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たまごごはんの無職生活 その4-暇人は考える

 ワタシはとりとめもなく色々なことを考えることが好きだ。好きだというより自然と考え事をしているという方が正しいかもしれない。日本に住んでいた頃から移動手段に自転車を使うのでその際の思考はいいものが出てくることが多いし、日々の効率を高めるのに役立つことも多々ある。
 仕事に向かう場合は一日のプランを組み立てて何から始めるかToDoを頭の中で書き出す。帰りはその日のやり残した仕事とか明日のToDo、コンペの最中とかだとデザインのアイデアをつらつら考えたりする。目的地にたどり着いてから忘れないうちにとメモをとったりすることもある。ここ数年でいつも手描きというスタイルでノートを持ち運んでいたけどだいぶデジタルに移行した。デザイナーあるあるで決まりのノートとペンがあるのね。

  普段使いの最近はこれ。以前はMUJI専門だったのだけど頂き物でもらって使ってみたらしおりがあるのとバンドがついているのが便利ですっかりこれ。方眼紙版もあるけど個人的には無地が使いやすい。

 デジタル版で使うのがこれ。ずーっとアナログ派だったのだけど、会議とかワークショップのあとで手描きのメモをあとで打ち直す無駄に気づいてからは使うようになった。保存しないでも残るのが最初はおおって感じだったなぁ。

 無論自転車を漕いでいるわけだから頭の半分くらいは前方確認したり前から後ろからやってくる車なんかを認識したりしているからいわゆるディープシンキング、熟考ではないがそのながら思考が不思議と新しいアイデアを生んだり忘れていたことを思い出したりというのに向いているようで。
 あんまり大声では言えないけれど、1杯引っ掛けて(実際は数パイント)自転車を漕いで帰るときなんかは我ながらスバラシイ考えが思いつく。こうすればみんな幸せになれるぞーとかこんなすんごいコンセプトは絶対勝つぞーみたいな。まぁ実際は翌日には思い出せもしなかったり、なんでこんなアイデアがスバラシイんだか…みたいなこともよくあるが、それでもいいものが浮かぶこともある。おそらく普段使わない脳を使ってるのかね。

フルタイムから週3勤務へ
 仕事を辞める半年前、コロナでロンドンがロックダウンになってみな強制リモートワークになったさいに会社側からフルタイムから時間を減らして働くとか無給休暇を取ってみませんかてきな話があった。数年前から退職がちらついていた身としてはこれ幸い、リストラがやってむるのもはっきり見えていたので週3勤務を願い出た。その企みはいくつもあって。

・日々遅くまで働く、もしくは週末に働くのを阻止したい
・今後の事を考える時間が欲しい
・リモートワークでフルタイムは絶対にキツイ
・コロナ下、他のいろいろな人がいろいろな環境や状況でどうやって対応しているのか知りたい
・相棒も同じくリモートワーク。ストレス満載な環境下、普通にご飯を作ったり気分転換できるだけの時間が欲しい

 という感じ。恐ろしく目減りした月額の手取りを見た時のショックを除けばよい決断だった。

 まずは興味のあるウェビナーに片っ端から出席した。ちなみにウェビナーとはセミナーのウェブ版のこと。これがコロナ以後ものすごくポピュラーになった。最近ではオンとオフ、実際に参加もできるしオンラインでもできるという試みが進んでいてこれもまた面白い。

 最初のころで面白かったのが自分の会社のもの。表現が悪いのを承知で言うと、元々アメリカの設計事務所が成長したところでアラブマネー(いわゆるデベロッパー)に買収されて、さらにグローバル化を図ったビジネスがヨーロッパの設計事務所を取り込んだような形態で成り立っているおかげで世界の主要都市に事務所がある。
 その上自身が所属するオフィス設計部だけでなく都市計画から学校、病院に高層ビルまでいろいろな形態の建築とインテリアを網羅しているからコロナを議題に幅広い事例がオンタイムで動いている。それを事務所側も把握していてテーマ別に世界からあちこちの事務所の専門家を引っ張ってきてそれぞれどんな取り組みをしているかを話すというシリーズがあった。スピーカーの話を聞きながら久々におおおおおぉとコーフンしてノートを取ったのは本当に久しぶりだった。そしてそこから派生するアイデアを練るのも楽しい。

