会社が5周年を迎えた経営者の話
4/7。今日でMyDearestというVRエンターテインメントの会社が創業5周年を迎えます。
(今回のnoteは「経営者編」です。
沢山のことを書いていたら収拾がつかなくなってしまったので、「経営者編」と「プロデューサー編」の二つに分けたいと思います。
作品のことについては基本的には「プロデューサー編」で後日まとめますので、そちらもご期待ください。)
4年前には、「VR冬の時代」と言えるほど大変な時期だったため上記のような感情が強めの投稿をFacebookにしていました。
そこから5年目を迎えて、2020年12月4日にリリースしたアルトデウスBC(ALTDEUS: Beyond Chronos)というVRゲームが、VRゲームにもかかわらず日本最大級のゲームアワードであるファミ通・電撃ゲームアワード2020にてベストアドベンチャー部門最優秀賞を受賞するまでになりました。
そんな現在2021年4月7日に至るまでの想い出の一部、特に強く感情が動いた重要だった場面を振り返っていきます。
読み物として面白がってもらったり、これから起業する予定の人に何かしら参考になりましたら大変幸いです。
1年目(2016年度)
24歳で当時勤めていた会社を1年で辞めて創業。
「VRで起業します!」と言って入社したため周囲に辞めることに驚く人などは特におらず2016年3月30日に退社しました。
新入社員向けの年度末の人事からのアンケート的なものに、希望配属先に「起業」と書いて怒られたのがなつかしいです。
辞めることが決まっていたのですが会社には所属していたので規則上、新入社員向けの2年目に向けてのキャリアワークショップに参加することになって、5年間のキャリアステップを書くように言われて、創業する会社(MyDearest)の5か年計画を書いて周囲が爆笑していたのもなつかしいです。
(同期が500人くらいいるはずなのですが、本当に偶然ワークショップの同じ席に共同創業者である郡もいて盛り上がっていました)
当時2016年はOculus RiftやPSVRなどコンシューマ向けにVRヘッドセットが発売される時であり、「VR元年」と言われていました。
「VR元年」にどうしても乗り遅れたくなくて2016年の4月7日、僕が24歳の時に、仲間5人で創業することになりました。
その後、毎年のようにVR元年が続き、「VR元年がタイムリープしてる」と言われるほど、苦難な月日が続くとも知らずに・・・
前職の同僚であった共同創業者の2人。COOの千田とCCOの郡とはこれまでずっと5年間一緒にMyDearestを経営しています。
「2人ならまだいるけど、3人でずっと共同経営できているの本当に珍しいね」とよく言われますし僕らもそう思っています。
お互いにスキルセットやタイプが違いつつ、仲が良くリスペクトし合える関係性というのがシンプルですが一番大きいのでは、と感じることが多いです。
一番最初にMyDearestを共同創業するきっかけになるのは、CCO(チーフクリエイティブオフィサー)である郡との出会いです。
前職の内定者懇親会、初対面で話をして30秒で「天才だ!」と思いました。その場で一緒に起業したいね、みたいな本気か冗談かわからないテンションで会話をして盛り上がり、Lineだけ公開してその日は別れました。
その後、連絡するきっかけがなく、どうしようと思っていたところに、郡がLineのアイコンをホリミヤの宮村くんに変えた時、僕もホリミヤが大好きだったので、「それホリミヤですよね?」と連絡して、そこから食事に行く流れとなり、今の繋がります。
郡は、前職では経営企画の財務に勤めていたくらい数字に強く、それでいて音楽を作ることができ、MyDearestではずっと音楽を作りながら経営者として数字も見て「音楽と数字は似ている」と言っているような人物です。
相当に切れ者で、役員の中で一番表には出ないですが、社内での存在感が抜群の人物で役員の中で唯一のクリエイターということもあり、社内のクリエイターも郡の言うことならピシっと聞くくらい影響力が強いです。
(ちなみにMyDearestという社名の名付け親が郡です)
次の出会いは、COOとなる千田です。
千田と僕は同じく法人営業に配属となり、研修で同じチームとなったことで出会いました。
僕は当時、一日一食生活をしておりブルガリアのヨーグルトの大きいやつをいつも昼に食べている人物で誰も近寄って来ようとしなかったのですが、その時同じく一人で食事をしていたのが千田でした。一匹狼の雰囲気を出しており、お互い一人で食事をしているということがきっかけで会話をして、話をした瞬間「尖っている!!!!!!これはスタートアップをする男だ」と強く感じて早速、郡に話をして、勧誘しました。
千田は表に出ることが多いので、MyDearestを知っている人はご存知の方が多いと思うのですが、「VR界No.1のCOO」と言われていたりします。
VRという分野は想像通り、「買ってもらうハードルが異常に高い」です。わざわざVRヘッドセットを入手してもらった上で、コンテンツを買ってもらう。販売が相当難しい分野です。
