予備校は教えてくれない刑事実務基礎の対策法

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【2022年3月更新】
本記事の続編を作ったので、今の記事を読んだらこっちも見てね〜。

【令和最新版】続・予備校は教えてくれない刑事実務基礎の対策法

0.はじめに

 こんにちは!予備試験受験生のみなさん!
 実務基礎科目は得意ですか?それとも、まだ実務基礎まで手が回っていませんかね?

 私が予備試験を受験していた頃は、法律基本科目(7法)の対策をするので精一杯で、あまり実務基礎科目の対策に時間を割けていませんでした。
 ようやく実務基礎対策に本腰を入れたのは、初めて短答に合格できたロー2年の5月頃でしたが、あまり有意義な対策はできていませんでした。その結果、その年の実務基礎科目はD評価(A〜Fまでの中で)しか取ることができず、実務基礎科目が足を引っ張ってしまいました。

 しかし、多くの予備試験合格者は「実務基礎科目は高得点を取りやすいので、ここで点を稼ぐべき」というのです。
 私にはこの言説が理解できませんでした。過去問を見ても、ナンジャコレということばかり聞いていて、何をどう対策すれば点が取れるようになるのかがわからなかったからです。

 でも、今ならわかります。実務基礎科目は点の稼ぎどころです
 ただ、対策法が少々特殊なので、一筋縄ではいきません。
 予備校はその対策法を知っているので、対策講座を受験生に提供できていますが、予備校は決してそのカラクリを語ろうとしないのです。独学派の受験生にとってはつらいものがあります。

 そこで、今回は、その予備校が教えようとしない刑事実務基礎の対策法を、読者のみなさまにご紹介したいと思います。

1. 刑事実務基礎はどこか難しいのか

 なぜ刑事実務基礎の対策は難しいのでしょうか。
 それは、刑事実務基礎プロパー知識を効率的にインプットする方法がわかりにくいという点に尽きるでしょう。

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 上記の図の通り、刑事実務基礎科目では、法律基本科目としての刑法や刑事訴訟法についての知識や理解が問われているのはもちろん、それだけでなく、これまで法律基本科目の中で学んでこなかったであろう刑事実務基礎プロパーの知識についても問われています。

 刑事実務基礎プロパーの知識の例として、平成29年度から3年連続で出題されている、”罪証隠滅のおそれ”の当てはめ作法があります。
 そもそも、刑事訴訟法60条1項2号が、勾留の要件として、「被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある」ことを要求していることは、法律基本科目としての刑事訴訟法の知識として既にご存知かもしれません。
 しかし、刑事実務基礎科目においては、その要件の存在を知っていることだけでは足りないのです。その当てはめの作法を知っていなければならないのです。
 すなわち、実務において罪証隠滅のおそれを検討するにあたっては、①罪証隠滅の対象、②罪証隠滅の態様、③罪証隠滅の客観的可能性、④罪証隠滅の主観的可能性の4段階に分けて検討するのが一般的であり、答案を書くにあたっても上記4要素を明示したうえで、それぞれについて当てはめることになります。
 このことは、刑事実務基礎対策としては常識というべきランクの知識です。
 しかし、こういった知識は刑事訴訟法の基本書には滅多にかかれていません。

 💎< はてはて、どうやって対策したらいいのかな?

 (具体的な対策法に移る前に、次節にて、どんな刑事実務基礎プロパー知識が出題されているのかの傾向を見ていきましょう。)

2. 刑事実務基礎の出題分野・傾向

 出題傾向を知るには、一にも二にも過去問を検討することが大切です。
 ということで、本稿執筆時点で直近の令和元年度の問題をみていきましょう。(問題文はこちらからダウンロードしてください
 (※過去問の解説はしません。解説本については後ほど紹介します)

 まず、設問1から。
 ここでは前節で取り上げた罪証隠滅のおそれの当てはめ作法について問われていますね。平成29年度から3年連続で出題されています。
 これでもかというほど、過去問で問われている知識を再度問うている傾向が見て取れます。令和元年度の問題を解くにあたっては、それ以前の過去問を通じて、罪証隠滅のおそれの当てはめ作法を身につけておくことが有用だったといえますね。
 しかし、過去問で出題されたことのある知識といえど、全く同じ形で出題されているわけではありません。令和元年度の問題で厄介だったのは、平成29年度のように60条1項2号の当てはめが問題となっていたのではなく、81条の接見禁止の要件を充足するかという形で、罪証隠滅のおそれの当てはめが問われていたという点です。
 去年に試験を受けていた私も焦りましたが、基本的には勾留の要件充足性を検討する場合と思考手順は同じですので、過去問を解く経験が活きたことは間違いないでしょう。
 (ただ、現場思考が少し必要でしたね。身柄拘束ではなく接見禁止を争っていたということで、その特殊性を考慮する必要がありました。どういった考慮を働かせる必要があるのか、みなさん考えてみてください。)

