撮影実験で学ぶ「映像の文法」ーメディアデザインワークショップの授業よりー
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撮影実験で学ぶ「映像の文法」ーメディアデザインワークショップの授業よりー

TOKECOM note | 東京経済大学 コミュニケーション学部

TOKECOMの教育の特徴の一つに、ワークショップ科目があります。「あらわす 表現系」、「つたえる 英語系」、「しらべる 調査系」の多彩なワークショップ科目があり、少人数で実践的に知識や理論を学ぶことができます。「あらわす 表現系」の中の「メディアデザインワークショップ」という科目は、複数の教員によって開講されていて、それぞれの教員の専門分野にもとづいたメディアのデザイン/制作の知識や技術を学ぶことができます。今回は、私、大橋香奈が担当する「メディアデザインワークショップ」の授業について紹介します。

この科目のテーマは、「ドキュメンタリー・ストーリーテリング実践」です。「ドキュメンタリー」にはさまざまな定義の仕方がありますが、ドキュメンタリーという言葉を生み出したとされるスコットランドのドキュメンタリー作家ジョン・グリアソンは、ドキュメンタリーとは“the creative treatment of actuality(現実の創造的な扱い方)”であると言いました。私はロンドンのフィルムスクールでドキュメンタリー映像制作を学びましたが、その時の師である映画監督のSasha Snowは、このグリアソンの定義をベースにしていました。彼は、報道(ジャーナリズム)においては、「客観的」「中立的」であることが重視されるが、ドキュメンタリーにおいては「創造的(creative)」であることが重要だと言いました。その上で、ドキュメンタリーを、ジャーナリズムではなく、ビジュアルアートであると位置付けていました。私はそのような彼の考え方に影響を受け、これまでドキュメンタリーを学び、そのアプローチを取り入れた研究に取り組んできました。

この授業では特に、ひとりの人物の経験に着目し、その物語を理解して、写真や映像によって描くことに焦点をあてています。実際に、写真や映像を使った作品制作に取り組む前に、さまざまな作品を鑑賞して分析するケーススタディ、撮影や編集の実験、インタビュー課題に取り組みます。その過程で、ドキュメンタリー・ストーリーテリングの基本的な知識や技法を、実践的に学びます。

先日の​​授業では、「映像の文法」を理解するための撮影実験を行いました。私たちが日本語で何かを表現する際のきまりや作法のことを「文法」と言いますが、映像のような視覚的な表現の世界にも「文法」があります。これらの文法は、長い歴史の中で先人たちが実験や開発を繰り返して築き上げたものです。「映像の文法」を学び、撮影の仕方による効果の違いを理解すれば、より豊かな表現が可能になるはずです。ここでいう「効果」というのは、観ている人にどのような印象を与えられるか(与えてしまうか)という意味です。同じ対象でも、撮影の仕方が変わると、印象が大きく変わります。授業では、撮影の仕方による効果の違いについての資料を読んでディスカッションした上で、受講者一人ひとりが、実際に異なる撮影技術でフィギュアを撮影して、その効果の違いを学ぶ実験をしました。

撮影対象はフィギュアなので表情は変化しないはずなのに、撮影技術によって印象が大きく変化することを、受講者は実感したようです。現在では、多くの人がスマートフォンにより日常的に写真や映像を扱うようになりました。「映像の文法」などを学ばずとも映像を制作することは可能ですが、長い歴史の中で築かれた知識や技法、国際的に共有されている考え方を学ぶことで、受講者の皆さんと一緒に、より豊かで創造的な表現を探究していきたいと思います。

TOKECOMには、他にもさまざまな専門性を持つ教員によるワークショップ科目があります。興味がある方は、ぜひ、ワークショップ科目紹介動画もあわせてご覧ください。

(大橋香奈)

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