを本人は知らない。

「うちの会社って会議多すぎだよ。給料高い人がたくさん集まって、ほんと非生産的だよな」

と、指摘自体はそこまで間違っていないのだが、結局会議で一言も発言していないのだから、文句を言う資格は1ナノもない。会議多すぎ問題に加え、話は上位者への不満へ広がりをみせ、最終的には「夜の部」と称して、ハイボールとともに生産性ゴジラマイナス1.0の飲み会へと引き継がれる。

無駄な会議多すぎと言っている上司は、報告だけなら資料を確認するだけで十分だと伝えたいと思っている素敵な上司です。「あちこちの会議に呼ばれる重要な人物」という自分アピールが見え隠れするお茶目な上司に同調しながらも、「そうですよね、社長が出る会議もブッチしちゃってください」と背中を押してあげてください。

「事前ネゴなんてやめとけよ」問題

「専務に対して会議前の事前ネゴなんてしないでいいからな。何のための会議なんだって話だよ。会議で一発勝負でいいから、よろしく!」

その言葉自体はごもっともで嫌いではないのだが、いかんせん喉越しが悪く不快感が残る。

「事前ネゴする暇があったら、企画自体を良くすることに時間をあてよう」

といつも言っているが、自分がプレゼンするときは、しっかり事前ネゴをしている。その姿は社内のZ世代全員に目撃されている。そのうえ事前ネゴしたはずの専務に会議本番で裏切られ失敗に終わる。

「専務、この前の反応と違うじゃんかよ」と一人でブチ切れて舌打ちする音は、音速のレベルをはるかに超え、光の速度でオフィスのフロア全体に響き渡っている。

「事前ネゴなんてやめとけよ」と言っている上司は、実は自分のプレゼンに自信がないのかもしれません。事前説明するほど専務のことを大切に考えていますよ、という自分アピールを織り交ぜながら、会社人生をたくましく生き抜くかわいい上司には、「就業規則に、事前ネゴしたら懲戒処分にするように人事部に言っておきます」と控えめにお伝えしましょう。

「オレは違う」発言は、実は自分自身を映し出す鏡

「オレは違う」発言は、無意識な弱みを映し出しているものです。人間誰しもが弱みを持っているものです。

上司の「オレは違う」発言に対して、「いや、あなたもそうだから」と思う前に、その発言が周囲を見下したり、コミュニケーションを阻害する要因となることに気づきたいものです。

大切なのは、「オレは違う」という傲慢さではなく、その状況を改善するための行動や仕組みに落とし込むことです。他者を見下すよりも、自分も成長が必要だという謙虚さを常に持つことです。

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