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吹田事件をめぐる議会発言の是正を求めて市民集会

 吹田市議会で2月に自民党の藤木栄亮議員が、吹田事件(1952年)の事実を歪めて取り上げた問題で、5月18日に市民集会が開かれ、参加者146人が議会と行政に是正を求めた。

 吹田事件は、朝鮮戦争中、軍需輸送の拠点だった吹田操車場への反戦デモが騒擾(そうじょう)罪で起訴された事件。裁判で平和的なデモだったことが明らかとなり、1968年に騒擾罪の無罪が確定している。

受付前まで参加者で埋まった会場

事実を歪める発言の是正を

 藤木氏は、吹田事件について、「吹田市内を恐怖のるつぼに落とし込んだ政治的な武装デモ」などと議場で発言。市立図書館の事件紹介文について、「弾圧事件」の文言を削除し、執行猶予や未決勾留日数参入が付き軽微な有罪だった威力業務妨害罪を強調することと、学校での教育を求め、市は応じていた。

 これに対し、事件参加者と遺族、賛同する元・弁護団が、藤木氏の発言は裁判で認定された事実と異なるとして、5月7日に吹田市議会に是正を求める要請を提出。研究者など6氏の呼びかけで市民集会が開かれることなり、賛同人は研究者・弁護士・市民など216人に広がった。

 市民集会で主催者からは、藤木氏の発言は吹田事件の事実と異なる上に、①議員からの圧力により図書館が紹介文を書き換えた行為は、「図書館の自由」を侵すものできわめて問題があること、②「教育は、不当な支配に服することなく」(教育基本法)という原則に反する教育への介入であることを指摘。
 吹田市が警官のデモ隊への銃撃が職権乱用であったとして負傷者に賠償を行ったことや、元・被告たちに刑事補償が認められていることが示され、吹田市立図書館による「弾圧事件」という表現は本質をとらえたものだったことが報告された。

93歳の石川元也弁護士の登場に大きな拍手が起こった

主任弁護人・石川元也氏が真相語る

 吹田事件の主任弁護人を務めた石川元也(いしかわ・もとや)弁護士が登壇し、デモ隊と警察が衝突したことはなく、武装デモでもないことを法廷で明らかにしたことを説明。吹田事件の意義について、「デモ・表現の自由が騒擾罪の適用で絡め取られることは厳しく警戒していかないといけないと憲法的な評価から裁判所が判断した」と語り、「たたかってこそ民主主義が守られる。72年前の行動に吹田市民として誇りをもっていただきたい」と結んだ。

 図書館情報学、歴史学、憲法学の立場から呼びかけ人が議会発言と行政の対応の問題点を指摘。集会は、行政と議会に是正を求めるアピールを確認し、中央図書館と市地域教育部に提出された。

※石川弁護士が吹田市立博物館で行った特別講演会「朝鮮戦争と吹田事件」(2022年)は、吹田市の公式YouTubeチャンネルで公開されています。

集会で確認されたアピール

会場には個人蔵の吹田事件資料が展示された

吹田事件の事実を歪め、関係者の名誉を傷つける
議会発言と答弁・対応の是正を求めます
―吹田事件の真相を語り、行政と議会に是正を求める市民集会アピール―

 吹田市議会で2月29日に藤木栄亮議員が、朝鮮戦争に反対した吹田事件(1952年)について、裁判で否定された主張(「吹田市内を恐怖のるつぼに落とし込んだ政治的な武装デモだった」等)を展開し、「デモ行進に対する弾圧事件」と書かれていた市立図書館による紹介文の修正と学校での教育を求め、市は応じてしまいました。また、議会最終日に市の対応の問題を指摘した柿原真生議員の討論を、議長が「議案の範囲外」として議事録から削除することも起こっています。

 藤木議員の議会質問と市答弁においては、吹田事件の裁判で事実認定されなかった「暴徒」「騒乱」「武装」「武力衝突」などが、さも事実であったかのごとく語られました。吹田事件の判決は、「武力衝突があった」とは認定しておらず、事件参加者に暴行・脅迫の「共同の意思」もなかったと明確に判断し、騒擾罪の無罪が確定しています。また、吹田市は、警察による吹田事件参加者への拳銃使用を違法とする判決(1960年)を承認して賠償を行っています。これらの判決からも、「弾圧事件」としていた市立図書館の表現は適切なものです。

 吹田事件の参加者に対し、誤った認識で「暴徒」と一方的に誹謗し、犯罪者扱いした藤木議員の質問と、関係者への聞き取りや資料調査も行わず文章を修正した市の対応は、関係者の名誉を著しく傷つけ、人権を侵害するものです。また、柿原議員の討論を議事録から削除した議長の対応は、議会での議論を市民に隠してしまうもので、民主主義にとって重大な問題です。

 私たちは、藤木議員の発言や市の答弁・対応がこのまま放置されることは大きな問題があると考え、本日集会を開きました。私たちは次のことを求めます。

≪吹田市議会に対して≫
① 吹田事件の事実を歪める藤木議員の発言と市答弁を容認せず、是正を求めます。
② 柿原議員の討論は、博物館や図書館を含む市予算や市の姿勢について指摘したものであり、議案の範囲内であることは明白です。議事録の削除を行わないよう求めます。

≪吹田市に対して≫
① 市立図書館は、紹介文から「弾圧」の表現を消す一方、執行猶予や未決勾留日数算入がつき、実質的に無罪だった威力業務妨害罪を、騒擾罪と同等に記載して強調することは吹田事件の本質を歪めるものです。訂正を求めます。
② 市として吹田事件の関係者や研究者との懇談を行い、経過を記録することを求めます。学校教育で扱う場合は、関係者からの聞き取りや裁判結果を踏まえるなど、吹田事件の意義や時代背景が正しく伝わるように求めます。

2024年5月18日
吹田事件の真相を語り、行政と議会に是正を求める市民集会
参加者一同(146人)および賛同216人


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