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澤村徹さんの「CMOSセンサーに心が写ると信じているのか?」を読んで

ガジェットファンの皆さん、ようこそ『俺流トラベルガジェットの世界』へ。
今回は趣向を変えて、一冊の本を紹介します。

まずタイトルがいい

先日、オールドレンズの第一人者として知られる澤村徹さんの新著「CMOSセンサーに心が写ると信じているのか?」を手に取りました。

そのタイトルを見て、思わず「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」を思い出しました。最近の澤村さんはAIに絡んだ作品づくりが印象的で、このタイトルにも現代的な技術への考察が込められているのではないかと、想像していました。

言葉が紡ぐ70枚の写真

「CMOS」という無機質なセンサーと、「心」という最も人間的な要素。この一見相反する二つの言葉が織りなす対比に思いを巡らせながら、ページを進めていきました。しかし、そこで語られていたのは、カメラというレンズを通して覗き見る、澤村さんの人生の遍歴でした。

70編のエッセイは、カメラのシャッターを70回切るように、澤村さんの人生の様々な瞬間を切り取っています。そこには、奥様の笑顔、初めて買ったデジタルカメラ、お母さんとの温かな時間、仲間たちの姿、学生時代の思い出、落ちていくライカw など、人生という名の写真集が広がっていました。

驚きの発見

しかし、読み進めるうちに気づいたことがあります。タイトルに「CMOS」というカメラの心臓部とも言えるセンサーが登場するこの本に、写真が一枚も掲載されていないのです。

その瞬間、私はハッとしました。これこそが澤村さんの真意なのでしょう。
言葉だけで心の風景を鮮明に描き出す—それは、最新のCMOSセンサーをも超える、人間の心という究極の「センサー」の力を示しているのです。

各エッセイは、精緻な言葉の選択と巧みな表現によって、私の心に直接イメージを投影します。それは、デジタルセンサーが光を電気信号に変換するように、澤村さんの記憶と感情を我々読者の心に焼き付けていきます。

10年前への扉

そんな思いに浸りながら読み進めていると、ある三篇のエッセイが目に留まりました。

「オールドレンズ遊び」「約束の地」「悲しきニコン1」

このエッセイが、私を十数年前に引き戻しました。

当時、私はiPhoneに一眼レンズを装着するガジェット開発に明け暮れていました。そこに欠かせないツールが、マウントアダプタとマニュアルのオールドレンズでした。

澤村さんが当時出版していた「オールドレンズライフ」や「オールドレンズパラダイス」は、私にとって貴重なリファレンスブックでした。

この三篇のエッセイには、その書籍を書いていた頃の日々が描かれているのでしょう。それは、私の記憶と澤村さんの記憶が、時を超えて交差する瞬間でした。(わたしはニコン1を買ったのですがw)

私がライカユーザーになった理由

こうやって、この本を読み進めるうちに蘇ってきたのは、十数年前に始まった私の写真遍歴でした。

2016年、勇気を出して澤村さんにお会いしたことが、私の人生に大きな変化をもたらしました。そして、その出会いをきっかけに、香港、中国、ベトナムでのフォトツアーを企画し、ご一緒する機会を得たのです。

これらのツアーで出会った澤村さんや、ご参加いただいたカメラファンの方々との交流は、私の写真への情熱をさらに深めてくれました。

https://metalmickey.cocolog-nifty.com/blog/2016/05/turtleback-bbb0.html

そうするうちに自然な流れとして、私は徐々にライカユーザーへと導かれて行ったのです。(半ば強制?)

終わりに

振り返ってみると、十数年前の一つの行動が、こんなにも豊かな経験と人とのつながりをもたらすとは想像もしていませんでした。
ガジェット好きだった私が、カメラと写真を通じて多くの人々とつながり、自分の視点で世界を切り取る喜びを知りました。

澤村さんの新著は、私にとって単なる一冊の書籍ではなく、十数年の軌跡を振り返るきっかけとなりました。

ガジェットは日々生み出され、技術は日々新しくなります。しかし、それらを通じて私たちが求めているのは、変わることのない人間の感性や、心の機微なのかもしれません。

これからも、最新のガジェットと古きよき伝統が融合する世界で、新たな出会いと発見の旅路を続けていきたいと思います。

それでは今回の「俺流トラベルガジェット」最後までお付き合いいただきありがとうございました。
次回もまた旅と技術の交差点でお会いしましょう。

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