見出し画像

【男女差】 股関節の男女差 -形態から考えてみよう!-

こんにちは!ちーりんです🦒
今日は骨盤と大腿骨の形態的な男女差、股関節の動きについて考えてみたいと思います!


1.骨盤の男女差

骨盤帯は男女差が大きい場所と言われています。
ただ、具体的にどのような男女の差があるのかは私も詳しく知りませんでした。
今回調べてみた中では、骨盤自体の大きさや傾き、寛骨臼について男女差が報告されています。

 1-1.大きさ

骨盤の大きさの男女差はご存知の方も多いかと思います。

画像1

男性の骨盤は横幅は狭く縦に長い構造をしています。
一方で女性では横に広く、高さは男性に比べて低いです。
女性の場合、妊娠や出産という役割も担う方が多いため、骨盤輪が広い構造となっています。
骨盤の大きさに伴って、恥骨下部の角度にも男女差があります。
男性では恥骨下角と呼び角度は約70度、女性では恥骨弓と呼び90-100度と言われています。
この骨盤の大きさは、このあとでお話する大腿骨の配置(Q角など)にも影響してくると思います。

 1-2.傾き

矢状面上での骨盤の傾きは女性の方が前傾しやすいと言われています。

画像2

ただ、これについては男女差がないと報告している文献も散見されます。
また、加齢によって後傾に変化しやすいとも言われており、加齢での変化に男女での有意差はないとの報告もありました。

 1-3.寛骨臼

①傾斜
寛骨臼の傾斜角は約35-40度と言われています。

画像3

この傾斜角も女性の方が3-5度大きいと言われています。

②前傾

画像4

寛骨臼の前傾角は約17-20度と言われています。
そして女性の方が3-5度さらに前傾しているとの報告があります。

③CE角

画像5

CE角は骨頭中心を通る垂線と、骨頭中心と寛骨臼外側縁とを結ぶ線とで成す角度です。約35度が正常範囲です。
これは男性の方が大きくなる傾向があるようです。

寛骨臼の傾斜や前傾、CE角から考えると、女性の方が大腿骨の被覆率は低くなる方が多いのかもしれません。
そうすると、骨盤を前傾させて股関節を安定させようとする代償動作も女性で出やすくなる可能性があります。

④寛骨臼の形状
寛骨臼の凹凸ってどうなっているか…みなさんは想像できますか?
寛骨臼の凹凸にも一定の法則があり、男女差も報告されています。

スクリーンショット 2021-04-03 19.20.08

ある文献では、寛骨臼を時計に例えて表現しています。
詳細はこちら↓

寛骨臼切痕を6時とし、対側を0時、前方を3時、後方を9時として凹凸を時間で表現しています。
寛骨臼には
・3つの隆起
・3つの陥没

があると言われています。

寛骨臼を前方と後方に分けて、その特徴をみてみましょう。

スクリーンショット 2021-04-03 19.20.28

寛骨臼の前方をみた場合、
・1時30分、4時30分で隆起
・3時、6時で陥没
しています。

スクリーンショット 2021-04-03 19.20.46

寛骨臼の後方をみた場合、
・7時30分で隆起
・11時で陥没
しています。

ここまでを動画で確認してみましょう!

そして、隆起のしかたにも男女差が報告されています。

スクリーンショット 2021-04-03 19.20.57

青い粘土で色付けされた部分は、男性の方が隆起している傾向にあると報告されています。

こちらも動画で見てみましょう!

それでは、骨盤の男女差についてまとめです。

スクリーンショット 2021-04-03 22.42.47

骨盤だけで考えても、これだけの男女差が報告されています。

2.大腿骨の男女差

では次に、大腿骨の男女差についてみていきましょう!

 2-1.骨頭径

スクリーンショット 2021-02-21 17.19.12

骨頭は男性の方が大きいと報告されています。

 2-2.前捻角

スクリーンショット 2021-04-03 22.43.06

前捻角の男女差はご存知の方も多いかと思います。
こちらは女性の方が大きい傾向にあります。

 2-3.頸部

頸部では①頸体角②頸部の形状について見てみましょう!

