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読書リハビリ:古い群像

部屋を片付けていたら本棚の奥から古い群像が降ってきた。
2019年7月号の群像だった。

「群像」は講談社の文芸雑誌だ。
表紙を見てすぐに目当てはわかった。
西村賢太の書き下ろし小説が2本も掲載されていたので、これが目的だったのだろう。
そして単行本になるまで取っておこうと棚に入れておいたのが、奥へ奥へ・・・。
(ちなみにその2本は「瓦礫の死角」と「病院裏に埋める」で両方とも名作だ。)

というわけで、解体の時間です。
西村賢太の作品は単行本どころか、すでに文庫化されているので除外。
いくつかの随筆を切り取りスキャニングしたのでした。

文芸誌の切り身

群像はとても解体し易かったです。
時間が経ってある程度紙が熟成していたのかもしれません。

そしてスキャニングした随筆は4編ほどだったので、そのまま読み終えました。
読書リハビリは順調なようです。

大前栗生「やさしいの話」

アルバイトをしつつ執筆活動をする生活を送る著者の改元があった頃の話。
周りには「やさしい」が溢れていたようで。

日付が変わった。5月1日になった。けれど、テレビで見る限りではどこも盛り上がり切れておらず、誰かがなにか起こしてくれるのを待つように雨天の路上に大勢が立ったままだった。

大前栗生「やさしいの話」群像2019年7月号

令和改元の日、思い返すとこれは生涯に何度もあることではないと気づく。今更ではあるが。
多分、その瞬間に街に出ていた人、渋谷や道頓堀にいた人は何かがあると思ったのだろう。
それは正しいようで正しくなかったのかもしれない。
改元に関する記憶はほぼない。

語られる日常と触れた優しさ。
「やさしい」ものの一つにかが屋が入っていた。
確かに、やさしい。

滝沢秀一「金持ちごみから学ぶ思考」

七年前に食えなくなった。売れない芸人で居続けるには限界だった。妻は笑いながら、今赤ちゃんがお腹蹴ったよと報告してくる。順調だ。順調でないのは金の工面だった。

滝沢秀一「金持ちごみから学ぶ思考」 群像2019年7月号

冒頭からなかなか強い言葉が並ぶ。
しかし、今となっては過去の話。
マシンガンズ滝沢は順風満帆だ。
ただ、この当時はどうだったんだろう。
確か当時この随筆を読んだ時には、ぼくは小躍りしたはずで、というのも当時彼らがやっていた「ネガポジ」というラジオ番組をよく聴いていたからで。
滝沢が世に出るのはごみ!という流れができつつあったからだ。
いや、もしかしたらすでに世に出ていたかもしれない。
曖昧な記憶。
(ちなみにネガポジは地上波ラジオは終了したが、各種ポッドキャストで番組は続いている)

随筆の内容は昨今では何度も聴いた、「金持ちはそもそもゴミが少ない」という話だ。
無駄なものを買わないし、ものを大事にするし、お金は自分に投資するということ。

ごみとその周辺の物はその人を表す。今自分がどういう状態なのかを知りたかったら、あなたの家にあるごみ箱があなたのことを客観的に教えてくれるかもしれない。

滝沢秀一「金持ちごみから学ぶ思考」 群像2019年7月号

ぼくは最近ごみが少ない。
直近では、解体した群像を古紙として出した。
自分には投資していない、そこが改善点なのかもしれない。

サポートをしていただけたら、あなたはサポーター。 そんな日が来るとは思わずにいた。 終わらないPsychedelic Dreamが明けるかもしれません。