 それまではもともとイギリスの、それもほとんどロンドンがメインのオフィス設計がほとんどだった自分にとっては世界が開けるような興奮があった。奇しくもその仕事柄、コロナが与える影響は自身だけでなくクライアントから設計の内容まで大きく影響がある。それこそ当時のクライアントが聞くことと言えば、
「今後のオフィスはどんな感じなの?」
「他のクライアントはどうやってるの?」
 ばかり。しかも彼らは彼らでそれぞれのソースがあるから下手なことも言えない。そこで事務所内の他のチームがどうやってるか、他の都市のチームがどうやってるかを知ることでアイデアが広がってくる。普段はとてもそんな時間の余裕のあることはできないが、聞きながらもクライアントもまだ誰も正解に行きついていないことも知っている。そんな中であーだこーだとそれぞれの意見を話し合ったりと何かと脳みそを使う仕事が増えた。

 今後会社はどうやってその環境を労働者に与えるのか、何をもってよしとするのか、どうやって正しく評価するのか、はたまたどうやって優秀な新しいスタッフを引き寄せるか。
 ロンドンでそこそこ大手企業を相手にオフィス設計をしているがフルタイム1人に対してデスクを1つ設ける、という考えがスタンダードではなくなってきて久しい。じゃあ5人に対してデスクが4でいいのか3でいいのか。それに加えてオフィス勤務が週4になった場合はデスクがいくつ必要なのか。それらを誰がどう管理するのか。

 じゃあじゃあ会議室の大きさはとか1人もしくは2人専用のブースはとかオープンスペースの長テーブルがあればデスクが見つからない場合に有効だとか、コロナより前に進めてきたアイデアが一気に具現化していく。以前は効く耳も持たなかった相手も支出と人材のバランスをとるための解決法を見出そうと必死だ。

 そんなわけで週3勤務の半年は実際の純粋な労働時間は減ったが考える時間はずいぶん増えたように思う。そのおかげで自分が考えること、学ぶことが楽しいということにも気づかされた。それとともに週3といってもきっちり週3日限定でそれぞれ7.5時間というわけではなく、日によって4時間だったり5時間だったりとプライベートのスケジュールにも合わせてバランスを合わせるというスタイルも見つけた。厳密には週5に近い労働時間であったことも否定しないが、それ以前が週7だったことを思えばまぁ、よしとすべきか。哀しいかな設計業界、とくにインテリア設計はブラックがデフォルトだ。

無職になった自分の考えたこと
 退職してからはさらに考える時間は増えた。ノートパソコンが届いて最初にしたことの一つはアウトルックを入れて予定を入れること。スケジュールになにかが入っていないことに慣れていないのだ。実はこの病気は今も続いていてToDoをアウトルックに入れている。
 まず考えたのがいかに日々を、週を有意義に過ごすか。稼いでもない身でなにを言ってるんだという気もしつつ、額縁づくり、ジム、ポートフォリオ、ウォーキングなどの予定で埋めてみる。いやむしろ何かをするには資金が必要で、それらのいちいちに納得してお金を投資せねばならないから有意義な時間を過ごすということはこれまで以上に重要だったかもしれない。
 そしておのおのの予定で具体的に何をすべきかを考える。ダイエットならメニューを、メニューを大雑把に考えたらどのスーパーでなにを買うのが金銭的に効率的か、カロリー消費が多いかを考える。健康にいい素材とか調理法を調べてまた考える。
 まぁ考えることの多いこと。それらを3週、4週する頃にはようやく落ち着いてきて、さあじゃあ自分の今後を考えるかというところに至った。
 で、自身のキャリアマップを考えようとまずどんな方法があるかを調べて考えたのである。

 つづく


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