公民館講座「はじめよう混声合唱」まとめ


講座の概要

 令和3年度谷山北公民館前期講座「はじめよう混声合唱」

 講師/曽木時人(合唱指揮者)、黒木沙織(ピアニスト)

 期間/令和3年5月18日〜7月6日(全6回)

 受講者/16名(修了生9名)

 私の生まれ育った地元である鹿児島市谷山北地域の公民館講座講師を今年も務めました。昨年は新型コロナの影響で実施されませんでしたが、今年は対策を講じながら実施。「はじめよう混声合唱」と題し実施して5年目、このご時世に開講して頂けたことに心から感謝しております。

 講座のまとめとして、内容や感想などをつらつらと書いてみます。

「混声」合唱の入門講座として

 はじめて公民館から講座のご相談をいただいた時に、私からした提案は「混声合唱」をやりましょう、というものでした。

 現状として、おかあさんコーラスは出会う機会が多いのです。谷山北公民館にも当時から複数の女声合唱団があり熱心に活動しておられました。女性の受け皿は充実しているのに、歌いたい男性の受け皿が公民館にはない。男性も女性も歌いたいと願う人が参加できるように「混声」でお願いします、と相談し、快く受け入れてくださって今があります。

 ということで、今年は16名のうち男性4名でスタートしたこの講座。混声合唱の入門編として、少ない時間の中にあれこれ盛り込み実施したのでした。

「合唱曲」に触れてほしい

 公民館講座で、合唱で、入門編で…ということで、「初心者がみんなで集まって、わいわいと懐かしの歌を歌うんだろう♪」と思って参加した方もおられたかもしれません。そういう方には、申し訳ない内容でいつも実施しています。

 合唱のために書かれた「合唱曲」に触れて欲しい!

 これは私の強い願いです。編曲もので臨んだ年もありましたが、今年は「合唱のために書かれた素敵な作品に触れて欲しい」と強く思い、選曲しました。合唱界がとても苦しい状況に置かれている今だからこそ、合唱の持つ魅力に触れて欲しかったのです。

 ということで、今年扱った楽曲はこちらの2曲。

 ・「はる」谷川俊太郎作詩、信長貴富作曲

 ・「ジグザグな屋根の下で」やなせたかし作詩、信長貴富作曲

 日本で合唱していると必ず出会う作曲家、ノブナガさんの作品にチャレンジしました。入門編で扱うには高いハードルかもしれないとも思いましたが、珍しい混声2部ということも大きな支えとなりました。ほとんどの人にとって初めての信長作品。しかし皆さんとっても喜んで歌ってくださいました。信長さんの楽曲が愛される様というのを、改めて目の前に見ることとなりました。

合唱を「聴いて」楽しんで欲しい

 この講座で大事にしているものの一つに、「名曲鑑賞」のコーナーがあります。

 ただ懸命に歌うばかりではなく、素晴らしい楽曲を素晴らしい演奏で聴いて頂くことでより合唱を知り親しんでもらえたらと思って、短い時間の中にねじ込んでいます。

 今回紹介した楽曲は以下の4曲。

・「信じる」谷川俊太郎作詩、松下耕作曲、演奏は東京混声合唱団

・「夕焼け」高田敏子作詩、信長貴富作曲、演奏はエリザベトシンガーズ

・「ぜんぶ」 さくらももこ作詩、相澤直人作曲、演奏はharmonia ensemble

・「風がどこから」 菅野淳作詞、髙田三郎作曲「典礼聖歌」より、演奏はJapan Chamber Choir (バーチャル)

 毎回選曲に悩みますが、なかなか良い曲・良い演奏を選んだなと。特にコロナ禍から生まれたJCCバーチャルコーラスを紹介したことは、合唱の現在地を紹介する上でも有意義だったかなと。もちろん我々講師が声だけ参加していることも伝え添えつつ。


合唱指揮者として伝えたいことを大切に

 素敵な合唱曲を歌うこと・素敵な曲を素敵な演奏で鑑賞することを軸に、発声の基礎やこぼれ話を多々(!)交えつつ実施していったこの講座。最終的に見事修了されたのは9名。思っていたのと違う!という理由で脱落された方がおられたのなら大変申し訳ないのですが、修了生9名は、みなさん爽やかな笑顔で帰られました。合唱の魅力を少しでも体感してくださっていたら嬉しいです。

 公民館講座ですから、「とにかくわいわい歌おう!」も意義があると思いますしその方が喜ばれるのかもしれないのですが、これでも一応合唱指揮者ですから、その珍しい人種の立場から魅力を伝えるという独自性や専門性は大事にしたいと思い、今回も計画しました。私の拙い・至らない場面にも耐えた9名の修了生が、これからどこか合唱団の一員として、またコンサートに足を運ぶ聴衆のひとりとして、様々な形で合唱に親しんでくださったら嬉しいです。そんな夢を抱きつつ、全6回を終えたのでした。

希望

 コロナ禍において、未だ合唱界は大変な苦境にあります。

 私のご一緒する合唱団も例外なくメンバーが減り、ステージを失いました。

 そんな中で、市の講座で「合唱」が取り扱われたことがとても嬉しく。

 そしてこのご時世において「よし、合唱しよう!」と思いたった16名の勇者たちと出会えたことは、私たちにとってとても大きな喜びであり、これからに輝く希望なのです。

 講座を通じて、教えに立ったはずの私の方こそ、皆さに支えられて、希望を頂きました。

 講座の実施にあたりご尽力くださった鹿児島市、谷山北公民館の方々、16名の勇者たちに心から感謝申し上げます。もちろん、ピアニストにも。

 皆さんと、歌声の響く場所で、またお会いできますように。



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