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情報を食べる人々

昨年の11月にツイートした一言が、自分が考えるのと全く違う意味合いで理解されて驚いた。

海外では、日本と同じ味では無く、ローカライズされた味の和食が求められているという意味で理解した人がほとんどと思う。しかし、自分では

期待と違う物を出されるとがっかりする

という現象について呟いたつもりだった。あれから、より考えが深まったのでここに書き留めておく。

ツイートした当初は期待外れのものを出すとお客様はがっかりする程度にしか考えていなかったのだが、それから色々なお客様と話す中で、お客様の期待が外観だけでなく味についてもかなり具体的な事に気付いた。お客様は来店前にSNS上でシェアされた写真や動画を見ながら、外観だけでなく味にもかなり具体的なイメージを持っている。
海外で和食をする場合、特別な体験を求めるお客様の期待に応えることが大事と語られる事が多いが、体験というよりSNS上で食べたものを追体験するという表現のほうが正しいと思う。

みんな情報を食べている。

彼らはスマホ上で寿司を何度も何度も食べている。2017年末にムンバイに住むインド人の間でSNS上でシェアされる寿司で最も一般的なものは、以下のようにマヨが大量にかかった裏巻き寿司である。お客様は外観だけでなく、来店前にエビ天ぷらとご飯とマヨの絶妙なハーモニーみたいなのを脳内で何度も何度も楽しんでいる。

それに対して、以下の様な日本の太巻寿司を出しても、お客様はがっかりする。というか、たぶん買ってもらえない。

なんだ、偽物の寿司を出しやがってと言われるのが関の山。確かに日本で売っている巻き寿司だが、彼らが脳内で食べた寿司とは味も見た目もかけ離れている。

実際にインドで寿司屋をやって感じるのは、インスタでシェアされた自分の店の商品を見てくるお客様よりも、先ほど写真で紹介したような寿司をSNSで見てうちにくるお客様のほうが格段に多いということ。そのため、どんな和食をインド人が好むかを探るより、SNS上でどんな外観の寿司がシェアされていて、そこから連想されるのはどのような味かを探るほうが、よりお客様に喜ばれる商品を提供できるのではないかなと考えている。

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