①頸体角

スクリーンショット 2021-02-21 17.22.58

私が調べた中では、頸体角には明らかな男女差は報告されていません。
(もし、報告があれば教えてください!)

②頸部の形状
頸部の形状にも男女差が報告されています。
先ほどの寛骨臼と同様に、頸部を時計として捉えて頸部の形状について表現している文献があります。

スクリーンショット 2021-05-09 16.31.08

優位な男女差があるのは、
・頸部の上方(時計で考えると11時から12時30分の範囲)
だと報告されています。

スクリーンショット 2021-05-09 16.31.23

動画で見てみましょう!

 2-4.Q角

スクリーンショット 2021-02-21 17.23.12

Q角は上前腸骨棘と膝蓋骨中央を結ぶ線と、膝蓋骨中央と脛骨粗面を結ぶ線とで成す角度です。女性の方が大きいと言われています。

 2-5.顆間窩

スクリーンショット 2021-02-21 17.23.44

顆間窩の大きさは男性の方が大きいと言われています。

では、大腿骨の特徴をまとめてみましょう。

スクリーンショット 2021-05-09 16.30.08

さて!骨盤と大腿骨でこれだけの男女差があるということは、当然股関節の可動域にも男女差がありそうですね!
形態的な男女差を踏まえて、股関節の可動域について考えてみましょう!

3.股関節可動域の男女差

簡単に説明すると、
・女性は屈曲、内旋に可動しやすく、男性は伸展、外旋に可動しやすい
という特徴があります。

スクリーンショット 2021-02-21 14.46.10

これは逆に言うと、
・男性は屈曲、内旋制限が出やすい
・女性は伸展、外転制限が出やすい

ということになります。
(上記の傾向があることは報告されていますが、有意差があるのは屈曲、内旋、外旋と言われています。)

一体なぜなのか、その理由の一つには今までお話してきた形態の男女差が関係していることが予想されます!

 3-1.なぜ女性で伸展、外旋制限が起こりやすいのか

伸展、外旋は寛骨臼の前傾、大腿骨の前捻角が大きいほど制限されると報告されています。

寛骨臼の前傾、前捻角の男女差を振り返ってみると、共に女性の方が大きい傾向にありましたね!

スクリーンショット 2021-09-04 11.40.51

形態的な特徴からも伸展、外旋制限は女性の方が起こりやすい傾向にあります。

 3-2.なぜ男性で屈曲、内旋制限が起こりやすいのか

①屈曲
屈曲は寛骨臼の形状によって制限が生じると報告されています。
先ほど、寛骨臼の形状にも男女差があり、男性の方が部分的に隆起していると説明しました。

スクリーンショット 2021-09-04 12.03.44

そのため、股関節屈曲時に男性の方が早めに寛骨臼にぶつかってしまう傾向にあります。
動画で見てみましょう!

②内旋
内旋制限もCE角や寛骨臼の形状、大腿骨頸部の形状が関係しています。
簡単に説明すると、
・CE角…大きいと制限が出やすくなる→男性の方が大きい
・寛骨臼の形状…男性の方が隆起している
・大腿骨頸部…男性の方が隆起している

スクリーンショット 2021-09-04 12.47.09

こちらも動画でみてみましょう!

4.まとめ

今回は骨盤と大腿骨の形態学的な男女差についてまとめてみました。
もちろん個人差はあると思いますが、一般的にこのような傾向が報告されていることを知っているだけでも、可動域の違いや姿勢の変化、疾患の発症率など男女差を踏まえて考えられるかなと思います!

※参考文献
・プロメテウス解剖学アトラス 医学書院
・市橋則明:身体運動学 関節の制御機構と筋機能 メジカルビュー社 2019
・Donald A. Neumann  筋骨格系のキネシオロジー 医歯薬出版株式会社
・Ichiro Nakahara et al : Gender Differences in 3D Morphology and Bony Impingement of Human Hips.2011
・Jennifer Moriatis Wolf, MD et al : Male and Female Differences In Musculoskeletal Disease.2015
・畠山 智行ら:大腿骨頸部前捻角が股関節屈曲角度に及ぼす影響 2017
・尾崎 誠ら:骨盤傾斜に伴う臼蓋の骨頭被覆の変化 1993

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?