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写真のライティングに関する覚書

ポートレートでも物撮りでも、ライティングを考える時は、メイン、フィルイン、アクセント、という3つの光の使い方を理解しておくと写真の上達は早い。しかしこの考え方はクラシックなスタジオライティングを原則としているので、そのまま使うと垢抜けない写真となってしまうことがある。だから3つを「光の成分」くらいに意識して、あとは被写体のほうに重心を置く。

こちらは先に述べたライティング構成、メイン、フィル、アクセントを極端に曖昧にした例。左からの窓越し自然光、右トップからのタングステン。光量差を付けずにどちらもメインライトと取れ、アクセントは右側後部からキノフロバウンスを当てている。普通ここまで光源をミックスしないがフェイスアップ画角にすることで成り立つ。画角、色味、ノイズと質感。そのようなものにライトがハマる、という感覚だ。

機材とレンズの話しは一旦置いておいて、ポートレート写真を決定付ける要素は、

1,環境(背景)
2,光(照明)
3,被写体(表情)

である。写真は「選択の芸術」などと言われるが、3つの掛け合わせで写真のおおよそのトーンは決まる。(ここでのトーンは色味ではなく方向性、雰囲気の意味) そして掛け合わせは無限にある。だからポートレートは難しいし、奥が深い。4つ目の要素として、時代のトレンドというのも加味されるかもしれない。これはポートレート写真だけでなく、全ての写真に言えることだが。

ライティングと言うと被写体に光を「当てる」ことを考えるが、スタジオ使いの上手い広告系フォトグラファーは空間全体で光を「作る」ことを考える。それもスタジオを大きく広く使う。いわゆる、小宇宙的に光のある世界を室内に作り、その光の中で被写体の見え方、映え方を考える。

例えば、「海沿いをドライブしている車の中で、日が落ちて、ブルーとオレンジの空が助手席の彼女の顔を照らした」設定があるとするなら、モデルの顔にブルーとオレンジの光を作ってただ「当てる」のは空間を使えていない。光を「作る」人は、スタジオの中に車が走っている道路、そしてその周りを囲む日が落ちた夕景の海を作ってしまう。そのような光のセットができたなら、後は良い場所にモデルを立たせれば、自然とモデルの顔にそのような光がきて、写真ができる。

もちろん後者のほうが技術と想像力が必要なのは言うまでもない。(そしてセットやライトの灯数も増えるので予算もかかる)


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