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作品に光る命を見る

映画「おこんじょうるり」を見る。
浄瑠璃を歌う「おこん」という狐と、いたこのおばあさんとの暮らしを描いた、ストップモーションの人形劇。

精密でリアルで…というのとは違う、かわいらしい造形の人形なんだけど、首の傾げ方や腕の仕草などで繊細な感情が表現されていてとても素敵だった。
人形劇って、表現の幅が限られているからこそ、その中でのめいっぱいの試行錯誤が感じられるし、その「めいいっぱい」な感じがかえって不思議なリアリティを持っていて面白い。

これは数年前に行われた上映会の予告映像。
数秒だけ、映像が見られます…。

文科省推薦作品だったとのこと。今の子はこういうの見たらなんて感じるんだろう。

奇しくも翌日、人形師・辻村寿三郎さんの訃報を聞く。あまり詳しくはないけど、展示で何回か作品を拝見したことがある。
布の柔らかな印象に反して、見ている側を見つめ返すような強さのある作品だった。


また、(ジャンルはすごい飛びますが)アートディレクターの信藤三雄さんの訃報もほぼ同時に入ってきて、少し気が滅入る。
私がクリエイターになろうと思ったのは信藤さんのお仕事を見てのことでした。私にとって思い出深い信藤worksはこれ…。(拾い画ですみません…)

My Little Lover/NEW ADVENTURE
CORNELIUS / 69⚡️69

どちらも、ブックレットを見て音楽を聴くことで作品を“受け取る”ことが完成する…という感覚があって。小学校の時、「こういうのを作るのはなんていう仕事なの?」と考えたきっかけでした。
ご冥福をお祈りします。

今の自分に影響を与えてくれた方が亡くなるのって、自分とは遠い著名人や、会ったことがない人でもショックなものなんだな。
「その人はもういないんだ」と実感することの重みがあるというか、いや、重いのに何もないという軽さがあるというか、そのちぐはぐさに少し、ぽかんとしてしまう。

先述の「おこんじょうるり」は、息も絶え絶えの「おこん」を抱き、おばあさんが成す術もなく「おこん、おこんや」と泣くところで結末を迎える。過剰なカメラワークがあるわけでもなく、涙をたくさん流して号泣するわけでもない。力なく倒れる人形(きつね)を、おろおろした人形が抱きしめる。無力さが切ない。

以前、人形関係の本で読んだ「人形というのは『ヒトガタ』なのだという一節を思い出す。


今日の絵

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