 次に、設問2を見てみましょう。
 設問2では、問題文中に示された証拠が直接証拠に該当するか否か、及び、結論を導く推認過程について問われています。これは、刑事事実認定についての理解を問うものであり、刑事実務基礎プロパーとしての対策が必要でした。(事実認定については民事実務基礎でも学ぶことなので、その理解を応用させれば解けなくはないですが……)
 このような出題も、最近の過去問でよく問われていたので、過去問にしっかりと取り組んでいた人なら難しくはなかったでしょう。
 (例えば、平成30年度の設問4小問(1)、平成29年度の設問2など。最近では毎年聞かれていますね。)

 そして、設問3について、一見して刑法の知識で答案を書けばいいように見えますが、2点ほど注意が必要です。
 まず、書くべきなのは”Aの弁護人としての主張”であり、答案を書くにあたっては、中立的な立場から問題提起をするのではなく、法的見解についての結論を頭出しすべきでしょう。これは、現場思考でなんとなく察せる範疇だと思います。今年以降の予備試験受験生も、過去問から学ぶべきこととして、こういった視点を持っておいたほうがよいでしょう。
 また、(これは細かすぎる指摘ですが、)被疑事実における「突いた」という表現をAの弁護人の主張の中で流用すると、Aの「偶然・・・当たり」という話との関係で矛盾してしまうので、「突いた」ではなく「当たった」と表現を訂正した方がよいでしょう。(私はローの講義で指導を受けたので書けましたが、この点を指摘できた人はほどんどいないと思います)
 以上の2点は刑事実務基礎プロパーっぽいですね。このような出題が過去問で出された記憶はないのですが、実務基礎科目で重要となってくる、当事者目線の起案という意識を、過去問を通じて身につけておけば、試験の現場で適切に答案を書くこともできたでしょう。

 設問4は、法曹倫理からの出題です。ここでは、Aの弁護人が、Aから被疑事実を認める旨聞いていたのに、公判において被疑事実の存在を否認する主張をすることが、弁護人として負う真実義務に反しないかということが問題となっています。刑事実務基礎プロパーの知識ですね。
 法曹倫理の出題は、かつて民事実務基礎科目の中でよく出題されていましたが、平成27年度の刑事実務基礎の中ではじめて出題されて以来、令和元年度で3度目の出題となります。
 出題実績こそ少ないですが、令和元年度で問われた論点は平成27年度の設問4で既に出題済みであった為、決して難しい問題ではありませんでした。

 最後に、設問5では伝聞法則についての処理について問われていました。しかし、受験生にとって少し難しい問題を含んでおり、一筋縄ではいきませんでした。
 設問前段では、「検察官が取調べを請求しようと考えた証拠を答え」る必要があります。単純に考えれば、問題文中に現れている「⑫ Bの検察官面前の弁解録取書」が、この証拠であると考えられるのですが、これは正解筋ではありませんでした。
 答案に書くべきだったのは、B自身の公判におけるBの被告人質問の内容が記載された公判調書だったのです。
 私は書けませんでしたね。問題文中に、公判調書が作成された旨の記載がないので、正解筋に辿り着くためには、設問を読んだ時点で「Bの公判で公判調書が作成されているはずである」と発想できた必要がありました。
 このような出題は、細かい刑事手続の知識を前提とするものであるから、刑事実務基礎プロパーに属する出題であったといえるでしょう。
 (なお、公判調書の証拠能力については、平成26年度の設問4で既に出題されていたので、過去問を完璧にしていた受験生は公判調書について書けたんですよね。私は過去問の検討が不足気味でした……)

 さて、令和元年度の過去問を概観してみたのですが、これまでの検討を総合すると、刑事実務基礎科目では、以下のような分野から出題がなされる傾向があるといえます。

①刑事手続の細かい知識(R元の設問1・設問5、H30の設問1、
                     H29の設問1、H26の設問4)
②刑事事実認定論(R元の設問2、H30の設問4小問(1)、H29の設問2)
③法曹倫理(R元の設問4、H27の設問4)
④その他(R元の設問3)

