【拙訳】エスパーデッキがスゥルタイへの脅威として浮上 by Josh Silvestri(Channel Fireball)

https://www.channelfireball.com/articles/esper-has-emerged-as-the-answer-to-sultai-midrange/

 先週末参加したスタンダード・ショウダウンではエスパー系使用者が最多でした。ミラーだるそうでした()
 思ったよりも、記事の中身はエスパー寄りではなく、メタゲームの変遷を俯瞰的に捉えています。さすがはJosh Silvestri。
 ※若干長いので、文末に勝手にTL;DR付けました。

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Esper Has Emerged as the Answer to Sultai Midrange
By Josh Silvestri // 5 Feb, 2019

 新環境最初の週は、《ハイドロイド混成体》によって生まれ変わった伝統的なゴルガリミッドレンジが支配しました。エスパーコントロールやミッドレンジはその回答になります。しかし、メタゲームは未だにスゥルタイの支配から抜け出せないでいます。スゥルタイはメタゲームへの適応力が高い強固なデッキだからです。しかし、どの対戦相手よりも優れたカードを持っていたティムールエネルギーほどの支配力はありません。

 同じく以前から使われてきたデッキの中で、イゼットドレイクは大振りな除去に頼りがち(《喪心》や《暗殺者の戦利品》よりも優先されています)なスゥルタイに有利とされ、《潜水》と《プテラマンダー》の組み合わせで勝ててしまいます。青単テンポも、ソーサリータイミングの除去を打ち消しで避けるという、スゥルタイの嫌う戦法をとってきます。さらにサイドボード後は《幻惑の旋律》でゴルガリの最大の脅威を奪ってきます。

 先週Andrea Mengucciが書いた記事(訳者注:こちらも訳しました)では、イゼットドレイクがスタンダードのベストデッキとされていました。実際、MOMCQでは、TOP8に4つのイゼットドレイクが入賞しています。ほぼすべてのデッキが同じ構成なので、これ以上イゼットドレイクの特集をするつもりはありません。それよりも、《プテラマンダー》が環境に多大な影響を与え、様々なデッキに有効だった、という事実を示したかったのです。

 全く逆方向のアプローチですが、「門」デッキもシンプルな戦略ながらスゥルタイに対しての強さを持っています。スゥルタイは《門破りの雄羊》や《門の巨像》への回答を持っていますが、《ギルド会談》で4枚カードを引かれたり、《集団強制》で最大の脅威を取り除かれることには無力です。ネクサス採用型に至っては《根の罠》で時間を稼がれることさえあり、サイドボード後でさえ苦しいマッチアップとなります。

 単純で、ステレオタイプ的なミッドレンジではありますが、過去の同デッキと違い軽量の妨害手段を持ちません。《思考囲い》のような万能手札破壊がデッキに入っていないのです。一方で、現環境の最高のハンデスである《思考消去》を擁したエスパーは、スゥルタイに対しても強く出られる、メタゲームに順応したデッキになっています。ここでは、SCGオープンとSCGクラシックでTOP8に入賞した、2つのエスパーコントロールを、賞賛と共にご紹介します。

 最初に紹介するのは、チーム・オープンでEdgar Magalhaesが駆るデッキです。

Esper Control

lands
4《神聖なる泉/Hallowed Fountain》
4《氷河の城砦/Glacial Fortress》
4《湿った墓/Watery Grave》
4《水没した地下墓地/Drowned Catacomb》
4《神無き祭殿/Godless Shrine》
4《孤立した礼拝堂/Isolated Chapel》
1《平地/Plains》
1《沼/Swamp》

spells
2《否認/Negate》
1《喪心/Cast Down》
2《渇望の時/Moment of Craving》
4《思考消去/Thought Erasure》
4《吸収/Absorb》
3《屈辱/Mortify》
3《薬術師の眼識/Chemister's Insight》
3《ヴラスカの侮辱/Vraska's Contempt》
4《ケイヤの怒り/Kaya's Wrath》
2《予知覚/Precognitive Perception》

