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ベーグルさん

今回のテーマ:ベーグル

by 河野 洋

正直なところ、ベーグルは好きでもないし、嫌いでもない。だからベーグルの思い出もこだわりも何もない。それなのにニューヨークにいるとベーグルを食べてしまう。それは単純に「道も歩けば棒に当たる」くらいのノリでベーグル屋がそこにあるから、それだけなのだろうか?

形で言えば、子供の頃、ご褒美みたいな頻度でしか食べられなかったミスタードーナッツを彷彿させる。でも、ベーグルさんはドーナッツのように甘さを売りにしていない。そんなヤワな輩じゃない。どちらかと言えば日本の餅のようなコシの強さ、モチっとした食感が特徴で、しっかり噛み付かないとちぎれないくらい手強い。

そして、ベッタリと塗られる王道のクリームチーズがトッピングされると、さらに強力になる。これに珈琲をブラックで飲むというのが、私の食べ方だ。シンプルでパワフル。しかし、いつしか巷ではベーグルの種類が無数に増えてきて、おしゃれな食べ物になってきた気がする。

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今回ベーグルがテーマということでいつものベーグル専門店へ行ってみたが、注文する時はメニューがいっぱいありすぎて困る。ベーグルはそのままでもトーストしてもいいし、種類は、一般的なプレインから、セサミ、ガーリック、レーズン、エッグ、ホールウィート(全粒粉)、オニオン、ブルーベリーと、よりどりみどり。肝心のトッピングもクリームチーズやスモーク・サーモンといったおきまりのものから、ピーナッツバター、ジャム、ハム&チーズ、ツナ、エッグサラダ、ハンバーガーまである。ベーグルは人を選ばず、食べたい人の好みに合わせて、どんなものだって作れる柔軟性と楽しさがある。

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それで、今回はイタリアン・ツナと珈琲を注文したが、ベーグルが7ドル45セント、珈琲(中サイズ)が2ドル50セントで、10ドルになった。決して安くないベーグルさん。

ただスーパーマーケットなら3つで1ドルとか割安価格で買えるし、トーストして好きなものをポンとのせるだけだから、簡単にバリエーションを楽しめるし、時間のない時には重宝する。やっぱり頼りになるベーグルさん。

また健康にも良いと聞いたことがあるが、それはベーグルにはパンの2倍以上の生地があるので密度が濃く、何度も噛まないといけないので、満腹感が増し、また腹持ちもいいかららしい。聞くところによると、ベーグルを食べると頭も良くなるらしいのだが、果たして本当なのだろうか?それでも頭が良くなら明日もベーグルさんにするか。

何れにしても、ニューヨークと云えばベーグル、ベーグルと云えばニューヨーク。忙しいニューヨーカーには、この腹持ちのいい、そして、ガツンと力が出るベーグルが日々の生活に欠かせない。だから、これからもよろしくベーグルさん。

2021年9月11日

[プロフィール]
河野洋、名古屋市出身、'92年にNYへ移住、'03年「Mar Creation」設立、'12年「New York Japan CineFest」'21年に「Chicago Japan Film Collective」という日本映画祭を設立。米国日系新聞などでエッセー、音楽、映画記事を執筆。現在はアートコラボで詩も手がける。

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