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【教員新刊】『スマホでYouTubeにハマるを科学する』

緑の新学期。南門が開き、東門も開き、サークル新歓も復活したキャンパスは出逢いと再会の歓声で華やいでいます。新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。ようこそ、"メディア"×"国際"のTOKECOMへ!

東経大コミ部の愛称、TOKECOMは"溶け込む"に掛けて"トケコム"と読むわけですが、もとい、私たちの生活に"溶け込みすぎて"見えなくなっているメディアとの付き合いを一旦突き放し、科学して見直そうというメッセージも含まれています。メディアに翻弄されるのではなく、メディアを使いこなすために。豊富な授業にぜひ飛び込んでください。

わがTOKECOMでは教授陣の共同研究も盛んで、その成果である著書がこの春刊行されました。気になるタイトルの本について、ちょっと聞いてみましょう。

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今回はTOKECOM教員3名で書いた本を筆者のひとりである佐々木裕一が紹介します。

それは『スマホでYouTubeにハマるを科学する』なるもので、YouTubeのスマホアプリ利用者(15〜49歳)の様子を複数のアンケート調査結果をもとに分析したものです。

この本は次のように始まります。

2019年当時はまだ高校生でも「趣味」と表現されていたYouTube視聴。今やまったくもって当たり前の行為となり、昨年度の私の2年ゼミ生でも1人を除いて最も長時間利用するスマホアプリはYouTubeでした。

YouTubeが大好きな人たちに向けてというよりも、メディアプランニングやコミュニケーションデザインをするマーケティングや広報の担当者に向けてYouTubeの見取り図として本書は書かれていますが、ひとりの利用者として「こんな使い方をしている人もいるの!」とか「自分、ヤバくない?」と驚くことも出来る本だと思います。

YouTubeはチャンネル開設者にはそのチャンネルの視聴行動データを提供していますが、実はYouTube全体の視聴行動データをまとめたものはなかったのが実情。加えてこの本には2つの特徴があります。

1つ目は、どんなジャンルの動画を見ている人たちがYouTubeアプリにハマっているという観点だけではなく、どんなアプリの機能を利用している人たちがハマっているのかという観点でも分析している点です。

デジタルメディア研究の世界には「アーキテクチャ」という専門用語があります。一般名詞では「建築物」を意味しますが、私たちはドアから建物に出入りするわけで、ドアの横にある壁を壊して建物に入ることは普通しませんよね。つまり建築物の設計は私たちの行動を制限します。同じようにアプリの設計も私たちの行動を制限・制御する点に着目した概念だから「アーキテクチャ」なのです。

「アーキテクチャ」はプログラムとして書かれています。わかりやすいのは「おすすめ機能」です。YouTubeのおすすめ動画のリストから動画を選んでタップして視聴していると、気がついた時には思った以上の時間が過ぎていたということは多くの人が経験するところでしょう。これはアーキテクチャが私たちの行動を制御している面があるからです。

2つ目の特徴は、相関関係だけではなく因果関係も分析しているところ。ある1時点の調査結果で、おすすめ機能をよく利用している人たちのYouTubeアプリ視聴時間が長い傾向が見られても、その結果には2つの解釈が可能です。すなわち、おすすめ機能をよく利用していることが原因でYouTubeアプリ視聴時間が長くなったこともあり得るし、YouTubeアプリ視聴時間が長い人たちがおすすめ機能を使うようになっていったこともあり得ます。

この本では、それがどちらなのかがわかる分析手法も用いています。つまり、スマホYouTubeにハマって「いる」のはどんな人? という問いの答えはもちろん、スマホYouTubeにハマって「いく」のはどんな人? という問いの答えもわかるようになっています。

ここまで書いた以外の視点でも分析しているので、終章の「動画推奨アルゴリズムと『発見』」では、データを用いながら大胆に「動画時代の今後」を予測しています。編集者が「読み応えあり!」と高く評価してくれた部分で、(予測ってのは当てにならないけど)特に実務者には多くのヒントがあると思います。

終章の目次だけ貼っておきますのでこちらも参考にどうぞ。よろしければ手に取ってみて下さい。

出版社リンクはこちら。


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