2《アズカンタの探索/Search for Azcanta》 // 《水没遺跡、アズカンタ/Azcanta, the Sunken Ruin》
4《ドミナリアの英雄、テフェリー/Teferi, Hero of Dominaria》

sideboard
4《正気泥棒/Thief of Sanity》
2《人質取り/Hostage Taker》
2《黎明をもたらす者ライラ/Lyra Dawnbringer》
2《強迫/Duress》
2《渇望の時/Moment of Craving》
1《否認/Negate》
2《肉儀場の叫び/Cry of the Carnarium》

 続いては、SCGクラシックのAbraham Steinのリストです。

Esper Control

lands
4《神聖なる泉/Hallowed Fountain》
4《氷河の城砦/Glacial Fortress》
4《湿った墓/Watery Grave》
4《水没した地下墓地/Drowned Catacomb》
3《神無き祭殿/Godless Shrine》
4《孤立した礼拝堂/Isolated Chapel》
1《平地/Plains》
1《島/Island》
1《沼/Swamp》

creatures
1《変遷の龍、クロミウム/Chromium, the Mutable》

spells
2《否認/Negate》
1《喪心/Cast Down》
2《渇望の時/Moment of Craving》
4《思考消去/Thought Erasure》
4《吸収/Absorb》
3《屈辱/Mortify》
3《薬術師の眼識/Chemister's Insight》
3《ヴラスカの侮辱/Vraska's Contempt》
4《ケイヤの怒り/Kaya's Wrath》
1《予知覚/Precognitive Perception》

2《アズカンタの探索/Search for Azcanta》 // 《水没遺跡、アズカンタ/Azcanta, the Sunken Ruin》
4《ドミナリアの英雄、テフェリー/Teferi, Hero of Dominaria》

sideboard
1《疫病造り師/Plaguecrafter》
4《正気泥棒/Thief of Sanity》
2《人質取り/Hostage Taker》
3《聖堂の鐘憑き/Basilica Bell-Haunt》
2《強迫/Duress》
2《渇望の時/Moment of Craving》
1《否認/Negate》

 エスパーは、メタゲームが遅くなればなるほど恩恵を受けるという、独特な立場にあります。そのようなメタゲームになれば、《虚報活動》《正気泥棒》《最古再誕》のような遅いエンジンが勢いを増し、遅い進行のゲームでトップ勝負になればほぼロックをしたような状態に持ち込むことができます。ミッドレンジに対してさえ、《思考消去》がその道を切り開き、戦場にどう干渉してくるか、その情報を得ることができます。もっと重要なのは、《人質取り》や《拘留代理人》という、使用タイミングを間違うと戦場に戻ってきてしまう類のカードが使いやすくなる、ということなのです。

 エスパーが既存のミッドレンジや他のデッキを、ハンデスや打ち消しで倒し始めているなら、次のメタゲームの行先はどうなるでしょうか? エスパーは、高速なデッキや脅威の多いデッキに対しては苦戦を強いられます。赤単、青単、グルールアグロは、相手の展開を即打ち取ることを強制してきます。《野生の律動》のようなカードでクリーチャーに速攻を与えて攻めてくる場合も、《ケイヤの怒り》《虚報活動》のソフトロックを突破されてしまいます。

 もう一つの方法は、単純に同じ方向の戦略で、かつ低いマナ域で脅威を展開することです。《夜帳の死霊》の系譜の末裔である《正気泥棒》が青系ミラーで用いられるのはこのためです。もし対処できなければそのままアドバンテージ差を拡大することが可能です。軽いPWや他のアドバンテージ獲得源ではなし得ない効果です。

 青単テンポは、MOMCQでこの要素を取り入れ、軽い打ち消しを用いることで上手く機能しました。安全牌であるミッドレンジ戦略をとりたいと思うプレイヤーの裏をかき、じっくり攻める戦略を咎めていました。ゲームの優位を固定するためにもはや《執着的探訪》は必要ありません。《本質の把捉》、《潜水》、《魔術師の反駁》を矢継ぎ早に繰り出すだけで、スゥルタイやエスパーは非常に厳しい戦いを強いられるのです。

