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奥山由之さんが広告業界にもたらしたポカリスエット案件の衝撃

奥山由之さんが最近監督・撮影した、大塚製薬のポカリスエット。

こちらが広告業界のフォトグラファーや関係者の間でちょっとした話題になっている。

大塚製薬は、他にもカロリーメイトという商品で、幅広い層に訴求と認知があり、かつ広告「らしくない」アプローチで制作がなされている。好き嫌いは分かれるところではあるが、学校というシチュエーションで、団体演技の団体撮影、若さゆえのエネルギーと切なさ、感動という言葉が似合うようなトーンで、長年制作されている。

それは企業精神と商品を反映したものであるが、広告を担当している電通をはじめ周辺のクリエイティブによって生まれているものである。

奥山さんは、このノートを読んで頂いている層にはおそらく説明の必要がない日本の写真家である。写真家というより、映像作家である。

このポカリスエットの広告、いくつかヴァージョンがある。

「でも君が見えた」篇と「新ヒロイン 中島セナ」篇、だいたいの最近の広告と同じように、CM/Movieとグラフィック連動型になっている。掲出形態も駅貼りからウェブ、店頭、SNS展開とマルチレイヤーでのアプローチがなされている。

で、まずこの奥山さんの制作手法のなにがすごいのかであるが、最もわかりやすいところを先に言うなら、iPhoneで撮影されていることだ。

奥山さんは過去にも何度かポカリスエットの広告写真を担当しており、それだけで一冊の写真集を発表している。その時と同じアプローチで今回の広告も制作されている。

本人が書いているように、30人のクラスを作り実際に学校生活を送ってもらい、それをiPhoneで撮影するというもの。おそらく、実際には複数の画を一日で撮るために、室内と屋外で、入学式の集合写真から、休み時間や掃除の風景、体育の授業と、ひととおりの学校生活のシーンが網羅されるように香盤が組まれている。

よく見てみれば30人だけしかいない学校なので、抜けの絵が不自然ではある。学校に全校生徒というエキストラを詰めるには予算と、コロナ禍の状況が許さなかったのかもしれない。そのような制限がなければ、おそらく奥山さんはそのあたりのリアリティを詰める提案をするはずだからだ。

だがそれすらも、逆にこのコロナ禍で閑散とした校内を表象しているようで、ビジュアルとしては功を奏しているような気もする。

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