 なお、令和元年度より前の過去問についても、少し目を通してみます。
 平成30年度設問2は、公判前整理手続についての条文を当てはめる問題であり、上記①に該当します。
 同設問3では、公判前整理手続中の訴因変更の手続について問うもので、上記①に該当します。
 同設問4小問(2)(3)では、求釈明についての条文、尋問が重複するのではないかという指摘、共犯者の引き込みの危険について指摘する必要がありました。これらはいずれも、上記①にあたります。
 同設問5では、上記③のほかに、公判前整理手続後の証拠調べ請求についての条文の当てはめが求められており、上記①にあたります。
 平成29年度設問3は、公判前整理手続の条文の当てはめが問題となっており、上記①に該当します。
 同設問4は、刑事手続についての出題ですが、そこまで細かい知識について問われていませんので、珍しく刑事実務基礎プロパーからの出題ではありませんでしたね。
 同設問5は、翻って、細かい刑事手続についての知識が問われています。小問(1)は証人尋問についてのルールについての理解が問われていおり、上記①に該当します(去年の口述ででました)。小問(2)は、最判H23.9.14という判例の理解を答えられるかが問題となっていましたが、あまり法律基本科目としての刑事訴訟法の学習のなかで取り上げられることが少ない、受験生的にマイナーな判例であったため、上記①に該当すると言ってしまっていいでしょう。
 同設問6小問(1)は、普通に伝聞例外の条文を当てはめればいいだけなので、普通に刑事訴訟法の知識だけで解けるでしょう。ただ、小問(2)は、取調べの必要性について、(必要性が認められない場合を意識しつつ)検討することが求められており、上記①に該当するといってもよいでしょう。

 以上の通り、最近の過去問では、上記①〜③という分野の中から、刑事実務基礎プロパー知識が問われているという傾向があると見てとれます。
 そこで、次節から、そのような刑事実務基礎プロパー知識をどのように身につけるかについて説明しましょう。

3. 刑事実務基礎科目をどう対策すべきか

3.1. 過去問を解くべし

 刑事実務基礎科目の対策として何が最重要なのかは、ここまで本稿を読んでいただいた方ならわかると思います。
 そう、過去問演習が最重要です
 繰り返しになりますが、(民事も刑事も)実務基礎科目ではこれでもかというほど過去問で出題した分野からの再度の出題が相次いでいます。これは、出題者からの受験生に対するメッセージです。
 出題者は、過去問の中に、受験生に身に着けてほしい知識を詰め込んでいるから、これをまっさきに習得して将来の試験に備えてほしいということなんです。
 では、どの教材を使って過去問演習をすればよいでしょうか。法務省から公表されている出題趣旨は抽象的にしか書かれておらず、全くと言っていいほど参考になりません。
 そこで、過去問演習に最適な本として、以下の書籍を紹介します。

辰已法律研究所「司法試験予備試験 法律実務基礎科目ハンドブック2 刑事実務基礎〔第5版〕」(以下、「辰巳青本」といいます)

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 辰巳青本は、刑事実務基礎科目の対策本としては定番で、既に多くの合格者から紹介されています。暫く改訂されておらず、絶版になっていたのですが、2020年8月、新たに第5版が刊行されました。
 つい最近改訂されたということで、執筆時点で最新の令和元年度までの全過去問の解説が掲載されており、まさに今読まれるべき刑事実務基礎の対策本であるといえます。
 また、辰巳青本は、過去問の解説以外にも、出題が予想される①刑事手続・②事実認定・③法曹倫理の分野についての知識がまとめられており、まさにオールインワンのテキストといえます。
 刑事実務基礎科目は、主に本書を軸にして対策すべきでしょう。

 (9月16日訂正:青本には平成27年度までの過去問の解説が載っていないと書いていましたが、載っていたので訂正しています)

3.2. 刑事実務基礎科目のタネ本って知ってるかい?

