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【特許法】第99条 当然対抗制度 〜「キュウキュウだと当然対抗する」

 今回は、第99条 当然対抗制度について触れたいと思います。

■語呂合わせ

99条 当然対抗制度

 キュウキュウだと当然対抗する

(解説)
満員電車で押されると、当然に対抗したくなります。

■内容

 ライセンシー保護の条項です。

 特許権の譲渡に伴う、特許権転得者への対抗制度です。特許権が誰かの手に渡っても、通常実施権が維持されるというものです(下図)。特許権者が専用実施権者の場合も、同様です。

         許諾
  特許権者   →→ 通常実施権者
   ↓譲渡       ↑維持↓対抗可
  特許権転得者 →→→→→

 通常実施権の登録制度がなくなり、登録が転得者対抗要件でなくなったため、改正された条項です。なお、これの仮通常実施権版が、38条の5(仮通常実施権の対抗力)にあります。

 事業撤退などで、特許権が売買されることはあり得る話ですね。売買されたときにライセンシーが実施不可にならないように、という話です。

 特許を買う側にとっては、通常実施権が付いていると気味が悪そうです。登録制度がなくなってしまったので、通常実施権者が居るか居ないかについては、特許権者にヒアリングするしかないようです(下記リンク)。


〈余談〉

 似た話として、通常実施権の譲渡の場合があります。こちらは民法となっています(民467、債権の譲渡の対抗要件)。

 例えば、通常実施権者Aが、特許権者等の許諾の上で、実施権を譲渡した場合です。

 新しい通常実施権者aが、特許権者に対抗するには、Aから特許権者に「aが通常実施権者ですよ」という通知してもらう必要があります(民467第1項、下図)。

       許諾     譲渡
 特許権者等 → 通・者A → 通・者a 
  ↑            ↓対抗可
  ↑←←←←←←←←←←←←←

 また、第三者への対抗には、通知に確定日付が必要です(民467第1,2項、下図)。 

       許諾     譲渡
 特許権者等 → 通・者A → 通・者a 
               ↓対抗可  
               第三者

まとめ
     譲渡対象 対抗先    条件
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 特99  特許権 特・者、専・者 なし
 民467① 通   特・者等   通知
 民467② 通   第三者    通知・確定日付

※参考:江口裕之『解説特許法』、p518-520


■条文

特許権の移転に関する対抗力

(通常実施権の対抗力)
第九十九条 通常実施権は、その発生後にその特許権若しくは専用実施権又はその特許権についての専用実施権を取得した者に対しても、その効力を有する。

参考 民467 通常実施権の移転に関する対抗力

(債権の譲渡の対抗要件)
第四百六十七条 債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。

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