#41 100年予測 ジョージ・フリードマン

地政学を理解することが、政治、経済を理解する基礎となるのだということを大国の掟を読み実感した事から、地政学周りの本をより多く読みまとめていくことにしたい。その第一弾としての本書。地政学の大家であるジョージの視点は、現状の大国の形成過程とその過程で生じた歪み、そしてそれらをもとに今後の歪みに関してどのような展開を見せるか軽快な文調で表現をしている。将来予測に関しては、正直想像の域を出ないところが多いかもしれないが、現状の大陸間のパワー関係、利害関係を知るためには必読の一冊。ジョージの著作を引き続き読んで学ぼうと思うが、本書からの抜粋をいかに纏める。

・歴史は振り返ると当たり前のように思うが、その当時から考えると毎度予想天外のことの積み重ねであり、何が起こるか完璧な予想などできない。特に複数の国地域が対立している国際関係ではその傾向が顕著に出てくるだろう。

・現在はアメリカを中心に回る経済圏にある。1980年代初めに、太平洋貿易額が、大西洋貿易額を超えた。これは、第二次世界大戦後に、ヨーロッパが2級の大国の寄せ集めに成り下がり、貿易パターンが変化したため。21世紀は間違えなくアメリカの時代。それは、海路という国際間で最も活発に存在している交易網をアメリカが維持できるだけの富と力を有しており、その支配網に加入させるかどうかという視点で経済制裁を敷くことができるから。

・アメリカの対外国への政策としては、統一させないこと、アメリカに対抗できるほど強大な力を生じさせないことである。

・ロシアは勢力回復を図らざるを得ないが、大国が起ころうとする時には、既存の大国が興隆する勢力を潰そうとするのが世の常である。これはロシアだけでなく、1500年頃よりも以前の世界で世の中の中心を統べていた、トルコ、そして現在一番の対抗馬としてめされている中国の勃興に対しても言えることである。

・一方で、中国が大国として起こることは少ないと考えるのにも十分な理由がある。中国は本質的に不安定であり(貧富の格差と、地理上の分布にみる不安定、地理的にはシベリアとヒマラヤ山脈に囲まれランドパワーは拡張することが難しく、シーパワーの拡張は、アメリカの妨害に遭うと考えられるからだ。経済的には、現在の発展は成長をし続けることが原則であり、こう成長率は持続することが不可能であることは歴史が証明するところ。日本の1970年台からの躍進は、戦争特需と銀行融資の増加があったが、中国は現状ゆるい銀行融資からくる投資循環から見える成長であり、いつか成長が止まった時に、焦げ付きが生じ悪循環がスタートすることを覚悟する必要がある。

・人口爆発の時代を終え、先進工業国はいかに人口を保つかに頭を悩ませることになる、また、移民を呼び込む政策へと転換を迫られる事になる。

・地政学は人間は家族より大きな単位を組織するが、その過程で政治に関わり、国家的なアイデンティティが醸成される。また、地政学は国家の性格や国家間の関係が地理に大きく左右されるととく。

・アメリカが作った優位性は、軍事力、経済力、地理的優位性に支えられており、ちょっとやそっとのことでは動かない。これはヨーロッパが過去500年間をかけて築いた平和の源泉でもあった。ヨーロッパはこれらを戦争での疲弊と、自国内の内紛で無駄にする。同時にアメリカの支配は始まったばかりであり、そのため、思想的にも従属する国々に対しては非常に若い対応となっている。

・アゼルバイジャン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、キルギスタン、チェチェンなどの中東の不安定化はソ連の消失を受けて加速したものであり、ここは東西冷戦の境界線があり、またソ連の南の境目でもあった。

・国家間の断層線は、現在いずれかの国に支配されていたとしても、緊張をはらみ、不安定な平衡状態にあることを認識する。メキシコはアメリカ南部への人口流入があり、歴史を振り返るとこのような地域では、国境が拡張したり収縮する可能性が十分にある。一般的な移住と異なり、国境付近の人口移動は、文化、慣習をそのまま引き込むから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?