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G-Lon note#2 ICT教育の進化論 ~ICTって何の略~

コロナの影響もあり,学校業界では,一人一台情報端末が急速に進み,ICT教育の必要性が叫ばれています。しかし,一つ懸念をしているのが,ICTは1つの「手段・方法」です。「行き先」がなければジェット飛行機を手に入れても維持費にお金がかかるだけです。その「行き先」について持論をお届けしようと思います。

ICTって何の略?ICT version1.0

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正解は「Information and Communication Technology(情報通信技術)」ですね。やはり情報をやりとりする手段なんですね。私も,黒板に教科書を写して説明や,教科書につっこみを入れたり,問いをなげかけたりしています。ここでメリットは3つ,
➀私が板書の時間,生徒が模写する時間を省き,その分を生徒の活動時間を増やすことができる
教師が教科書(教材)と生徒の間に立つことができる
③(生徒一人一台端末を持てば)コミュニケーション方法が増える

➀板書の時間は,生徒に背中を向けて生徒の様子も見えないし,生徒は下を向くから,どこで分からなくなったのかを観察できません。黒板に提示すると黒板に書き込めるし,生徒の顔が上を向きます。生徒がノートを書きながら考えることはあるかもしれませんが,それなら教科書に書き込めばいい。私は50分の授業で先生が話す時間はできるだけ10分程度に収めたいと思っています。ちなみに,世界一人気のあるミネルバ大学の教授陣も10分程度しか話さないそうです。

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②「先生」対「生徒」だったのが,「教材」と「先生」と「生徒」という三角形で教材を考えられることはメリットです。(下の図で言うとSTEP2のイメージ)「教科書にこう書いてあるけどなんで??」「教科書の解き方以外に別解はないかな?」のような声掛けがしやすいですし,正しいことしか書いてないであろう「教科書を疑う」ことは批判的思考力にもなると思います。

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③(生徒一人一台端末を持てば)授業中で生徒の発言や意見をコメントで同時に発言したり,クイズ番組みたいな授業ができたりします。これまでは全員の意見を聞くには時間がかかりすぎるし,恥ずかしい生徒は発言できず,声が大きい元気な子の意見ばかり反映したりとなかなか全員参加が叶いませんでした。
提出物もデジタルでやりとりすることも可能になるので,リアルタイムに先生がコメントできたり,生徒同士でコメントし合ったり,「対教師」「対生徒」「対学校外の方」ともコミュニケーションができることです。

ここまでは想像ができるとおもいますが,ICTはさらに進化していきます。

ICTって何の略? ICT version2.0

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生徒が一人一台情報端末を持つ場合,「Create(創る)」ことを組み込んだ授業のデザインが必要だと思います。これは第17回問い立てラボで経済産業省の浅野大介氏が言われていた言葉ですが,

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「文部科学省の主体的・対話的・深い学ぶは,経済産業省未来の教室では「創る⇄知る」である。」第17回問い立てラボ

なるほど,何か創ろうとすれば知らないといけない,知ればそれを使いたくなる,そんな循環をデザインする授業づくりが大切なんだと私はとらえました。「創る」とは,成果物を作ることもあれば,他者に発表する,書き綴る,さまざまなOutput(発信)だと思います。そこでICTではトライandエラーをしやすい,創りやすい環境にあると思います。分かりやすい例で,手書きで作文する場合,途中で誤りを訂正したり,順番を入れ替えたりが面倒だが,デジタルではエラーしても次にまたトライしやすいということです。

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 田村学(第8回問い立てラボ ご登壇)

具体的に「創る」とは,
数学以外の創るに関しては私の憶測が入っていて怪しい持論ですが,
●「国語の朗読にBGMをつけよう」・・・音として表現するにはしっかり文章を理解しておかないといけないと思います。音楽にも横断しますね。
●「化学式をイラストで表そう」・・・燃えやすいのか,水が生成されるのか,何色なのか,を分かっていないと絵にはできないはず。
●「映画の字幕をつくって,プロの翻訳家と比べる」・・・英語も国語の語彙力も試されそう。

数学に関しては,また別の記事を作ります。

ICTは「創る」ための一つの手段であって,必ず使わなければいけないわけではありません。
 例えば手紙を書くというOutputでも,生徒にどちらが相手に喜んでもらえるだろうとか生徒が考えて判断し,作成したらいいと思います。「手書きの方が温かみがあっていい」という生徒もいれば,「写真やイラストを入れたいから」とデジタルの手紙を選ぶ生徒もいれば,デジタルで打ってから手書きに直す生徒もいることでしょう。

※注意:ICTを使うことが目的になってませんか?


「創る」デザインの授業は,あくまで目指すべき指標のようなもの。例えるなら,「あの山の頂上昇るぞ」という目印のようなもの。なぜあの山に登るのか?上るとどんなメリットがあるのかの「目的」が大切です。その「目的」は,子供たちが社会で幸せに生きるための資質能力を身に付けるためだという原点に立ち返る必要があります。

 (教育の目的) 第一条 教育は,人格の完成を目指し,平和で民主的な国家及び社会の形成者とし て必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければなら ない。教育基本法 第一章 教育の目的及び理念(教育基本法 第一章 第一条 教育の目的)


まとめると,この順番を誤ってはいけません。「ICTを使った授業しています」と掲げている授業や学校は,私はすこし注意してみています。


さて,実技科目ではどうでしょうか。調理実習している家庭科や,成果物が現れやすい芸術の授業,もうすでに「創る」授業のデザインです。ICTは必要ないのでしょうか。そこで最後の進化論です。

ICTって何の略? ICT version3.0

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「Toi(問い)」や「Tankyu(探究)」という意味が加わってきます。(ちょっと強引でしょうか(笑))
他教科の例をあげると甚だ怪しい持論なのですが,(数学のことは別の記事で書きます)

●【家庭科】「500円以内で誰々のための料理を作ろう」というテーマでも調理をする。すると栄養のこと,病気やダイエットのこと,予算のこと,さまざまなインプットが必要になるのではないでしょうか。子供たちはキャベツが何円くらいか知らないのではないでしょうか。キャベツ1玉買うとずいぶんと余る失敗もしたらいいのではないでしょうか。

●【美術】「寂しくなった商店街を華やかに盛り上げる絵をみんなで作ろう」・・・町の現状,商店街の方の声,社会の動きが同時に学べるのではないでしょうか。

●【音楽】「癒し効果のある音を作ろう」・・・落ち葉を踏む音,川の流れる音,鳥のさえずりなど,どの川がいい音の条件なのか,どの鳥が癒し効果があるのか,理科とも横断し,身の回りには音で溢れていることにも気づくことでしょう。

探究の3つの分類

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上の私が考えたアイディアでは「家庭科と美術が『1.課題解決型』の探究」で「音楽が『3.創造型』の探究」という分け方でしょうか。
また同じ著書でこのようにも述べています。

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生徒には,思う存分問いを探究するためのICTであってほしいですね。

G-Lonのまとめです。


ICTは,「Communication」のツールに加えて,「Create」するためのツールへと進化している。さらに,「Toi(問い)やTankyu(探究)」ができる授業デザインへと進化する必要がある。
教育の目的である「社会で幸せに生きる資質能力を身に付けるため」に授業を進化させる必要がある。


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