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Vol.1 上野さん

って・・・
女好きらしい

もはや病気?とまで言われている
と言うか、本人も過去に
「病気なんです・・」
と幹部の前で涙したらしい

【らしい】
と連呼するのは
実際に遭遇したことがなかったから

今の会社(B社)に異動になるまで
大海はグループ会社(A社)
に勤めていた
月に一度の幹部会議で顔を合わせる
数社の幹部の名前と顔くらいは
覚えている

上野さんはその中の
【優しそうなおじさん】だった
創立記念パーティや新年会
お酒が入って紅くなった顔で
ニコニコ笑っていた

でも
噂ってホントに恐ろしい
知らず知らずのうちに
大海の脳裏には
「上野さんは女癖が悪い」
って事が刻まれていた

A社からB社に異動になり
直属上司は上野さん
総務部は上野さんと20代の女の子

毎日のように女の子が
「上野さんからで~す」って
コンビニスイーツを
大海に持ってきた

3人でランチに行って
ご馳走になった事もある

1ヶ月が過ぎた頃・・・
毎日のルーティーンが見えてきた
女の子は11時になるとココアを飲む
12時になるとトイレに30分こもる
その間、上野さんは
キッチンでランチを作る
2人分

「はい!ちゃんと食べるんだよ」
女の子は「いただきます」も言わず
黙々と食べる
食べ終わったらお皿を流しに置き
洗う事もなく
PCに繋いだイヤホンをして寝る

自分のデスクに突っ伏して
上着を頭まで被り、寝る

上野さんはその頭をポンポン
としてから
キッチンでお皿を洗う

これが毎日の風景

この頃、
女性は女の子と大海だけ
男性が外に出ている時間が多く
いろいろと話しをするうち
「お母さんみた~い」
と懐いてきた

大海からは何も聞かない
女の子はひたすらしゃべる

「不倫してるんですぅ」

(は?上野のじいさんと?)

心の中で問いかけた
どうやら違う
30代のイケメン男子がお相手
その名も【ヒロシ】
(本名なのかどうかは知らないけど
 大海が高校生の頃
 ♪そんなヒロシに騙されて♪
 という
 高田みずえの歌が流行って
 みんなが彼氏の事を【ヒロシ】と
 呼んでいた事を思い出した)

女の子はヒロシの写真を
たくさん見せてくれた
確かにイケメンで
満島なんとかっていう俳優に似てる

まさか、こんな若い女子が
上野さんと何かあるわけないか

男性陣が会社に居なくなると
女の子は待っていたかのように
【ヒロシ】の事を話してくれた

最近、
勤務時間内によく居なくなるな
と思っていた時

「性病になっちゃったぁ」
「え?大丈夫なの?」
「うん。上野さんにも言ってるしぃ」
「ヒロシから?」
「そうだと思うんだけどぉ
 ヒロシは平気なんだってぇ」

(え?・・・だとしたら
 どこからもらったんだよ オマエ
 てか、上野さんに性病って言う?
 言わないでしょ 普通・・)

それから数日後
「一人暮らしになりましたっ!」
って・・・

実家だとヒロシの都合に合わせる事が
難しく
いつでもヒロシに会えるように
ヒロシの「愛の巣」近くに
部屋を借りた事を報告してくれた

会社から実家も遠かったけど
ヒロシんチの近くはもっと遠い

ある日、上野さんが
大海にこっそり
「あの子、一人暮らしするんだよ」
「そうらしいですね」
「知ってる?」
「え?何を?」
「あの子、不倫してるんだよ」

知っていたけど
大海の口から言うわけないでしょ
アンタ・・・口、軽いな

上野さんの口から
女の子の不倫話が
雪崩のように流れ落ちた

女の子はヒロシに騙された
性病を伝染されたのもヒロシだ
不倫はよくない
何度も注意したのに
女の子は聞く耳を持たない

何が上野さんを饒舌にしたのか
なぜ、大海に全てを話すのか
理由はわからないけど
おそらく【女の子】の事を
知っている誰かに
言いたかったんだと思う
自分がどれほど女の子の事を
大切に思ってきたかを

でも上野さんの思いは届かず
女の子は一人暮らし直後に
会社を辞めてしまった

そこで
上野さんはついにダムを崩壊する

女の子がヒロシに捨てられた
理由は俺との関係
ヒロシが女の子と俺の仲を
疑っている
それが原因で大喧嘩になって
別れた

何を説明されても
言い訳にしか聞こえない
大海の耳には蓋がされた
どうでもいい
関係ない
そんな話、会社で聞きたくない
一応、上司なんだから
言葉選べよ

女の子はある日突然来なくなった
会社に置いてある私物は
上野さんが片付け
段ボールに詰めていた
その中にブランド品の紙袋が
入っていた

大海から聞いたわけではない
「これ。女の子へのお餞別
 ハンドバッグ!5万もしたよ」

結局、
上野さんと女の子の関係性は
わからずじまいだったけど

上野さんという人物が
どういう人なのか
わかる日が来る

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