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2020/06-08

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つゆ入り~セミの声
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#物語

-一寸法師-

小僧は、 町のみなを様々な方法で 苦しめている鬼を憎んだ。 暴行、強奪、放火、、 だったら おいらが成敗してやろう、 と意気込みを見せたのである。 しかし、 鬼退治をすることで みんなからの信頼を勝ち取り 加えてお気に入りに娘を得てやろう、 というやましい気持ちも多分にあった。 小僧が鬼退治を 画策していると聞きつけ、 近所の酒屋のおじさんが 駆けつけてきた。 お前1人で行かない方がいい おれも一緒に連れていけ その方が力になるはずだ と散々小僧に対し説法してきたが

-くもの糸-

天からは かのお釈迦様が 蜘蛛の糸を垂らし、 それによじ登ろうとする たくさんの人々が群がっていた。 そんな光景を、 タツシはぼんやりと眺めていた。 なんか、 めんどくさいな そう思って、 いつもように散策を続けた。 日頃から見慣れた 草花ではあったが、 いつも以上に愛おしく 目に映るのを感じた。 すると、 遠くの方に なにやら、 細いけれども たしかにぴんとした 糸のようなものが見える。 あれは、 なんだろうか そう思って、 近くに寄ってみた。 よく見ると、

-稼働-

キョウタは、 自分自身で、 今の部署において 誰よりも結果を残している という自負を感じていた。 あんなやつには負けない 負けていない、 そう思って 日々の業務に取り組んでいた。 しかし、 若手ながらの果敢な行動は 時に周囲の反感を買うことも多く、 ストレスを感じながらの 毎日を送っているのも事実であった。 その日も疲れて 寝床につく。 オーバーワークな ところがあるのも 感じてはいたが、 いまのところ それしかできそうにない。 すぐに眠りに落ちたが、 あっという間に

-屋上-

子供の頃によく訪れた 百貨店の屋上へ、 男は久しぶりに足を運んだ。 警察官の仕事にも慣れ、 なんとなく将来への展望も 持ち始めた頃である。 しかし、少しだけ 退屈な感じもあるようだった。 「お兄さん、いらっしゃい」 そう声を掛けてきたのは、 自分より20才くらい上の 中年の男である。 こんな店あったっけか と男は思ったが、 なんか面白そうなので 話を聞いてみることにした。 「お兄さん、こういった商品はいかがですか」 男が目を向けると、 台には 得体の知れない箱が