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嬉しいことはあまり起きてほしくないんだ

僕があの子と別れてもう4ヶ月とちょっと経った。

4ヶ月とちょっとも経つのに、自分がまだこんなに苦しいなんて、まだこんなに好きでいるなんて、全然想像していなかった。

去年、春になる頃付き合いだして、秋になる頃には別れてしまったから、僕たちが付き合った期間はほんのわずかで、きっと一緒にいた時間よりも、その前の密かな片思いの時間よりも、これからひとりあの子のことを思い出す時間が1番長くなっていくんだろうなと思うと、なんだか自分がひどく弱い生き物のように感じられる。

僕は彼女のことが大好きだった。
本当に、本当に、もう本当に大好きだった。

大人しそうに見えてストイックなところ
周りに流されない自分のペースを持っているところ
子供みたいに好奇心が旺盛なところ
先入観を持たずに誰とでもフラットに接するところ
自分の好きなことを分かっているところ
いつもニコニコして物事を楽しもうとするところ

繊細だけど頑固で、自信がないと言うわりに大胆で。
僕は彼女が眩しくて、彼女の目に映るものが羨ましかった。

あの子が僕に別れを告げようと思ったはっきりとした理由を、僕は知らない。
心当たりが全くないと言えるほど大切に向き合ってきたつもりだけど、こうなると僕のすべての言動が心当たりに思えてくる。それほどまでに、僕は知らないのだ。

納得なんかできなかったけど、でも自分の気持ちを言葉にするのが得意ではない彼女が苦しそうに紡ぎだしたいくつかの言葉を受け取ったとき、もうこれ以上は止めようと思った。別れ話の分量としてはまったく少量で、僕には聞きたいことも話したいこともまだたくさんあったけど、でもこれ以上は無理なことはすぐに分かってしまった。やはり最後まで、繊細だけど頑固で、自信がないと言うわりに大胆だった。

なぁ、本当は最初からそんなに好きじゃなかったとか、そんな理由の方が良かったよ。
そしたら全部幻だったって諦めが付くから。確かにあった愛がこんな風に消えちゃうことが事実なら、もう誰かを愛するのが怖くなっちゃうよ。

なぁ、他に好きな人ができたとか、そんな理由の方がよっぽど良かったよ。
「誰か」と「僕」を天秤にかけたんじゃなくて、「僕がいること」と「僕がいないこと」を天秤にかけて「いないこと」を選ぶなんて、その理由を教えてくれないなんて、そりゃいつまでも考えちゃうよ、ずるいよなぁ。

ちゃんと前を向いて歩いていかなくちゃと思っているんだけどね、
自分の人生を生きていかなくちゃって思ってるんだけどね、

でも、今の僕には、
嬉しいことはあんまり起きて欲しくないんだ、
君に報告したくなっちゃうから
楽しいこともあんまり起きて欲しくないんだ、
君の喜ぶ顔を想像しちゃうから

僕は先月、君の知らない街に引っ越したよ
自分は好きじゃないくせに、ついついケーキ屋さん探しちゃったよ
家の近くに小さな塔があってさ、「あれ、スカイツリーだよ」なんてくだらない冗談言ったら君は信じるんだろうなぁ

腹が立つこととか悲しいこととか、もちろん起きて欲しくない
嫌なこととか憂鬱になるようなことだって、なるべくなら起きて欲しくない

でも、いま1番苦しいのは君を思い出すことで、なのに嬉しいことが起きたときについ頭に浮かんじゃうのも君で、

だから他のどんな困難なことよりも、嬉しいことこそがあんまり起きて欲しくないんだ

こんなこと知ったら、きっと悲しませちゃうよな

だからその代わりに、僕に起きる予定だった嬉しいこと、全部君に起きますように。もう会うことは無いと思うけど、僕はいつまでも君の幸せを願ってるよ。新社会人、頑張りすぎるなよ。元気でね。

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