それを「プロモーション自体をエンターテインメント」にして、クラウドファンディングなどを用いて、「VRヘッドセットを持っていない」大勢の人を巻き込んで、「制作共犯者」になっていただき最終的にゲームの発売に向けてどんどん盛り上げていきVRヘッドセットを買ってゲームを遊んでもらうところまで持っていく手腕は凄まじいレベルのプロモーション力です。
郡が切れ者だとしたら、千田が超実現力の高い人物です。
二人ともそもそもリーダー気質で、僕と出会っていなかったらCEOを自分でやっていたであろうタイプであり、僕はつくづくラッキーだなと思っています。
2年目(2017年度)
「VR元年は来なかった」と言われて、資金調達のために投資家の方と打ち合わせしても「VRは来ません」と50人会うと40人くらいに言われるような時期でした。
まさにVR冬の時代。
この年に資金が尽きかけたことが何度もありました。
ベンチャー企業、特にスタートアップと呼ばれる形態の企業は、投資家のから資金を集めてそのお金で時間を買って短時間で大きく成長することを目指します。
大手企業などに先行してVRという分野で先行者として市場を作るためには、まだ収益化が難しかったVR市場では、特に投資家からお金を集めることが非常に重要でした。
しかし何度も何度も「VRは来ません」と言われて断れ続けて、時には連絡しても返信すらない、なども経験し、
いよいよ来月には資金が底を尽きる、という絶対絶命の状況がありました。
そんな中、なんとか知り合いから紹介を受けたCVC(ベンチャーキャピタルのような独立した投資企業ではなく、事業会社が持つ投資部門)との面談が進み、いよいよ最終意思決定の場「投資家委員会」に出席してプレゼンすることになりました。
この投資委員会が失敗すれば、来月には資金が底を尽きる背水の陣の状況です。
今でもその光景をはっきりと覚えているのですが、投資委員会の扉を開けると、そこには10名ほどにも及ぶ方々が席に座っていました。(後にも先にも僕らが経験した投資委員会の中で最大規模です)
プレゼンを始めると、様々な方から飛んでくる厳しい質問。
その中でも特に、真ん中に座っていらっしゃった、おそらくその企業の創業会長の方からの質問が多く、しかも非常に鋭く厳しい指摘を沢山いただきました。
とにかく必死で質問に回答を続けました。
そして、喧々諤々と議論が続き、時間も迫ってきて投資委員会もいよいよ終盤となります。
しかし、創業会長であろう方から厳しい質問がまだ続いていて、
このままもうダメなのか、と思いかけた時
「そういえば最近、映画のソーシャルネットワークを観たんだ」
と突然その方がおっしゃいました。
頭の中が完全に「???????????」となりました。
続けて、
「マークザッカバーグが映画の中で、沢山の大人に、彼のアイディアを否定されているんだよ。でも、知っての通りマークザッカバーグは後に大成功をおさめた。自分のような年の人間ではこの分野の本当の凄さでは理解できないのかもしれない。君たちと議論していたら今突然頭に、その場面が思い浮かんだよ」
僕らは何も答えることができませんでした。
その後で、「ちなみに君たちは、あとどのくらいキャッシュが残っているんだい?」と質問をされ、
僕が「来月キャッシュがなくなります!!!!」
と回答すると、その方が大笑いされ
「今、我々と出会えてよかったね」
と言って、その投資委員会が終了しました。
そして僕たちはそのCVCから投資を受けることになったのです。
本当にドラマの場面のような出来事で、今だにはっきりと覚えていてよく思い出します。
その時期は本当に沢山の投資家の方から断られる日々だったので、
「捨てる神あれば拾う神ありなんだな」なんてありきたりなこと、
けれど奇跡のようなことを沁みるように思ったのでした。
3年目(2018年度)
4年目(2019年度)
5年目(2020年度)
という3年間は、1年目、2年目が苦労の時代だとすると、明らかに飛躍の時代でした。
これは次回のnote「プロデューサー編」に書く、MyDearestのクリエイターのトップ柏倉晴樹氏との出会いや、僕の師匠である天才プロデューサー三木一馬氏への弟子入り、などが作品作りの大きな飛躍のきっかけとなったことが要因として大きいです。
ただ今回の「経営者編」のnoteで言いたいことは、
「良き人との出会いこそが道を切り開く、そして良き人と出会うためには自らが行動をし続けるしかない」
ということです。
noteの冒頭にこの画像を貼り付けたように、
まさにどれだけ否定されても、自らの信念と行動があれば、必ず理解してくれる人や、一緒になって立ち向かってくれる人がいます。
そしてそのような人たちのおかげで、経営者というものは前進することができるのだと思います。
いつも応援してくださっている皆さま、本当にありがとうございます。
最近応援してくださるようになった方も、これまでずっと応援してきてくださった方も、皆様のおかげでMyDearestという会社が5周年を迎えることができました。
5周年を迎えた今年、そしてその遥か未来の先までも、どうか引き続きどうぞ何卒よろしくお願いいたします。
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