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-一寸法師-


小僧は、
町のみなを様々な方法で
苦しめている鬼を憎んだ。

暴行、強奪、放火、、

だったら
おいらが成敗してやろう、
と意気込みを見せたのである。

しかし、
鬼退治をすることで
みんなからの信頼を勝ち取り
加えてお気に入りに娘を得てやろう、
というやましい気持ちも多分にあった。

小僧が鬼退治を
画策していると聞きつけ、
近所の酒屋のおじさんが
駆けつけてきた。

お前1人で行かない方がいい
おれも一緒に連れていけ
その方が力になるはずだ
と散々小僧に対し説法してきたが、
小僧としては、
さてはこやつ
おいらの取り分にあやかろう
としているな
と感じ、
お気持ちだけありがたく
受け取ります
と伝えて、
結局一人で行くことにした。

自分は体が小さいので、
鬼に一旦飲み込まれて
それから内側から突けば
なんとかなるっしょ、
という軽い気持ちで臨んだ。
もちろん、
動きやすい恰好をし
必要な物資をきちんと揃えて。

小僧は
負けず嫌いなところがあったので、
鬼の棲む場所
性質
世の動向
について予め
リサーチをしていた。
どうせやるなら、
勝たないとね。


さて、
鬼の棲み家に着いた。
ほら穴から
赤黒く
随分と体躯のいい鬼が出てきた。
たしかに、
見た感じとても悪そうである。

しかし、
こうも見えた。
自分の中に潜む
悪魔のようなものと
闘っていていて、
鬼自身も苦しんでいるのだと。

けれども、
わざわざここまで来て
引き下がるわけにもいかない。
小僧は鬼と対峙し、
いったん呑み込まれた。

結論から言うと、
鬼の腹の中で
内側からちくりと
やってやり、
鬼は参ったという感じで
気絶した。
小僧は鬼の口内から
ゆっくりと出てきた。


こいつにも
家族がいるかもしれない。
いつかこの鬼の子供に
自分がやられるかもしれない。
そう思わずにはいられなかった。

自分がしたことは、
果たして
正しかったのだろうか。

みなが苦渋から
一時的に解放されそうなのは、
確かではある。
自分の行為を
肯定するより他はなかった。

いろいろと考えているうちに
腹が減ってきた。


もし仮に
今回の件で、
かの娘を
手に入れることができるならば、
それはそれで
楽しくなりそうだ。


小僧はいくぶん
勇み足になって
帰途についた。







以上

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