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日本人女子あるある

今回のテーマ:ニューヨークあるある
by 茂山 薫子

 ニューヨークではよく街中で声を掛けられる。もちろん日本とは違って、たまたま居合わせた人同士が何気ない会話をすることが当たり前のアメリカでは知らない人に声を掛けられるのも日常茶飯事だが、日本人女子に限って言うとそれ以外のケースもある。

 例えば、とある日の地下鉄で。電車を降りてホームを出口に向かって歩いていると、ものすごい形相でこちらに歩いてきた黒人男性がすれ違いざまに暴言を吐く。全部は聞き取れなかったけど、私への罵声なのはマシンガンのように続く汚い言葉と語気の荒さから明らかだ。そのまま歩き去っていったからよかったけれど、殴られたり刺されたりホームから突き落とされたりということにならなくて本当に良かったと思う。とある別の日。トレジョ(アメリカで人気のあるスーパーマーケットのチェーン)で野菜を買おうと手を伸ばした私に、隣に立っていた白人男性がまた汚い言葉を一言。驚いて思わず目をあげた私と目があっても全く動じず、悪意に満ちた目でこちらを見てくる。

 いわゆるアジアンヘイトというやつで、アジア系女性の私がそこに存在するだけで気に食わないのだろう。割合的に黒人男性が多いが、白人の場合は中年の男性が多い気がする。言葉は発さず、すれ違いざまに思い切り肩からぶつかってくる人もいる。前後の文脈も、特段私でなければならない理由も(多分)無いので、予測ができない。ただ、ニューヨークはエリアによって、そこにいる人の属性もかなり違うので、例えば移民が多いクイーンズではあまりこういう経験をした記憶がないが、マンハッタンでも下の方のファイナンシャル・ディストリクトやトライベッカといった元々白人が多いエリアでは起こることが多いように思う。移民も多くリベラルなニューヨークですらこうなので、もっと保守的な他のアメリカの街・州ではアジア系女性はどんな扱いを受けているんだろう、と思う。ちなみに同居人の日本人男性に聞いても「4年間住んでいてもそんな経験はしたことがない」と言うので、やはり女性に起こりやすいことなのだと思う。

 すれ違いざまに暴言を吐かれ、「この怒りのやり場をどこに・・!」とふつふつとしたものを腹に抱えながら歩いていると、今度は「その髪型いいね」「その服いいね」なんて褒められることもあるから、超ネガティブから超ポジティブな声がけへと振れ幅の大きい状況に、気持ちと頭がなかなかついていけなかったりもする。

 もう1つ別のケースでよくあるのはナンパ。日本人女性というだけで声を掛けてくる輩が多い。自分で言うのも変だが、私は超平均的な日本人女性だ。身長も体重も日本人としてはごく平均的な中肉中背でセクシーなタイプではないし、顔もサイズ大きめの丸顔で決して美人でも可愛くもないが、メイクで人並みに補正できるレベルだと思う。服や身だしなみは自分なりの好みもあり気も遣うが、特段派手なタイプでもダサいタイプでもないと思う。そんな目立つもののない35歳の日本人女性でも、街中で声を掛けられる。日本と違って、街中で異性に声をかけるのが当たり前なのもあるとは思うが、初めの一言が「日本人?」が多いので、やはり「日本人女性であること」がポイントで声を掛けてきているのだと思う。そして大体「初対面でそんな甘い言葉よく出てくるな」というようなセリフがポンポン出てくるので、胡散臭いこと極まりない。初めは「失礼のないように断ろう」なんて日本人的な考えで受け答えしていたが、そのうちにそんな気遣いはするだけ無駄だと気づいた。適当に受け答えをしてさっさと去るのが一番だ。

 「日本人女性という理由で街で声を掛けられる時は大抵悪態かナンパ」というあまり面白くない話だけど、これもニューヨークあるある。
 
プロフィール:
茂山薫子 東京暮らし33年。それなりに学校に行きそれなりに社会人をしてそれなりに幸せだったけど、幼少期からの夢があきらめきれず急に渡米。自分も周りもまだ驚きが冷めやらぬ中、日々ニューヨークの楽しさと厳しさを噛み締めながらマンハッタンの片隅で生息中。


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