 タネ本というのは、出題者が試験問題を作成するにあたって参考にしているであろう本のことを指します。
 過去問を解いていて、ナンジャコリャ!という問題が出た時、「どんな勉強をしていればこの問題が解けるようになるんだってばよ!」と思うことありませんか?
 それはですね、タネ本を読めばいいんですよ。(※過去問演習も大事ですよ)
 そして、刑事実務基礎科目でタネ本になっているのではないかと私が疑っている本がこれです。↓ 

下津・江口ほか「民事裁判実務の基礎/刑事裁判実務の基礎」


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 この本も、既に紹介した辰巳青本と同様、刑事実務基礎対策に有用な本として、多くの合格者から紹介されてきました。もっとも、この本が発売されたのが2014年と古く、平成28年刑訴法改正に対応していないなどといった理由から、最近はあまり紹介されることが少なくなってきたように思われます。
 しかし、本書を読む意義は未だ失われていません。タネ本ですもの。
 (言い方を変えれば、本書ほど刑事実務基礎を学ぶのにうってつけな本がほかにないのです。)
 では、なぜ本書が刑事実務基礎科目のタネ本であると私が言っているのか、その所以をお話ししましょう。

 私が最初に目をつけたのは、平成25年度の過去問でした。
 この年は、初めて、"罪証隠滅のおそれ"の当てはめ作法が問われた年です。
 この問題を見たとき、私は不思議で仕方ありませんでした。
 「当時の受験生はどうやって、罪証隠滅のおそれの当てはめ方を勉強できていたのだろう」と思ったのです。
 正解は↓です。この記事を読めばよかったのです。

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 これは、本書の元となった法学教室の連載です。罪証隠滅のおそれの当てはめにおける4つの考慮要素について、バッチリ解説されています。
 これが掲載されたのが、2012年(平成24年)の5月号で、罪証隠滅のおそれについて初めて出題されたのが平成25年の7月ですから、そうこうことなんです。
 予備試験で刑事実務基礎科目を設けてみたはいいものの、受験生に読ませるべき刑事実務基礎プロパーの教科書が不在であったため、法学教室でこのような連載が開始され、その一年後にこの連載に関連した問題が出題されたということなんじゃないかなと推察しています。法学教室ってそういう雑誌なんですよ。
 そして、その連載を単行本化した本書は事実上の国定教科書と呼んでも過言ではありません。

 以前、工藤北斗先生やらが「雑誌の連載なんてすぐには読まなくていい」みたいなこと言ってたじゃないですか。確かに橋爪連載なんかはタネ本ですが後回しでいいとは思います。しかし、(当時は)この連載を読むことがマストでした。
 雑誌連載だからなんでも読まなくていい、ということではありません。

 さらに、この連載を元に書籍化された本書は、今でもタネ本としての地位は揺らいでおりません。
 例えば、平成30年度の設問4小問(3)では、共犯者の供述における引き込みの危険について言及する必要がありましたが、実際に試験を受けていた私はお恥ずかしながら引き込みの危険を知らず、そのことを答案に書けませんでした。
 引き込みの危険って、刑事訴訟法の基本書にはチラッと書いてあることもあるものの、あまり強調されていないことが多いので、印象に残りづらいのです。
 しかし、本書には刑事実務基礎プロパー知識として、キチンと書かれています。法律基本科目としての刑事訴訟法では影が薄い知識でも、刑事実務基礎科目において特に身につけておいてほしい知識として、本書に書かれていたということなんです。
 また、他にも、平成30年度設問4小問(2)において問われている求釈明の理由や、平成29年度設問4小問(2)における証拠調べの必要性に関する議論は、いずれも実務的で受験生にとっては難しい問いではあるのですが、本書にはちゃんと解答をするのに必要な知識が書かれているのです。わざとらしいくらいに書いてあります。
 令和元年度の問題は、ほとんど過去問の知識だけで解けるような問題で、あえて本書を読むまでもありませんでしたが、今後、過去問で未出題の領域から問題を作ろうとなった場合、本書に書かれていることをベースに問題が作られることが予想されますので、令和2年度以降の予備試験受験生に読んでいただきたい一冊です。

 なお、先に述べた通り、本書は平成28年刑訴法改正に対応していませんので、注意が必要です。そこでオススメしたいのが、「刑事訴訟法 平成28年改正」と検索して出てくる、刑事弁護ビギナーズの「2016年改正刑訴法成立に伴う注意点」というPDFです(直リンはしませんので、各自で調べてください)。また、辰巳青本と並行して本書を読むのでもよいでしょう。

