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「能登半島地震における避難所トイレの被災状況調査」の結果

日本トイレ研究所は、公益社団法人日本医師会・公益社団法人石川県医師会・公益財団法人日本財団の協力を得て能登半島地震における避難所トイレの被災状況調査(避難所21か所)を実施しました。
※調査結果はこちら「能登半島地震における避難所トイレの被災状況調査」

2024年1月1日の能登半島地震において、上下水道等が甚大な被害を受けたことにより、水洗トイレは使用できない状態となりました。水洗トイレが使えなくなり、不衛生なトイレになると、集団感染や災害関連死などの深刻な事態を引き起こします。トイレ対策は、命と尊厳にかかわるため、緊急事項として位置づける必要があります。
今回の結果を踏まえて、個人・地域・自治体等の災害時のトイレ対策が進むよう、日本トイレ研究所では啓発活動を継続していきます。
 
調査結果の主な内容を以下にお伝えします。

調査概要

目的:被災状況、災害用トイレ等の設置・充足状況等を把握し、避難者が安心してトイレを利用できているか把握すること
実施日:2024年2月10日~2月11日、2024年2月24日~2月25日
調査方法:避難所等の現場確認および運営担当者等にヒアリング
調査対象:輪島市内避難所 12か所、七尾市内避難所 9か所

発災当初の携帯トイレの使用状況90%

発災当初に携帯トイレを使用していた避難所は90%で、これまでの災害と比較して、携帯トイレが多く使われていました。

※携帯トイレ:断水や排水不可となった洋式便器等に取り付けて使用する袋タイプのトイレを指します。

NPO法人日本トイレ研究所「能登半島地震における避難所トイレの被災状況調査」より

調査時点で携帯トイレを使用していた避難所は38%でした。調査を実施したのが発災40~50日後でしたが、断水等の影響で1か月以上も携帯トイレを使う必要がある状況が続いていました。
一方、断水が続いていても携帯トイレを使用していない避難所もあり、外部から調達した水でバケツ洗浄を実施したり、仮設トイレを中心に使用したりしていました。

NPO法人日本トイレ研究所「能登半島地震における避難所トイレの被災状況調査」より

発災当初の簡易トイレの使用状況は57%

発災当初に簡易トイレを使用した避難所は57%と、半数以上の避難所で発災当初に使われていました。
屋外トイレを利用できない人や、何らかの症状がある人のための専用トイレとして使用されている事例が多くみられました。
 
※簡易トイレ:持ち運び可能な便座部分を備えたもので、機械的に密閉するタイプや携帯トイレを取り付けるタイプなどがあります。

NPO法人日本トイレ研究所「能登半島地震における避難所トイレの被災状況調査」より

過去の震災と同様に便器から排泄物が溢れるなどのトイレ問題が能登半島地震でも深刻化しました。
現場の努力により、屋内のトイレの衛生状態をリカバリーして、携帯トイレや簡易トイレなどを積極的に活用する避難所もありましたが、これらを初めて使う人も多く、使用方法の周知等が徹底できないことで、不衛生になってしまった避難所もありました。

仮設トイレの設置まで要した日数 「4~7日」が50%

仮設トイレの設置日がわかっている10か所のうち最も早く到着したのは1月3日で、1週間以内60%、2週間以内30%、15日以上10%でした。
 
仮設トイレは、主に建設現場で使用されているトイレなので、災害が起きたときにすぐに来ないことが想定できます。被災地域に必要な台数はありませんし、道路が寸断されていると、運搬することができません。
 
しかし、過去の災害では3時間以内に4割の人が、6時間以内に7割の人がトイレに行きたくなったというデータがあります。仮設トイレはもちろん必要ですが、発災後、すぐに使用できるトイレ(携帯トイレ・簡易トイレ・マンホールトイレ・仮設トイレ(組立式))を備えておくことが必要です。
今回の調査でも、発災当初は野外排泄をせざるを得なかったという避難所もありました。

NPO法人日本トイレ研究所「能登半島地震における避難所トイレの被災状況調査」より

仮設トイレの和便器率85%

調査対象となった避難所に設置された仮設トイレの85%が和便器でした。

NPO法人日本トイレ研究所「能登半島地震における避難所トイレの被災状況調査」より

高齢化率が約50%の奥能登においては、ニーズのミスマッチが起きていました。仮設トイレの利用に際し、高齢者が転倒し怪我を負った事例もありました。
和式トイレのうち23%はアタッチメントを取り付けることにより、簡易的に洋式化されていましたが、空間が狭くなることや、ペーパーホルダーと足踏み洗浄ポンプの位置が不便になることにより、使用や清掃がしづらい状態でした。
 
防犯・衛生面では、男性用と女性用のトイレの配置が区分けされていない(レイアウトが配慮されていない)、照明が設置されていない、手洗い設備が不十分であるなどの課題も多くみられました。災害が起きてから設置場所や環境整備を検討していては間に合わないので、事前の計画作成が不可欠です。

NPO法人日本トイレ研究所「能登半島地震における避難所トイレの被災状況調査」より

さらに詳しい調査結果はこちらのPDFをご覧ください。
「能登半島地震における避難所トイレの被災状況調査」