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The Columbia Recordings 1965 - 1967 / Les Sauterelles

スイス、エメンタール!

長年探していたものにひょいと出会うこともあるんです。
Amazonの欲しいものリストに入れておいたCD、先日何気なく見たらお手頃価格で中古品が出ていることに気づきました。
ディスクユニオン町田店。
あの野郎、やってくれるじゃないか。

ロッキーくんこと、ロッキー羽田なら「やるじゃない」というところですよね。
あいつアメリカ人かと思ったら日本人とフィリピン人のハーフなんですよ。
知ってました?

Les Sauterells

スイスはチューリッヒのバンド。結成は1962年と古く、1970年に一旦解散したものの、
活動自体は今でも継続しています。

オフィシャルサイト
https://www.sauterelles.ch/
え?この夏にライブの予定があるじゃない?
がっつり現役ですね。

Les Sauterells、バッタ、イナゴ。
グラスホッパーそんなバンド名です。
スイスは言語が入り混じっていて、バンド名はフランス語です。
中心メンバーはToni Vescoliさん、数多のメンバーチェンジを乗り越えます。
バンドやToniさんのオフィシャルサイトはドイツ語。
https://www.vescoli.net/
さすがスイス。多言語だぜ。

Les Sauterellsの歩み

バンドは当初はシャドウズのカバーなんかをしていて、
地元での演奏で気を良くして、ドイツのケルンのライブハウスでのレギュラー出演権を得ました。
が、そこで「シャドウズって。」と予定を打ち切られてバンドは一時空中分解。
ドラマーはジャズ畑の人だったそうで、そのまま他のバンドへ。
時期はよくわかりませんが、Toniさんの妹(ベースの彼女)がヴォーカルで入っていたものの、
これじゃどうにもならないと、ベースもろとも追い出したりします。
1962年から1965年までの経緯はバンドにとってあまり意味をなすものでもないのかもしれません。
バンドはメンバーを入れ替えつつ、猛練習を積んで1965年にようやくHong Kong/Forgot It Allでデビュー。
Hong Kongはシャドウズが好きだったというのが納得のインストナンバー。
あれ、そうなんだ。まだシャドウズなんだ。
一方のForgot It AllはThe Byrdsみたいな爽やかなフォークロック。
はっきりしませんね。

デビュー後もメンバーを入れ替えつつ、スイスのみならずフランスやドイツ、チェコにオーストリアとライブで回ります。
合間合間にレコーディングした曲たちもあまり統一感はなく。
これといったヒットがないままに1967年にはイタリア語の歌をレコーディングして発表。
そしてColumbiaとの契約も終わってしまったようです。
大きなヒット曲がなかったこと、オリジナル曲が目立たなかったことあたりが、成功に至らなかった原因かもしれません。

1968年。ここでようやくのヒット。Heavenly Clubが1位になったそうです。
これなんでこうなったんだろうという、歌い上げる感じの曲でして。
なんか、ストリングスとか入ってる、あまり特徴のない曲なんですよね。
ぼんやりしたサイケポップと言いましょうか。

そしてもう1968年。ビートバンドの時代はとっくに終わっている。
というかビートバンドではなくなっていたんですね。
バンドはその後失速していき1968年には活動が目立たなくなり1970年に解散となりました。

Heavenly Club、カラーのプロモ
https://www.youtube.com/watch?v=vo_vbDwP3ZM

The Columbia Recordings 1965 - 1967

今回購入したアルバムはThe Columbia Recordings 1965 - 1967
2002年に出た編集盤で、未発表音源も含んでいるもののColumbia時代のベストといった選曲になっています。
主に英語で歌うのですが、このアルバムにはイタリアで出したシングル4曲も入っていました。(20〜23曲目)
そして例のHeavenly Club以前のビートバンド時代の音源のみとなっているので、バンドの黄金期をすっぽりとカバーしてくれています。

