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水源になる音(遊佐未森「潮騒」をやっと聴いた話)

遊佐未森さんのアルバム「潮騒」を買った。
ものすごく良かった。
心が震えるってこういう感じだよなと思って泣けてしまった。

私は、忙しかったり不安が強くなると、何かを吹き飛ばそうとか打ち消そうとしてどんどん激しいものの方へ走ってしまう。
このところは本当にそれが際立っていたんだけど、久しぶりに、何かを打ち消すのじゃなくて、自分の中に吸い込める音楽を聴いた気がした。
自分の中で幾重にも反響していくようで、聴いた後、その余韻にちょっと呆然としたくらいだった。

このアルバム「潮騒」がリリースされた一昨年は、いろんなライブやイベントが、コロナ関係で発表されてはキャンセルされたり「こんな時だからこそ」と様々なアーティストがイレギュラーなやり方で作品を出していた。

リリースされても手に取る気になれなかったのは、その「いつもと違う感」を受け止められなかったからだと思う。
これまでの継続で何かを楽しむことが、メンタル的に難しかった。「いつも通り」でいようとするほど、いつも通りではない部分が際立って感じられて、自分にとって一番フラットなところにいるアーティスト=遊佐未森さんの音楽を、心のどの部分で聴いたらいいのかわからなくなってしまった。

ようやくこれを聞こうと思ったのは、先月行った旅行でのこと。
高速バスの中、外を眺めながらイヤホンで未森さんの曲を聴いてたら、無防備なところに何か優しい水が流れてきたような気持ちになり、ほろほろと涙が。
その時、何かが自分に戻ってきた感じがして、なんとなく「もう準備ができたかもしれない」と思えたのでした。

生活が変わるってしんどい。
コロナの影響がじわじわ出てきた頃「こんな急に、臨戦態勢みたいな日常になっちゃったら、後々トラウマみたいになりそう」と思ってたけど多分、今そういう感じなんだろうなあ。

何気なく暮らしてるけど、みんなどうなんだろう?私は全然。全然です。
コロナ前と同じ気持ちではないし、そこから続いている政治的な不安感、不信感も含めて、基本的にはずっと緊張とイライラが止まっていない。単純にコロナだけの話ではなくて、引っ越しとか仕事とか、個人的な理由はたくさんあると思うけど。

でも、そうして自分が緊張していたんだというのを、この作品を聴いて気が緩んで、ようやく気がついた。

優しくて柔らかで、でもまっすぐな芯があって、鋭いけれど穏やかで。未森さんの作品はやはり私の北極星だ。
素敵なもの、好きなものを、何かを避けるためじゃなくて、純粋で好きで大事にしたい。
大事にしてきた、これまでの時間も、大事にしたいよね。


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