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失意の5月(慶應通信新入生2023/5)

1.入学式後

 慶應大学通信課程に入学した君は、少し落ち着いたところだろう。名門の慶應大学、その通信課程というので色々と調べ、何カ月も悩んだ末に申し込みをした3月、果たして700字のあの小論文で大丈夫なのか心配して、そして、合格発表のあった3月末!
 喜びの中、20万円という大金を入金手続きした後、段ボール箱に入った大量のテキストが届いたのが4月の半ば。これをどうやっていけばいいのか、という戸惑いの先に4月末の入学式が終わって、仲間たちと会ってそれで1人になって、それは実際には長い孤独の始まりだったわけだ。

 世間はゴールデンウィークだが、
「レポート出した」
「みんな捗っていて焦る」
 などとツイッターのタイムラインに流れてくるが、そもそも何から手をつけたらいいのだろう。なんとか1冊テキスト読み通したところで、レポート課題というのを確認するが、それは与えられたテーマについて論評するといものだ。参考文献を引用して4000字? 何を書けばいい? 君はまたテキストを読み返す。何が書けるだろう? それに、WEB提出不可??? コンビニは「持ち込み紙不可」だ。じゃあ手書き? そう、プリンターを買わないなら、紙に手で書くしかない。

2.レポート締め切り前

 もちろん君にも慶應通信以外の予定がある。時間もエネルギーも気力もそこに捕らわれて、気が付けば5月も半ばだ。いや、机の上に教科書を並べて、やる気を出そうと意識したところで、ついスマホに手が伸びて、というのが実情かもしれない。楽しくないのだ。わけのわからない文字が連なった文章が数百ページ、その最初の1ページですら読むのに苦労する。こんなことやって何になるのか? 卒業、学位のため、単位のためだ。頑張ろう、と目をしばらくそこに留めるが上手く行かず――――勉強なのだ! ああ! 楽しくなくても、これをやっていかなくては、義務として頭にこの知識を詰め込まないと、先へ進めない! というので、進みはゆっくりになり、気が付けばレポート提出期限(5/24)の1週間前。

3.SNS(ツイッター他)

 「駄目だ、1つもレポート出せないかも」
 と、1週間前にもなると焦りだす人が多数出てくる。76期までの方々は、4月の科目試験で単位が取れた人もいれば、落とした人もいて、喜怒哀楽というところだが、気になるツイートを見かける。

「プロフィール変えたのでわかると思いますが、もう慶應通信は辞めることにしました…」
と、76期か、いや、75期か74期の方が宣言をしているのだ。なぜタイムラインに流れてきたのだろう。数年いて、数単位しか取れなかったということだ。
 慶應通信の卒業率は5%とも聞いていたけれども、挫折する人が実際にいるとは… そもそも、どうすれば単位を取れて、そしてそれが卒業に必要な単位となると???

 LINEのオープンチャットでも、順調そうな人は順調だが、何も発言しない人も増えてきた。ツイッターでも、ツイッターのスペースでも、最近見掛けたない人が…

4.レポート提出とFGKと

 諦めるのか、諦めないのか。無様な姿であれ、どれだけ頑張って、その苦闘の結果を晒すか。君の送ったレポートは不合格(FGK)で返ってくる。
 どれだけの時間をかけたか。他の「同期」は、すでに「合格」だったという。そんな遅れをとった状態でいいのか? でも、そもそもツイッターにもう1カ月近く投稿していない人もいる、どうしている? いや、だいたい何をやっているか、そんなの全部晒す必要なんてない。

 そんな風にあれこれ迷っているうちに――――――――――――――――相互フォローだった同期(77期春)のアカウントが1つ消えた。

 1人、と言い直すべきだろうか? 同じことだ。いずれ君もそうなるかもしれない。プレッシャーに負けて、いや、壁の高さにただ気が沈んで、もう見るのも嫌になったというだけだろうか? こんなことをして何になるのか? どんな未来が待っているのか? どれだけの労苦が待っていて、そしてそれは乗り越えられるものなのか? ただただ拒絶が繰り返し迫ってきて、吐き気と目の前が暗くなるような、あるいは何もかも真っ白に気が遠くなるような、そんな時間を何度も味わうこととなる。簡単なことだ。彼か彼女か、もはや曖昧になったそのアカウントと同じように、君も消せばいい。そうすればスッキリする…

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