父ちゃんは看護師でした。

父ちゃんは、大きい病院の新生児集中治療室で働いていました。
新生児集中治療室は、NICUと呼びます。

NICUは赤ちゃんが入院するところです。
だから 父ちゃんはずっと赤ちゃんのお世話をして働いてきました。

昔から人のお世話をすることが好きでした。
教室でゲロを吐いちゃう友達のお世話をすることが
嫌ではない子どもでした。

だから ずーっと看護師を続けていくんだと思っていました。
でも 違いました。

NICUには元気な赤ちゃんがあまりいません。

死んでいく赤ちゃんを たくさん見送りました。
もちろん元気に退院する赤ちゃんだって 見送りました。

でも 父ちゃんは亡くなってしまった赤ちゃんと 
お父さんとお母さんを見送ることができなくなってしまいました。

最後に見送った赤ちゃんのことが忘れられません。
もっと父ちゃんが頑張れば、救えたかもしれません。
いや、思い込みでしょう。勘違いでしょう。
それでも、父ちゃんは今でも あの子が亡くなる前の日の寝顔が
忘れられないのです。

父ちゃんは、父親になってから子どもを亡くす親の気持ちが
初めてわかりました。

だから父ちゃんは逃げてしまいました。

自分のために逃げました。
助けて欲しかった。もう休みたかった。

父ちゃんはうつ病になっていました。

そして看護師をやめました。
一日中寝て過ごす日が何日もありました。

逃げた自分が恥ずかしかった。
NICUでは偉そうなことをたくさん言った。
後輩だってたくさんいた。

父ちゃんには優しくて強い奥さんがいます。
あなた達のお母さんです。
それに大切な友達がいます。

みんなに助けられました。救われました。

NICUからは逃げてしまったけど、
父ちゃんはだんだん元気になってきています。

でも 父ちゃんは病院には戻らずにいようと思います。

二人の顔を見ていると そばにいたくてしかたないのです。
二度とない 二人の成長を父として見守りたいのです。

なんと稚拙な文章でしょう。人の目に触れると思うと脂汗がでます。
そもそも読まれないかもしれません。

それでも今はこれが精一杯。しかたありません。

頑張ります。
父ちゃんは もう一度頑張ってみようと思います。

父ちゃんは看護師でした。

今は主夫です。そして父親です。

さあ第二の人生のスタートです。

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