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P&Gを辞めた、エリートを目指すのをやめた

※この話は、2014年当時の回顧録です。今の働き方や、周りの環境とは大きく異なることを書いています。あらかじめご了承ください。

「P&Gを辞めたときの話をしてもいいかな」と、思えたのは、やっと今年になってからでした。私は2012年に新卒でP&Gに入り、マーケターとして働いていました。2年後に退職し、独立。現在はライターとして活動しています。

2社目もいい会社だったと個人的に思っているのですが、新卒からの知名度がいかんせん限られる会社でして、時には「どうしてP&Gを辞めて、そんなところへ転職したんですか?」と失礼極まりない質問を学生からいただいたこともあります。

そう。でも確かに、世間体を考えるならP&Gに残る一択でした。ではなぜ、P&Gを辞めたのか。それも、起業でもMBAでもなく、エリートっぽい人生をかなぐり捨てて。その話を、今日はさせてください。


P&Gという宗教


まず、P&Gという会社を当時から、そして今も続けて思うのは「あんなに特殊な場所はなかった」という感想です。ライターとなって多くの会社を取材させていただき、何社も常駐案件を経験し、そして思うのは「いやあ……あそこは変な会社だったよ。すごい会社だったけど」という一言です。

私は、P&Gが一種の宗教であったと思っています。そして、宗教らしさが会社が繁栄するためで必須の条件であることは、名著『ビジョナリー・カンパニー』でも語られています。

実際、新興宗教に親族の影響で入らされていた経験と比較しても、あそこは宗教であったと言える共通点がありました。それは、

  1. 極端に多い、社内でしか通じない専門用語

  2. 都心から離れたオフィス立地で社員の結束を強化させる

  3. 誰もが唱えられるパーパス・バリュー

  4. 自分たちは選ばれたエリートだという意識

これら4つです。

極端に多い、社内でしか通じない専門用語

P&Gには専門用語が大量に存在します。しかも、それらはマーケティング用語ではなく「会社内でしか通じない用語」です。
たとえば、P&Gでは頻繁にKBDという単語があります。ロシアのKGBじゃありません。Key Business Driver(キービジネスドライバー)です。

すなわち、「ある商品の売上・利益を最大化するうえで、もっとも重要な指標はどこにあるか」を指すものです。えっ……それってKPIのことじゃない? と思った方、正解です。そう、P&GではあえてKPIではなく、KBDと言います。なぜなら、KPIは一般用語だからです。

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