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ジャケット、まずもって佇まいがいい、かっこいいですね。
収録曲はこんな感じ

01 Routine
02 I'll Feel A Whole Lot Better
03 Neon City
04 Cheryl's Goin' Home
05 Four Strong Winds
06 No No No No
07 I Love How You Love Me
08 Desolation Row
09 Every Little Thing
10 Springtime
11 Much Too Much
12 Chains Of Love
13 She Belongs To Me
14 Hey Girl
15 Every Little Thing (Unreleased Version)
16 Pretend (Unreleased Version)
17 Hong Kong
18 Janet
19 Hey Girl (Unreleased Version)
20 Routine (Italian Version)
21 Senza Di Te
22 Aiuto!...Va Sempre Male
23 II Quinto Non Lo Paghi

全体的にカバーが多いのですが、まあカバーも平均点以上。
特にParis SistersのI Love How You Love Meはかなり好きです。
女性が歌っていた曲を割と自然に、ファズとリコーダーを交えてお送りする奇怪な曲に仕上がっています。
ファズはなかなか汚いビリビリした感じです。

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リコーダーを吹いているので、I Love How You Love Meのリハーサルに違いない。間違いない。

RoutineはWorld beaters 5にも収録されていたオリジナルのガレージナンバーです。
1曲目に勢いのあるこの曲を入れるあたり編纂者の趣味が現れていますね。
ついでに18曲目のJanetもWorld beaters 1に収録のガレージナンバーです。(ファズ、シャウトあり)
ちなみに、World beatersとは世界中のガレージバンドを集めたコンピレーションです。(多分全11作)

メンバーが一切出てこないRoutineのプロモ
https://www.youtube.com/watch?v=qEH2mumxqKQ

フォークロックのカバーはそこそこ。
The ByrdsのI'll Feel A Whole Lot Better
BoB LindのCheryl's Goin' Home
Bob DylanのDesolation Row、She Belongs To Me
Mama's & Papa'sのHey Girl
この中ではCheryl's Goin' Homeの方が良いカバーでした。
Sonny & Cherのバージョンを下敷きに演奏している感じでした。
バンドの音になりつつ、ポップな仕上がりです。ナイスカバー。

ブリティッシュビートのカバーもそこそこ。

The SorrowsのNo No No No
The BeatlesのEvery Little Thing
The WhoのMuch Too Much
フォークロックも悪くないけど、やはりこういうビートバンドの曲の方がしっくりきます。
この中で言えばEvery Little Thingが白眉。馬良です。
メリハリの効いた演奏。コーラスもしっかりしているので、付け焼き刃的にレコーディングしたのではなく、
ライブでもそれなりに演奏しているような曲だったのかと思います。

アルバムを通しての印象は、The Tagesになり損ねたバンドといったところ。
Tagesといえばスウェーデンの雄ですが、初期のビートバンド期も素晴らしく、
フォークロック、サイケデリックを見事に取り込んで、数多の素晴らしいオリジナル曲を作りました。
もう少しソングライティングのところに強みがあれば彼らもTagesのようになれたのではないかと思うのです。
演奏、歌、コーラスあたりはまとまっているので。
スイスは多言語というのが国内でのヒットに繋がらない理由だったりするのかもしれません。

ちなみにライナーは残念ながらドイツ語のため解読不明です。
それでも上のような素敵な写真が入っていたので買って良かったです。

気がつくと英語版のWikipediaにページが!
https://en.wikipedia.org/wiki/Les_Sauterelles
最初っからこれを参照すれば良かった・・・。

音源が気になったら

YouTubeでもいいのだけど、せっかくならダウンロード購入もできます。

オフィシャルサイト
https://www.sauterelles.ch/
Yesterdayがお勧めです。代表曲は入っています。
トラックリストはDiscogsを
https://www.discogs.com/ja/Les-Sauterelles-Yesterday/release/4157770

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