みんなで動かない(毎週ショートショートnote)
今回は410文字に収められそうになく、潔く諦めました😅結果、800字程度の掌編になりました。よかったら読んでやってください!
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数発の銃声がサルーンに響き渡り、私たちはその場に凍り付いた。
「動くなよ、どいつも」
名うての大悪党、オスカー・“ブル”・ドーソンは、銃を構えたまま、私たちを睨め上げるように見回した。
計画は完璧なはずだった。村で悪逆の限りを尽くすドーソンを倒そうと、男達が決起したのが三日前。腰巾着の保安官を縛り上げ、根城へなだれ込んだ私たちは、取り巻きどもを次々と始末した。
しかし、ドーソンは動じなかった。仲間三人が立て続けに撃ち殺され、形勢は一気に逆転した。彼の銃口は冷たい光を放ちながら、今なお私たちを威圧している。
「舐めた真似してくれたな。お前ら全員、殺してやる。俺が一人ずつ、殺してやるからな」
ドーソンは、ひどくゆっくりとした調子で言った。その立ち姿には、一分の隙も見当たらない。
鋭い眼光に射すくめられ、一人ひとり、額を打ち抜かれる。そんなイメージが浮かんだ。やはり、私たちでは敵わないのか。
と、その時、ドーソンの手から銃がぽろりと落ちた。厳めしい顔がみるみる内に青ざめ、胸を押さえてうずくまる。
誰か撃ったのか。いや、違う。
「う、ぐう……」
ドーソンは呻きながら、空いた手でジャケットの胸ポケットを探った。その手から小さなピルケースが転げ落ち、床を転がっていく。床に這いつくばり、ケースへ伸ばしたドーソンの手が、虚しく空を切った。
心臓発作だった。静まりかえったサルーンに、ドーソンのうめき声が響く。苦痛に顔をゆがめ、巌のような巨体がびくん、びくんと痙攣する。私たちは、その様をただ黙って見つめていた。
ドーソン。その苦しみは、お前がこれまでいたぶってきた、無数の人々の苦しみだ。
財産を奪われた者、家を焼かれた者、一生消えない傷を負った者。そして命を奪われた者。お前が何度死んだって、償うには足りない。
私たちは決して動かない。お前の命が尽きるまで。お前がそうしろと言ったのだ。これは、神の裁きだ。
トップ画像出典∶pixabay
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5/1~7のお題は「みんなで動かない」。