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美食アフガン料理

今回のテーマ:エスニック料理

by 河野 洋

小学生の頃から映画や音楽を通して海外文化に興味を持ち、ひたすら外国に憧れた。無い物ねだりなのだろうか。自分にないものに無性に興味が湧く。そして、エスニックという言葉を聞くと、料理を連想しお腹が鳴る。そういう意味でニューヨークはエスニック料理のパラダイス。この街を選んだのは間違いなかったと、我ながら鼻が利く。


私が住む街には歩いて行けるエスニック料理店が無数にある。スペイン、イタリア、フランス、ギリシャ、メキシコ、エクアドル、日本、中国、バングラデシュ、インドと各国の国旗の色を集めた絵の具のパレットのように、より取りみどりなのだ。

そもそも外国人もいない日本の片町に育ったからか、食べ物といえば日本食ばかりで、外国料理店なんて皆無だったし、中華料理くらいしか食べたこともなかった。しかし、外国に住み始めて、日本食以外にも美味しい食事がたくさんあることを知った。最初に好きになったエスニック料理はブラジル料理だった。それはブラジル人の友達ができ、ブラジル音楽が好きになったのがきっかけだったが、それがなくてもブラジル料理は好きになっていたように思う。エスニック料理は美味しいと、その国のイメージが良くなり、印象が変わる。そういう意味では外交や国際交流は食文化を紹介することから始めるのが正解かもしれない。

その点で冒険だったが、今回はこれまで印象が芳しくなかったアフガニスタンに目を向けた。アフガニスタンと言えば否が応でも911同時多発テロの記憶が蘇り、タリバン、オサマ・ビンラディン、アルカイダ、難民、戦争、とにかく、そんな言葉ばかりが頭を埋め尽くしていくイメージなのだが、それではアフガニスタン人に対して申し訳ない。

だから、それを一掃する為にアフガン料理を食べてみたのだ。しかし、あれ!?いやぁ〜ナント!これが実に美味しいではないか!テーブルに並んだものは全て合格点をクリアし、アフガニスタンは一気に美食国として私の頭にインプットされ、私の好きなエスニック料理のベスト10にランクインした。


今回試したのはサーモン・ケバブ(23ドル)と牛・鶏・羊のトリオが一度に楽しめるミックス・アフガン・ケバブ(19ドル)。アフガニスタンは内陸国なのでサーモンというのはニューヨークならではのスペシャルバージョンだが、サーモンのサイズが大きく、満腹度も食感も最高だった。ミックスの方は、どれもケバブの王道という感じで当たり前のように美味しく、牛肉はKOFTA(コフタ)と呼ばれるいわゆる肉団子で日本人にも親しみやすいだろう。

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どちらのケバブにも超細長のライスが同じお皿の半分くらいを占めているのだが、そこに甘い味付けの人参とレーズンがたっぷりかけてあり、これにホワイトソースやホットソースをかけて食べると甘辛サッパリな絶妙のコンビネーションとなって、メインの肉もサーモンも食が進む。あと放っておけないのがアフガンのパン、ナンだ。メイン料理の前に、このめちゃウマのナンが出てくるので食べ過ぎに注意しないといけない。ちなみに、前菜の茄子料理BORANI BANJAN(ボラニ・バンジャン)も絶品。

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食後のデザートは、店内に額入りで展示してあるポスターにも写っているオーナーが直々に、「お店からサービスです」と言って持ってきてくれたライス・プリン。これがまた甘すぎず、重すぎず、ちょうどいいあっさり感で、最後ににっこりと笑顔が溢れる締めくくりとなった。


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ということで、今回の体験で、アフガニスタンは食の友好国として株を一気に上げ、今後の私の食生活に大いに活躍してくれると確信したのだった。

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行ってみよう、食べてみようアフガン料理
Sami's Kebab House
35-57 Crescent Street
Astoria, NY 11106
http://www.samiskababhouse.com

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2021年11月21日
文:河野洋

[プロフィール]
河野洋、名古屋市出身、'92年にNYへ移住、'03年「Mar Creation」設立、'12年「New York Japan CineFest」'21年に「Chicago Japan Film Collective」という日本映画祭を設立。米国日系新聞などでエッセー、音楽、映画記事を執筆。現在はアートコラボで詩も手がける。




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