 TOP8に入賞したMax_9のデッキを見てみましょう:

Mono-Blue Aggro

lands
20《島/Island》

creatures
4《プテラマンダー/Pteramander》
4《セイレーンの嵐鎮め/Siren Stormtamer》
4《マーフォークのペテン師/Merfolk Trickster》
2《波濤牝馬/Surge Mare》
4《大嵐のジン/Tempest Djinn》

spells
4《執着的探訪/Curious Obsession》
4《選択/Opt》
4《潜水/Dive Down》
3《呪文貫き/Spell Pierce》
3《本質の把捉/Essence Capture》
4《魔術師の反駁/Wizard's Retort》

sideboard
3《排斥する魔道士/Exclusion Mage》
1《本質の把捉/Essence Capture》
1《呪文貫き/Spell Pierce》
2《軽蔑的な一撃/Disdainful Stroke》
2《否認/Negate》
2《幻惑の旋律/Entrancing Melody》
2《睡眠/Sleep》
2《宝物の地図/Treasure Map》 // 《宝物の入り江/Treasure Cove》

 《航路の作成》はもはやこのリストに採用されていません。長期戦になっても《プテラマンダー》がゲームを終わらせてくれるからです。フル投入された《本質の把捉》《呪文貫き》《反駁》は今までのリストでは有り得なかったものです!! クリーチャーを4~6マナのスペルから守る方法が大量に採用されているのです。

 門デッキは、より多くのコントロール対策カードを採用することで、このマッチアップのために微調整することができます。もしクロックが足りなければ、何でもできるマナベースを利用して、どんな脅威でも展開することができます。また、多くのサイドボードへアクセスできることも利点です(《燃えがら蔦》《野生の律動》《苦悩火》《ニヴ=ミゼット》《殺戮の暴君》《宝物の地図》、などなど)。《ギルド会談》は相手への脅威を絶え間なく供給する源であり続けるのです。このデッキは手札破壊を苦手とするため、《虚報活動》が機能することが長期的な脅威となり得ます。それさえなんとかしてしまえば、サイドボード後のマッチアップは非常に有利になります。

 重要なのは、メタゲームが既に伝統的なミッドレンジ戦略や《ハイドロイド混成体》をTier1と位置付けていないことです。もはやミラーマッチ用にマイナーチェンジを加えることや、スゥルタイが多いフィールドだと信じて戦うことから我々を遠ざけます。近いうちに、ウィニー戦略がメタの上位に浮上するでしょう。

 プレイヤーは「赤単と当たる」という幻想から離れ、《運命のきずな》+《荒野の再生》デッキがメタられています。もしネクサス系デッキを深刻な脅威と扱わないようになったら、メタゲーム上位に浮上することが期待できます。バントネクサスがMOMCQの優勝者であり、現実の大会でも一定の成績を収めています。もし1ゲーム目で太刀打ちできなかった場合は、サイドボード後も苦戦すること必至でしょう。使っているデッキが《思考消去》や打ち消しをベースにしているなら、それほど大きな問題にはならないでしょうが。
 
 
 
 今、興味深いデッキが普及していき、パフォーマンスを高めている最中にあります。その過程でいくつかの戦略は他のそれよりも嫌らしくなっていますが、ここでメタゲームが止まったわけではありません。どのようになっていくか、見守る必要がありそうです。

(翻訳ここまで)
 
 
 
【TL;DR】
・スゥルタイの時代は終わった。エスパー、青単、門、イゼットのどれにも不利。
・エスパーは環境が遅ければ遅いほど強い。ミッドレンジが多いならデッキとしては最強。
・エスパーが流行ると、青単、赤単などのアグロが息を吹き返す。
・青単はミッドレンジには非常に強い。今のメタなら《航路の作成》は不要。
・門はエスパーに強い。サイドボードの対応力の高さは異常。
・もはや《ハイドロイド混成体》はTier1ではない。スゥルタイメタのデッキは徐々に沈んでいく。
・ガードを下げると《運命のきずな》デッキが息を吹き返すから気をつけよう。
・まだまだメタは遷移中。引き続き注視していくことが必要。

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