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楽屋にこだまする組長さんの「皆、聞いて~!」

 2022年年末から、立て続けに月組組長また宙組組長の退団が発表されました。組長の退団する時期というのは、一つの時代の変わり目。または新しい時代の安定期。どのタイミングにするのかは違っても、個人の想いと組全体の様子を意識するのは歴代同じであると思う。一人の女性が70名以上の未婚の女性を纏め、一つの舞台を創るリーダーになるというのは世界でも稀有な立場であると思う。

組長の仕事と言うと、
・初日・千秋楽・貸切公演その他、音楽学校入学式・緞帳贈呈式等、様々な式典での代表挨拶
・組の決まり事(初日・楽の組内の挨拶や日々の反省、楽屋や寮等の生活面)の管理と調整
・各組・会社との連携・調整
・冠婚葬祭等の連絡
・休演者や災害時の対応
・組子の相談役
・新人公演や小劇場公演での舞台稽古見学とアドバイス
・次回公演ポスター撮影、イベントの見学とアドバイス
・自主稽古のまとめ役
・先生・スタッフへの挨拶・連絡
・組費の管理
・クリスマスや誕生日等、行事の手配

等々、大きな仕事から小さな仕事、目に見える仕事から見えない仕事まで多岐に渡っている。それに加え自分自身がプレイヤーであり組子の中にいて同じ様に舞台に立たなくてはならない。組長でない時と同じように役作りに悩み、3時間の公演の体力・気力を維持しながらである。だからこそ、キャリアがあり、舞台を十分にこなせた上で上記の仕事をやりこなせるような人間力が無いと体力・気力共に限界がくる。稽古場や楽屋にいると、ひっきりなしに組子が来て「こんな事があった。」「あれはどうしたら良いでしょうか?」と聞かれる。私は2年半程しか組長をしていないので、15年も組長をされた寿組長は「神様」でしかないし、また、一公演しか副組長を経験せず、トップの退団やコロナ禍を乗り越えてきた、光月組長も「お見事!」としか言いようがない。

 組の決まり事一つ変えると言ったって、そこに70人以上の組子がいて100年以上の伝統の中で培ってきた決まりを、「はい。明日から変えます。」という訳にはいかない。何故その決まりが出来たのか、どういった経緯で出来たか、それを変える事にはどんな変化があるのか、メリット・デメリットは?そして、最下級生に至るまで、その事に関してどんな意見を持っているのか聞きながら、最終的には副組長や幹部部屋にいる上級生と共に決めていく。そんな姿を見ている下級生の中に未来の組長や副組長がいる。その子達はきっと何年も経ってからあの時の組長さんはこう言っていたよね。と、その言葉・背中を見て自分で判断していく様になる。

組長は大変である。きっと、誰にも言えないで1人で抱え込んだ事が沢山あったと思う。

 組長になる前、または就任中に必ず感じるのは、同じ時代の仲間がどんどんと去っていく辛さである。だんだん残される寂しさ…。「孤独」になる。それでも宝塚歌劇の未来を下級生に渡していかねばと思う。自分を頑張って奮い立たせていく。でも、黙って受け入れてくれたり、「すーさん、本当にお疲れ様でしたね。」とささやかな手紙をくれたり、じっと何も言わずに見守ってくれたり、そんな組子の優しさがあったから乗り越えられたのだと思う。本当の意味で人の為に何かしたいと願う事が出来たのは組長を経験できたからと切に思う。私が副組長時代に組長だった、越乃リュウさん。飛鳥裕さん。大変悩みながらも、孤独を抱えながらそれでも組子の事を考え、一人で答えを出し、批判も承知で皆の代表をして下さいました。その背中を見て、やらないわけにはいかないと思ったあの日の決意。身体は震えていたけど強い意志であった事を思い出します。

 ギリギリ限界まで頑張ってこられた、組長の「神様」と「お見事!」な組長に心からの感謝を込めて最後まで皆さんと一緒に、拍手を送ろうと思っている。

すーさん

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