見出し画像

スナップ写真を圧倒的に面白くする3つのルール

純粋に物事を記録する手段として、スナップ写真はその歴史的地位を築いてきました。

でも単なる記録にするには勿体ない!写真を謎掛けのように解読して”読む”ということも、スナップ写真の楽しみ方のひとつだと思います。

それには作者の意図があっても無くても良い。個人的にはそう考えています。

明確な意図をもって作られた写真は、スナップ写真の領域を時に外れてしまうことがあり、そのような写真が現代美術館に所蔵され、歴史的価値を帯びていくことは多々あります。それはスナップではなく、既にセットアップなのです。(広告写真などの商業に使われる写真のほとんどがセットアップ写真です)

呼び名はさておき、作者の意図があっても無くても良いと言いました。つまり、誰かの写真に後付けして、意味深に読むことの楽しさを、ここで僕は推奨したいのです。

そうすると、身の回りにあるあらゆる二次元のビジュアルコンテンツが、観賞価値を帯びてきます。押し付けがましい広告写真は嫌いですが、この手法を抑えておくだけで、街中の広告、雑誌、他人のインスタ、あらゆる写真がエンターテイメントとして機能します。あまりやりすぎると”暇人”と言われますのでご注意ください。

広告写真は基本的に誰にでも分かりやすく伝わるように作られているので、そういう意味では面白味に欠けます。
”親戚のおじちゃん”や、”3歳の子供”が撮った写真の方が、写真的には圧倒的に面白いです。

本題に入りましょう。

画像1

Kuta, Bali 2015 ©tokimaru Sigma DP2

バリ島のカフェで、友人のワヤンを撮影した写真です。

ただのおっさんが写っている写真じゃん、と思いましたよね。

よく見てください。

ここには3つの謎が隠されています。

では、答えです。

1、手前にマルボロのパッケージが置かれている。

2、背景の壁が、マルボロと対照的な色配置になっている。

3、バリ島はインドネシアに属する島である。

インドネシアの国旗を覚えていますか。

画像2

はい、というわけで、マルボロのパッケージ、赤白というカラーが壁へ、そして国へと繋がりました。

更にテーブルにあるのは、僕が飲み終わったフレッシュのマンゴージュースなのですが、微妙に底に残っています。

そして画面右側の壁はマンゴーカラーで、同じ色をしています。

飲み終わる前に撮ればよかった、とここは後で現像した時に気づきました。

このように、写真はただそこに写っているものを見るだけでなく”読む”ことができるのです。絵画には時代によってはそのように意図して作られたものが多いです。美術の先生や、油絵オタクがあの絵はどうこう、解説したがりますよね。

写真でも同じようなことができるのです。

上の写真の状況を噛み砕き、撮り手側の方法論をまとめます

スナップ写真を面白くする3つのルール

1、画面の中に、リンクするようなレイヤーを作る。
色、かたち、シルエットで構成します。それらを手前と奥に配置することで、奥行きとリンク感が増す。(マルボロと壁、マンゴージュースと壁の色)

2、画面以外にももう1段レイヤーをつくる。
意味内容、歴史、時代など。(写真の中の色と、撮影された場所:インドネシア)

3、視覚的・構図的品質を高める
更に、視覚や構図的な面白さが加われば更に完成度が高くなります。
先程の例だと、ワヤンがただケータイいじっているだけなので面白味に欠けますが、画面の中の配色が一応3原色で構成されています。壁の赤・黄と人物の服の青です。手前が影になって、ブルーの鮮やかさが出ていないので、光線条件が揃っていればもっと面白い写真になったかもしれません。

簡潔に言うなら、面白くするポイントは3つのレイヤーを入れるということです。画面内に二つ、そして画面の外に一つです。

写っているものと、写っていないもの。

そうするとグッと写真が面白くなりますので、試してみてください。

意図しすぎて、逆に全然面白くない、という写真も個人的には結構好きです。意図しすぎて、愛しいというやつです笑

スナップは瞬間を切り取るため、自分の思い通りにはいかないものですが、だからこそ自分で撮影時に気づかなかった面白さが、写真に隠されていることがあります。それを後に発見することは、素敵な瞬間を2度味わえる撮影者ならではの醍醐味だと思います。


いつも応援してくださる皆様に田中常丸は支えられています.本当にありがとうございます.