3.3. 事実認定と法曹倫理を強化したい人が読むべき本

山本悠輝「刑事実務基礎の定石」

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 こちらの本も定評がありまして、「この本さえ読めば刑事実務基礎科目は完璧だ」という人もいるくらいです。しかし、本書は網羅性に欠けるので、この本だけで十分とはいえないでしょう。
 ただ、取り扱っている事項は少ないとはいえ、書かれている内容は非常にわかりやすく書かれており、また、(試験に使えるかは別として、)実務に関するTipsが多く書かれており、読んでいておもしろいです。
 試験との関係でいえば、「Ⅰ 理論編─事実認定」と「Ⅳ 法曹倫理」がわかりやすく書かれているので、事実認定論と法曹倫理に苦手意識があるという方には本書をオススメします。
 私も、事実認定論に関しては本書を読んで理解を深めました。刑事事実認定についての理解は、刑事実務基礎科目のみならず、法律基本科目としての刑事訴訟法の答案を書く中でも役に立つので、ミッチリやっておくにこしたことはありません。

3.4. 念のため、百選も読めたらいいかもね

井上ほか編「刑事訴訟法判例百選 第10版」

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 正直、百選を読むことがマストとは思えないのですが、ある過去問が百選を読めと叫びたがっているので仕方がないのです。
 その過去問というのは、平成29年度設問5小問(2)のことです。既にこの問題については軽く触れましたが、最判H23.9.14という判例の理解を覚えていることを前提に解答を書かせるという問題でした。
 この判例、実務上は超重要な判例らしいのですが、かなり細かい刑事手続について判示するもので、ほとんどの受験生がこの問題意識に触れられていませんでした(まともに正解筋で書けている再現答案を見たことがないくらいです)。
 じゃあ、なんでこんな細かい判例の知識を刑事実務基礎科目で問うてもいいだろうと出題者が思ったのかというと、この判例、実は10版からの百選掲載判例だったんです。つまり、百選に載っている判例なんだから、この判例の知識を問う出題をしたって文句ないよなと、出題者はそう思っているに違いありません。
 とはいえ、平成29年度以来、このような細かめの判例知識を聞いてくるということはみられません。受験生の出来が悪すぎて、出題者も懲りたのでしょうか。(過去問で一度問われてしまった最判H23.9.14の知識は再度の出題可能性があるので要注意です)
 もっとも、百選掲載判例の中には、最判H23.9.14の他に出題可能性がある判例がいくつかありますので、百選に目を通しておくに越したことはありません。(例えば、百選57事件なんかは怪しいですよね)
 また、法律基本科目としての刑事訴訟法の出題傾向として、近年では、百選掲載判例をベースにした事例問題が出題されていることがよく見られているので、百選を通読することは刑訴にも刑実にも効くということで一石二鳥のやり得ともいえますね。


★刑事実務基礎対策はこれを読め!(忙しい人向け)★

①辰已法律研究所「司法試験予備試験 法律実務基礎科目ハンドブック2 刑事実務基礎〔第5版〕」

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 まずは、この本で過去問演習をしましょう。わからないからといって、後回しにしてはなりません。わからなければすぐに解説をみればいいのです。過去問をインプット教材として使いましょう。
 本書では、平成23年度から令和元年度までの9問の過去問が掲載されています。この中でも特に優先順位が高いのは、直近の3年分です。
 ある程度、過去問演習ができたら、上記①の本の過去問以外の部分についても読んでみましょう。分量が多くて大変かもしれませんので、下記の②の本を読みつつ、本書を参照程度に目を通すという使い方もよいかもしれません。

②下津・江口ほか「民事裁判実務の基礎/刑事裁判実務の基礎」

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 ①の青本を読むのと並行して本書にも目を通してみましょう。2014年(平成26年)に出た本なので、平成28年改正などに対応していない点に要注意ですが、それでも本書は受験生が読むべき本であるといえます。
 予備校の実務基礎講座を取らないのであれば、本書はマストなんです!!

③山本悠輝「刑事実務基礎の定石」

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 本書は余裕があれば読むべきという本です。
 特に読むべきは、「Ⅰ 理論編─事実認定」と「Ⅳ 法曹倫理」の箇所です。
 網羅性に欠けますが、類書よりもわかりやすいです。

④ 井上ほか編「刑事訴訟法判例百選 第10版」

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 上記の①〜③の本に比べると優先度は落ちてしまいますが、刑訴百選に掲載されている判例の知識は、細かいものであっても覚えていたほうがベターであるといえます。法律基本科目としての刑事訴訟法の対策にもなりますから、一石二鳥だともいえますね。


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【令和最新版】続・予備校は教えてくれない刑事実務基礎の対策法


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